【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症(0016) | 4.活動-運動

ゴードン

本事例の要約

アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。

4.活動-運動

入院前は日常生活動作の全てが自立していたが、腹水と浮腫の進行により活動量が著しく低下している。現在の体重は71.2kgであり、この体重には腹水と著明な下肢浮腫(圧痕性浮腫+3)が含まれている。腹水による腹部膨満と浮腫による下肢の重さから、基本的な動作に支障をきたしている

運動機能については、立位保持や歩行は可能であるが、腹水による重心移動の不安定さと下肢浮腫によるだるさのため、連続歩行距離は約50メートルに制限されている。さらに、貧血所見(赤血球数382万/μL、ヘモグロビン値11.0g/dL、ヘマトクリット値33.1%)を認めており、これには肝硬変に伴う門脈圧亢進による脾機能亢進と、それに伴う赤血球の破壊亢進が影響している可能性がある。また、肝機能障害による造血因子の産生低下も貧血の一因となっていることが考えられ、これらが活動時の疲労感に影響を与えている。炎症反応(CRP 2.45mg/dL)の上昇も認められ、全身の倦怠感増強の一因となっている。

バイタルサインは、体温36.5℃、血圧142/88mmHg、脈拍84回/分・整、呼吸数16回/分、経皮的動脈血酸素飽和度97%(室内気)と概ね安定している。ただし、活動時の血圧変動や呼吸状態の変化について、詳細な評価が必要である。意識レベルは清明(意識レベル判定スケール0、グラスゴー昏睡尺度15)を維持している。

安静度は病棟内フリーとなっているが、実際の活動範囲は著しく制限されており、主にベッド上で過ごしている。移動時には看護師の付き添いのもと、手すりを使用してトイレまでの歩行を行っている。特に夜間のトイレ歩行時は、必ずナースコールで看護師を呼び、付き添いを依頼している状況である。

生活背景として、以前は建設会社で現場監督として働いていたが、体調不良により1年前に退職している。自宅では妻と二人暮らしで、住居環境に関する具体的な情報(階段の有無、手すりの設置状況、浴室の構造など)の収集が必要である。

転倒リスクは非常に高い状態にある。その要因として、腹水による重心移動の不安定さ、下肢浮腫によるだるさ、疲労感、夜間頻尿(2-3回)による覚醒、睡眠導入剤(ブロチゾラム0.25mg)の使用が挙げられる。また、肝性脳症の発症リスクがあり、意識レベルが変動する可能性があることも転倒のリスク要因となる。現在の血中アンモニア値は82μg/dL(基準値12-66)と上昇しており、意識レベルの定期的な評価と変化の早期発見が重要である。しかし、これまでの転倒歴はなく、指示の理解も良好である。

必要な看護介入として、まず安全な移動動作の確保が重要である。具体的には、ベッド柵の3点設置、移動時のナースコール使用の徹底、夜間のトイレ誘導時の付き添いを継続する。また、肝性脳症の早期発見のため、意識レベル、見当識、手指振戦、羽ばたき振戦、言動の異常、睡眠覚醒リズムの変化などについて、毎勤務帯での観察と評価を行う必要がある。下肢浮腫の軽減を目的とした砕石位での下肢挙上や、腹水コントロールのための体位の工夫も必要である。

活動範囲の拡大に向けては、リハビリテーションスタッフと連携し、段階的な運動プログラムを立案する必要がある。その際、活動前後のバイタルサインの変動、呼吸状態、疲労度を評価し、過度な負荷を避けながら筋力低下を予防することが重要である。特に腹筋力の低下は、腹圧がかけづらい状態を助長し、排便困難にもつながるため、可能な範囲での腹筋運動の実施も検討する。

更衣に関しては、腹水による腹部膨満のため前屈位での動作が困難であり、特にズボンの着脱に介助を要する状態である。上半身の更衣は自立しているため、この機能は維持しながら、下半身の更衣動作の工夫について指導を行う。入浴に関しては、まだ実施していないが、シャワー浴を予定しており、看護師の介助のもとで行う予定である。

退院後の生活に向けて、自宅環境の詳細な評価と必要な住環境整備(手すりの設置、浴室の改修など)について、早期から検討を開始する必要がある。また、妻への介助方法の指導も重要である。特に、移動時の見守りや付き添いの方法、緊急時の対応について具体的な指導を行う必要がある。

看護問題の明確化

#肝性脳症と全身状態の低下に関連した転倒・転落のリスク
#腹水貯留による腹部膨満に関連したセルフケア能力の低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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