本事例の要約
アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。
3.排泄
肝機能障害により血中アンモニア値は82μg/dL(基準値12-66)と上昇しており、これは肝臓におけるアンモニア代謝能の低下を示している。腸内細菌による蛋白質分解で生成されるアンモニアの処理が十分に行えていないため、便秘による腸管内容物の停滞は血中アンモニア値の更なる上昇を招き、肝性脳症発症のリスクを高める可能性がある。肝硬変では、肝臓におけるアンモニア代謝能が低下しているため、血中アンモニア値は82μg/dL(基準値12-66)と上昇している。これは腸内細菌による蛋白質分解で生成されるアンモニアの処理が十分に行えていないことを示している。そのため、便秘による腸管内容物の停滞は血中アンモニア値の更なる上昇を招き、肝性脳症発症のリスクを高める可能性がある。
排便に関しては、入院前は1日1-2回の普通便であったが、現在は便秘傾向にあり、最終排便は入院前日である。便秘の要因として、腹水による腹部膨満感が強く腹圧がかけづらい状態であることに加え、食事摂取量の低下(提供量の3割程度)、水分摂取制限(1000ml/日以下)、活動量の低下が複合的に影響していると考えられる。現在は緩下剤(酸化マグネシウム330mg×3回/日)の内服を開始しているが、効果の評価と用量調整が必要である。
排尿については、利尿薬(フロセミド40mg×2回/日、スピロノラクトン25mg×2回/日)の投与により、日中7-8回、夜間2-3回と頻度が増加している。バルーンカテーテルは留置されていない。腎機能に関しては、血中尿素窒素(BUN)値28mg/dL(基準値8-20)、クレアチニン(Cre)値0.92mg/dL(基準値0.65-1.07)であり、BUNの上昇を認める。これは利尿薬使用による脱水傾向と、肝不全に伴うタンパク異化の亢進を反映していると考えられる。
水分出納に関しては、腹水と浮腫の管理のため厳密な管理が必要である。現在の水分摂取制限(1000ml/日以下)と利尿薬投与による排尿量の増加により、体重は入院時の72kgから71.2kgへと0.8kg減少している。しかし、著明な腹水貯留は持続しており、今後も慎重な体液管理が必要である。
腹部所見としては、著明な腹水貯留による腹部膨満を認める。腸蠕動音については記載がないため、評価が必要である。肝硬変患者では門脈圧亢進による腸管浮腫から腸管運動が低下しやすく、これも便秘の要因となり得る。
必要な看護介入として、以下の対応が重要である。まず、排便コントロールについては、緩下剤の効果を評価しながら、適切な排便習慣の確立を目指す。具体的には、毎日の排便有無、性状、量の観察に加え、排便時の姿勢の工夫(腹圧がかけやすい体位の指導)や、可能な範囲での腹部マッサージの実施を検討する。また、腸蠕動運動を促進するため、リハビリテーションと連携した適度な運動を取り入れる。
排尿に関しては、1日の尿量、回数、性状の観察を継続し、脱水兆候(口渇、皮膚乾燥、血圧低下など)の有無を慎重にモニタリングする。夜間頻尿による睡眠障害を予防するため、日中の活動量確保と夕方以降の水分摂取の調整を行う。
肝性脳症予防の観点から、便秘の予防と早期発見が重要である。そのため、排便状況の観察に加えて、意識レベル、見当識、手指振戦などの神経学的症状の観察も定期的に実施する。また、アンモニア値の上昇を予防するため、高タンパク食の過剰摂取を避けながら、必要な栄養摂取量は確保するよう栄養管理を行う。
今後の看護計画立案に向けて、さらなる情報収集が必要である。特に腸蠕動音の評価や排便時の体位、日常的な排便習慣についての詳細な情報が求められる。また、排尿に関しては排尿時痛や残尿感などの自覚症状の有無について確認が必要である。さらに、日常的な運動習慣や活動パターンについても把握することで、より適切な排泄コントロールの計画立案が可能となる。
退院後の生活指導に向けて、妻への教育も重要である。特に、適切な水分摂取量の管理方法、便秘予防のための生活習慣、肝性脳症の早期発見のためのセルフモニタリング方法などについて、具体的な指導を行う必要がある。
看護問題の明確化
#肝機能障害に関連した血中アンモニア値上昇のリスク
#利尿薬使用と水分制限に関連した電解質バランス異常のリスク
事例の目次
【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症 (0016)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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