【ゴードン】大腿骨転子部骨折 在宅復帰を目指す(0004)| 11.価値-信念

ゴードン

本事例の要約

右大腿骨転子部骨折後、γネイル固定術を施行し、術後3週間が経過した85歳女性の事例。骨粗鬆症、高血圧症、高脂血症の既往があり、術後のリハビリテーションは概ね順調に進んでいるものの、ADLに一部介助を要する状態。本人は早期の茶道教室再開を希望しているが、家族は安全な在宅復帰を重視しており、目標設定に違いがみられる事例。介入は術後3週間目である。

11.価値-信念

A氏は仏教信仰を持ち、入院前は週1回の読経会に参加していた。入院中も仏壇の写真を枕元に置き、毎朝読経の時間を設けており、信仰が精神的な支えとして機能している。この日課となっている読経は、入院生活における精神的な安定と回復への意欲に寄与していると考えられる。特に、環境の変化や身体機能の低下に直面している現在、信仰による心の拠り所が重要な役割を果たしている。

価値観の面では、茶道教授としての自己実現と社会的役割を重視している傾向が強く現れている。「早く教室に戻りたい。生徒たちが待っているから」という発言からは、茶道教室の運営が単なる趣味の活動を超えて、自己の存在価値や生きがいと密接に結びついていることが理解できる。また、「今までも自分のやり方でやってきた」という発言からは、自己決定権を重視し、自律した生活を送ることに高い価値を置いていることが推察される。

目標として、3ヶ月以内の杖歩行自立と茶道教室の再開を強く希望している。この目標設定は具体的であり、本人の価値観や生活信条と整合性がとれている。しかし、医療者の助言を受け入れにくい面があることは、リハビリテーションの進め方や退院後の生活様式の調整において課題となる可能性がある。特に、安全性の確保と本人の自己決定の尊重をどのようにバランスを取るかが重要となる。

看護介入としては、まず信仰活動の継続を支援することが重要である。毎朝の読経の時間を確保し、可能な範囲で同信仰を持つ方々との交流機会を提供することを検討する。また、茶道教室再開という目標に向けて、リハビリテーションの進捗状況を本人と共有しながら、段階的な活動再開のプランを立案する必要がある。その際、本人の価値観を尊重しつつも、医学的な安全性との折り合いをつけられるよう、丁寧な説明と対話を重ねることが求められる。

継続的な観察が必要な点として、信仰活動や茶道に関する発言内容の変化、目標に対する思いの変化、医療者との関係性の変化などが挙げられる。特に、リハビリテーションの進捗状況と本人の期待とのギャップが生じた際の心理的影響について、注意深く観察する必要がある。

また、家族の価値観や希望についても考慮が必要である。長女は「早く元の生活に戻りたがっているけれど、無理をさせたくない」と話しており、本人の希望と家族の心配の間でバランスを取ることが求められる。家族との話し合いの場を設け、互いの価値観や思いを共有し、協力して支援できる体制を整えることが重要である。

看護問題の明確化

なし

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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