【ゴードン】肝硬変 アルコール依存症(0016) | 1.健康知覚-健康管理

ゴードン

本事例の要約

アルコール性肝硬変による腹水貯留、全身浮腫の増強に加え、血液検査で肝機能の悪化を認めたため緊急入院となった。長年の飲酒習慣があり、これまでも禁酒指導を受けていたが継続できず、今回は黄疸の出現と食欲低下、倦怠感の増強により日常生活に支障をきたすようになったため入院加療となった事例。介入日は1月23日(入院2日目)である。

1.健康知覚-健康管理

A氏はアルコール性肝硬変(Child-Pugh分類 Grade B)を主疾患とし、肝性浮腫と腹水を合併している。アルコール性肝硬変は、長期の大量飲酒により肝細胞が持続的に障害を受け、肝臓の線維化が進行した結果として発症する疾患である。本症例では20歳頃から1日3合程度の習慣的な飲酒歴があり、約40年以上にわたる飲酒が疾患の主要な原因となっている。肝臓の線維化により、血清アルブミン値2.9g/dL、プロトロンビン時間52%と低下し、腹水貯留や浮腫といった肝不全症状が出現している。

現在の健康状態として、黄疸、腹水、浮腫が増悪している。血液検査では血小板数8.0万/μLと低下しており、これは門脈圧亢進による脾機能亢進の影響と考えられる。アンモニア値82μg/dLと上昇しており、肝性脳症発症のリスクが高い状態である。AST 82U/L、ALT 42U/Lと肝逸脱酵素の上昇が持続しており、肝細胞障害が継続していることを示している。また、CRP 2.45mg/dLと炎症反応が遷延しており、肝臓の慢性炎症状態が示唆される。

受診行動については、55歳時のアルコール性肝障害指摘以降、近医での定期受診は継続できていた一方で、医師からの禁酒指導に対する遵守が不十分であった。この背景には、アルコール依存の影響が強く疑われ、「1週間程度で再開してしまう」という行動パターンがみられる。これは、身体依存だけでなく、心理的依存の存在も示唆している。服薬に関しては、妻の管理のもと継続できていたが、降圧薬や利尿薬による治療効果が、継続する飲酒により相殺されている状況が続いていた。

身体状況として、身長168cm、体重71.2kg(入院時72kg)であるが、これには腹水と浮腫による体重増加が含まれている。本来の適正体重を把握するためには、腹水除去後の評価が必要である。活動量が著しく低下しており、連続歩行距離は約50メートルに制限されている。これは腹水による腹部膨満と下肢浮腫に加え、低アルブミン血症による筋力低下の影響と考えられる。歩行時の息切れも認められ、腹水による横隔膜挙上が呼吸機能に影響を与えている可能性がある。

アルコール依存への看護介入として、断酒の意思が表明されている入院早期から、依存症専門医や臨床心理士との連携を開始する必要がある。具体的な断酒支援として、禁酒補助薬の使用検討や自助グループの情報提供を行うとともに、飲酒欲求が生じる状況やきっかけを特定し、対処方法を患者と共に検討していく。また、リカバリーノートの作成を提案し、断酒継続の動機付けを強化することが重要である。このリカバリーノートには、日々の体調や気分の変化、断酒によって改善した症状、家族との良好な関係性の記録など、回復のプロセスを具体的に記載していく。特に腹水や浮腫の改善状況、食欲の回復、活動量の増加といった具体的な健康指標の変化を視覚的に記録することで、断酒の効果を実感できるようにする。また、飲酒欲求が生じた際の対処方法や、それを乗り越えた成功体験も記録し、再飲酒防止のための個別の戦略を蓄積していく。このノートは医療者との面談時にも活用し、回復に向けた具体的な目標設定や、生活改善の方策を共に検討するためのツールとしても活用する。

疾患教育と自己管理支援においては、現在の検査値や症状を視覚的に示し、病態の理解を促進することが必要である。腹囲測定や体重測定を患者自身が実施できるよう指導し、セルフモニタリングを習慣化させる。塩分制限食(6g/日)の必要性を説明し、実際の食事を用いて具体的な指導を行うとともに、水分制限(1000ml/日)の管理方法として、1日の摂取量を容器で可視化する工夫を行う。症状悪化の早期発見に向けて、腹部膨満感の増強、浮腫の悪化、錯乱などの要注意症状について具体的な説明を行い、異常の早期認識ができるよう支援する。

家族支援と退院調整については、妻への疾患教育を行い、肝硬変の進行予防に必要な生活管理について説明する必要がある。妻の介護負担を評価し、必要に応じて社会資源の活用を検討するとともに、退院後の外来通院スケジュールを明確化し、定期的なフォローアップ体制を構築する。特に重要な点として、家庭内での飲酒機会を減らすための環境調整について、具体的な方策を妻と相談しながら進めていく必要がある。

継続的な観察として、意識レベルの変化については日勤帯で最低3回の評価を実施し、肝性脳症の早期発見に努める。バイタルサインの変動、特に利尿薬による血圧低下や腹水による循環血液量減少に伴う頻脈に注意を払う。腹水・浮腫の程度は毎日の腹囲測定と下肢周囲径の測定で評価し、飲水量と尿量のバランスについては1日の水分出納を正確に記録する。低栄養のリスクについては、食事摂取量の正確な記録と体重変化の推移を注意深く観察する。離床状況については疲労度と活動耐性を評価しながら、段階的な活動拡大を検討していく。

継続的な観察として、意識レベルの変化については日勤帯で最低3回の評価を実施し、肝性脳症の早期発見に努める。肝性脳症は肝機能障害により血中アンモニアが上昇し、神経機能が障害される病態である。本症例では現在アンモニア値が82μg/dLと上昇しており、肝性脳症発症のリスクが高い状態にある。初期症状として、睡眠覚醒リズムの乱れ、簡単な計算ミス、不適切な行動、易興奮性などが出現するため、日常的な会話や行動の観察を通じて早期発見に努める必要がある。特に夜間は意識レベルの変化が見逃されやすいため、夜勤帯での慎重な観察が重要である。

また、便秘や感染症、過度な利尿によって肝性脳症が誘発される可能性があるため、これらの要因についても注意深くモニタリングする必要がある。便秘は腸内でのアンモニア産生を増加させ、感染症は全身性の炎症反応によってアンモニアの代謝能をさらに低下させる。過度な利尿は電解質バランスの急激な変化や脱水を引き起こし、アンモニアの血中濃度を上昇させる。現在、A氏は便秘傾向であり最終排便は入院前日であること、CRPが2.45mg/dLと軽度上昇していること、また利尿薬の投与量調整中であることから、これらの要因に対する慎重なモニタリングが特に重要である。

バイタルサインの変動、特に利尿薬による血圧低下や腹水による循環血液量減少に伴う頻脈に注意を払う。腹水・浮腫の程度は毎日の腹囲測定と下肢周囲径の測定で評価し、飲水量と尿量のバランスについては1日の水分出納を正確に記録する。低栄養のリスクについては、食事摂取量の正確な記録と体重変化の推移を注意深く観察する。離床状況については疲労度と活動耐性を評価しながら、段階的な活動拡大を検討していく。

看護問題の明確化

#アルコール性肝硬変に関連した急性増悪のリスク状態
#健康管理の知識不足に関連した非効果的セルフケア

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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