【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 10.コーピング-ストレス耐性

ゴードン

本事例の要約

本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。

10.コーピング-ストレス耐性

A氏は現在、腹腔鏡下S状結腸切除術後3日目であり、病院という非日常的な環境での生活を強いられている。入院環境は慣れない場所での生活であり、プライバシーの制限、生活リズムの変化、医療処置による拘束感などがストレス要因となる可能性がある。特に術後の疼痛や腹部膨満感、ドレーン留置による活動制限、睡眠の質の低下などが心身の負担となっている。術後の睡眠時間は入院前の7~8時間から約5時間程度に減少しており、睡眠の質も低下している。また、創部痛により体位変換が困難であることや、継続的な医療処置が必要であることも、A氏にとってストレス因子となっていると考えられる。しかし、現在のところ環境に対する不満や強い苦痛の訴えはなく、医療者の助言にも協力的な姿勢を示していることから、入院環境への適応は比較的良好であると推測される。

A氏は定年まで高校教師として勤め、現在も週3日程度、母校で非常勤講師として数学を教えており、仕事に対する責任感と誇りを持っていると考えられる。入院により、これらの職業的役割を一時的に果たせないことがストレスとなる可能性がある。特に「囲碁の大会が2か月後にあるので、それまでには体力を回復させたい」という発言からは、社会的役割への復帰を強く望んでいることがうかがえる。また、「もう少し早く受診すればよかった」という自己批判的な発言からは、病気の発見が遅れたことへの後悔や自責の念を抱えている様子が見受けられる。これらの心理的ストレスに対して、A氏は「手術をして本当に良かった。これからは定期的に検診も受けるつもりだ」と前向きな姿勢で対処しようとしている。

ストレス発散方法としては、趣味の読書と囲碁が挙げられる。これらは思考を深め、集中力を養う活動であり、A氏にとって精神的な安定をもたらす重要な活動であると考えられる。特に囲碁は社会的交流の機会にもなっており、地域の囲碁サークルの代表を務めるなど、自己実現や社会参加の手段ともなっている。入院中も可能な範囲で読書などの活動を継続できるよう環境を整えることが、ストレス緩和に有効であると考えられる。

家族のサポート状況については、妻(62歳)がキーパーソンとなっており、毎日面会に訪れている。妻からは「無理せずにゆっくり回復してほしい」「夫は几帳面な性格なので、何でも自分でやろうとするところがある。家に帰ってからも無理をさせないようにしたい」という発言があり、A氏の性格をよく理解し、サポートする姿勢がみられる。長男(38歳)と長女(36歳)も週末に面会に来ており、「父が元気になってまた囲碁を教えてくれるのを楽しみにしている」と話していることから、家族の精神的支援は良好であると判断できる。家族全体としてA氏の回復を支援する態勢ができており、特に妻は退院後の生活について「食事は野菜中心のものを心がけ、適度な運動も取り入れるようにしたい」と具体的な計画を立てている。このような家族のサポートはA氏の重要な心理的資源となっている。

A氏の性格は几帳面で計画的であり、この特性は治療への適応においては有利に働く可能性がある一方で、回復が計画通りに進まない場合にはストレスとなる可能性もある。また、高校教師という職業柄、論理的で分かりやすい話し方ができ、医療者とのコミュニケーションも円滑であることから、必要な情報を適切に伝えることができる能力を有している。これらの特性は、ストレス状況下でも適切に対処する上で重要な要素となる。

加齢による影響としては、A氏は65歳であり、身体的ストレスからの回復には若年者に比べて時間を要する可能性がある。また、環境の変化への適応力も低下している可能性があるため、病院環境へのストレスがより大きくなる可能性がある。さらに、退職後の生活における新たな役割の模索や、健康問題への直面など、高齢期特有のライフイベントに伴うストレスも考慮する必要がある。

看護介入としては、まず術後の疼痛管理を適切に行い、身体的ストレスを軽減することが重要である。創部痛に対してはアセトアミノフェンが使用されているが、その効果を定期的に評価し、必要に応じて疼痛管理方法を調整する。また、睡眠環境の調整や日中の適度な活動促進により、睡眠の質の向上を図ることも重要である。精神的ストレスに対しては、A氏の感情表現を受け止め、不安や懸念について話し合う機会を設けることが有効である。特に「手術で取り切れたなら、もう癌はないと考えていいのだろうか」という発言に対しては、正確な情報提供と心理的サポートが必要である。

さらに、入院中も可能な範囲で趣味活動を継続できるよう支援することや、家族とのコミュニケーションを促進する環境を整えることも重要である。退院に向けては、回復過程や今後の見通しについて具体的な情報提供を行い、A氏が退院後の生活について見通しを持てるよう支援する。また、家族を含めた退院指導を行い、退院後のサポート体制を強化することも重要である。

継続的な観察点としては、A氏の表情や言動の変化、睡眠状態、疼痛の程度、家族との関係性などがある。特に回復が進むにつれて、活動範囲の拡大や社会復帰への期待が高まる一方で、現実とのギャップが生じる可能性もあるため、精神状態の変化に注意を払う必要がある。また、妻の疲労や負担感についても観察し、必要に応じて支援を検討することが望ましい。

看護問題の明確化

#手術による入院および活動制限に関連したストレス対処能力の低下リスク

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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