本事例の要約
この事例は、不適切な食事習慣と運動不足により肥満(BMI 29.4)を呈し、血糖コントロール不良となった45歳男性のⅡ型糖尿病患者の教育入院における看護介入事例である。IT企業の中間管理職として働くA氏は、多忙な業務により不規則な生活を送っており、特に食事の量や時間が不規則で、運動習慣がない生活を続けていた。今回、定期健康診断での著しい血糖値の上昇を契機に、生活習慣の改善と糖尿病自己管理能力の獲得を目的として教育入院となった。入院3日目の時点での看護展開を行う。
1.健康知覚-健康管理
A氏は、定期健康診断で空腹時血糖値235mg/dL、ヘモグロビンA1c 9.8%と高値を指摘され、医療機関を受診し、Ⅱ型糖尿病の診断で教育目的で入院となった。
Ⅱ型糖尿病は、インスリンの分泌不足または体がインスリンを適切に使用できない状態で発症する。主に40歳以上の成人に多く、不適切な食生活、運動不足、肥満などの生活習慣が主な危険因子となり、遺伝的要因や加齢も発症リスクを高める。症状は、喉の渇き、頻尿、疲労感などだが、初期段階では気づかないまま進行することも多い。治療は食事療法と運動療法が基本で、効果が不十分な場合は経口薬やインスリン注射が必要となる。適切な管理を怠ると、心臓病や腎臓病などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、定期的な健康診断と健康的な生活習慣が重要となる。
A氏は、12月の定期健康診断の後、Ⅱ型糖尿病と診断され、食事療法と運動療法の指導を受けたが、仕事の多忙を理由に生活習慣の改善ができなかった。メトホルミンが処方となったが、確実な内服ができず、3か月後の外来受診でHbA1Cが9.8%(12月)→10.2%に上昇し、主治医から教育入院を勧められた経緯がある。食事療法・運動療法・服薬管理に問題があり、このまま改善しない場合は、糖尿病が進行しインスリン注射の必要性や合併症を発症する可能性があり、今回の入院を機に、正しい病気の知識の獲得と、生活習慣の改善が必要である。
まず、A氏は糖尿病に関する正しい知識を理解する必要がある。これまでの生活習慣から、A氏は糖尿病の重症化リスクを十分に理解していないと考えられる。「このまま放っておくと重症化するのではないか」という発言から、入院をきっかけに危機感を抱いている様子があるので、教育プログラムを通じて先述した糖尿病の病態・今後のリスク・予防方法について、理解度を深める必要がある。また、日常生活を共にする妻をキーパーソンとして教育プログラムに参加してもらうことで、退院後の食事管理や服薬管理のサポート体制を整えることができる。妻は「家族でできることは協力したい」と話しており、協力が得られる状況と考える。
次に、食事療法・運動療法・服薬行動について具体的な改善方法を考える必要がある。
まず食事療法について、A氏の食生活は、朝食欠食、昼は外食やコンビニ弁当、夜は仕事の付き合いでの外食や遅い夕食が多く、全体的に不規則だった。週3-4回の飲酒(ビール500ml 1-2本/回)があり、砂糖入りコーヒー(1日4-5杯)や洋菓子の摂取も頻繁だった。糖尿病の原因の一つに、過剰なカロリー摂取と不規則な食生活があるため、まずは規則正しい食事時間の確保と、適切な食事内容への改善が必要である。具体的には、朝食を必ず摂取し、外食時は糖質や脂質の量に気をつけ、夜遅い食事を控えることが重要である。また、アルコールや糖分の多い飲み物、菓子類の摂取を制限することで、血糖値の安定化を図る必要がある。先述の通り、妻も含めて説明し、追加の情報があれば確認していく。
運動療法について、A氏は運動習慣がなく、仕事ではデスクワークが中心で運動不足の状況である。腰椎椎間板ヘルニアの既往があることも、活動を消極的にしている原因と考えるが、日常生活動作の歩行には大きな問題はなく、今のところ痛みは訴えていない。適度な運動は、血糖値の改善やインスリンの働きを高める効果があり、糖尿病の予防には効果的である。今後、理学療法士による運動療法を行うため、A氏に合った活動方法を検討し、運動習慣を身に着けられるように支援していく。
服薬について、A氏は3か月前の受診時にメトホルミンが処方になっていたが、確実な内服ができていなかった。メトホルミンは血糖値の上昇を抑え、糖尿病の進行予防に重要な治療薬である。入院後は服薬カレンダーを使用して管理し、看護師の声掛けの下、確実に内服できている。退院後も続けられるように、1日分の薬ボックスの使用や、妻とのダブルチェックなどの方法を提案・検討し、継続して内服できるように支援が必要である。A氏は高血圧の既往があり、血圧コントロールを続けることも糖尿病の進行予防に繋がるため、アムロジピンの内服の必要性も含めて伝えていく。
A氏は喫煙歴がないため、この点については問題ない。ただし、喫煙は糖尿病を悪化させる重要な要因の一つである。喫煙により血管が収縮して血流が悪化し、血管内にアテロームが形成されやすくなるため、今後も禁煙を継続できるように指導が必要である。
看護問題の明確化
# 糖尿病の知識不足に関連した非効果的健康管理
事例の目次
【ゴードン】Ⅱ型糖尿病 教育入院(0002) | 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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