本事例の要約
本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。
8.役割-関係
A氏は定年まで高校教師として勤め、現在は週3日程度、母校で非常勤講師として数学を教えている。教職という専門性の高い職業に長年携わり、定年後も教育活動を継続していることから、教育者としての強い職業的アイデンティティを持っていると考えられる。また、地域の囲碁サークルの代表を務めるなど、社会的活動にも積極的に参加しており、地域社会での役割も担っている。このような社会的役割の遂行は、A氏の自己実現や生きがいにつながっていると考えられる。「囲碁の大会が2か月後にあるので、それまでには体力を回復させたい」という発言からは、社会的役割への復帰を目標として回復に取り組む意欲がうかがえる。手術後の回復期には、これらの役割を一時的に中断せざるを得ない状況にあり、役割喪失感を抱く可能性がある。特に几帳面で計画的な性格であることから、予定通りに役割を果たせないことへのストレスが生じる可能性もある。退院後の社会復帰に向けて、段階的な活動拡大を支援し、役割遂行への見通しを持てるよう援助することが重要である。
家族構成は妻(62歳)と二人暮らしで、長男(38歳)と長女(36歳)は独立している。キーパーソンは妻であり、毎日面会に訪れている。妻は「無理せずにゆっくり回復してほしい」と話し、A氏の回復を気遣っている。また、「夫は几帳面な性格なので、何でも自分でやろうとするところがある。家に帰ってからも無理をさせないようにしたい」と述べており、A氏の性格をよく理解し、サポートする姿勢がみられる。長男と長女は週末に面会に来ており、「父が元気になってまた囲碁を教えてくれるのを楽しみにしている」と話していることから、家族の絆が強く、精神的サポートが得られる環境にあると考えられる。家族全体としてA氏の回復を支援する態勢ができており、特に妻は退院後の生活について「食事は野菜中心のものを心がけ、適度な運動も取り入れるようにしたい」と具体的な計画を立てている。このような家族のサポート体制は、A氏の回復にとって重要な資源となる。ただし、妻も62歳と高齢であるため、介護負担が大きくなりすぎないよう配慮する必要がある。退院指導の際には、A氏の自立を促しつつ、妻の負担にならない範囲でのサポート方法を具体的に指導することが望ましい。
経済状況については詳細な情報が不足しているが、定年まで高校教師として勤め、現在も非常勤講師として働いていることから、年金に加えて一定の収入があると推測される。医療費や治療に関する経済的懸念についての発言は記録されていないため、現時点では経済的問題は顕在化していないと考えられる。しかし、大腸癌の治療は長期にわたることがあり、今後の通院や検査、場合によっては追加治療などにより経済的負担が増大する可能性もある。また、術後の回復期間中は非常勤講師としての勤務を一時的に中断する必要があり、収入の減少が生じる可能性がある。これらの点について、A氏や家族の認識や懸念を確認し、必要に応じて医療ソーシャルワーカーとの連携や利用可能な医療費助成制度の情報提供を行うことが重要である。
加齢による影響としては、A氏は65歳であり、妻も62歳と高齢期に入っている。身体機能の回復に時間を要する可能性があることに加え、介護者である妻の負担も考慮する必要がある。また、定年後の生活設計や健康管理に対する意識が高まる時期でもあるため、この機会に夫婦で健康管理や生活習慣の見直しを行えるよう支援することも有効である。
看護介入としては、まず入院中も可能な範囲で職業や社会的役割に関連する活動(例えば読書や思考活動)を継続できるよう環境を整えることが挙げられる。また、家族との面会時間を有効に活用し、情報共有や退院後の生活についての話し合いを促進することも重要である。退院が近づいたら、職場復帰や社会活動再開に向けた具体的な計画を立てる支援を行い、必要に応じて段階的な活動拡大を提案する。経済面については、医療費や仕事の中断による収入減少に関する懸念があれば、早期に医療ソーシャルワーカーと連携して対応することが望ましい。
継続的な観察点としては、家族の面会状況や関わり方の変化、A氏の役割喪失感や将来への不安に関する発言に注意を払う必要がある。特に退院が近づくにつれて、社会復帰への期待と不安が高まる可能性があるため、心理状態の変化を把握し、適切な支援を提供することが重要である。また、妻の疲労や負担感についても観察し、必要に応じて社会資源の活用を検討することが望ましい。
看護問題の明確化
#手術による活動制限に関連した役割遂行の中断
事例の目次
【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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