【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 6.認知-知覚

ゴードン

本事例の要約

本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。

6.認知-知覚

A氏の意識レベルは、Japan Coma Scale(JCS)0、Glasgow Coma Scale(GCS)15点(E4V5M6)と清明である。術前から術後3日目の現在まで、意識レベルの変化は認められていない。高齢者では術後せん妄のリスクが高まるが、A氏は65歳と比較的若く、現時点では術後せん妄の兆候はなく、質問に対して的確に応答し、自分の状態や症状を詳細に説明できている。しかし、術後の疼痛や睡眠の質低下が続くと、認知機能に影響を及ぼす可能性があるため、継続的な観察が必要である。

視力については両眼とも良好であるが、近視のため老眼鏡を使用している。新聞や書籍を読む際には眼鏡を常用しているが、遠方視には問題がないとの情報がある。高齢者は一般的に調節力の低下による老視が生じるため、A氏の場合も加齢に伴う視力変化が進行している可能性がある。入院環境では慣れない場所での生活となるため、ベッドサイドに眼鏡を置き、すぐに使用できるようにすることが重要である。また、説明文書や同意書などを提示する際には、十分な文字サイズと明るさを確保する配慮が必要である。

聴力は良好で通常の会話に支障がないとの情報がある。しかし、65歳という年齢を考慮すると、今後加齢に伴う聴力低下が生じる可能性があるため、コミュニケーション時には相手の顔を見て話す、明瞭な発声を心がけるなど、情報伝達が確実に行われるよう配慮することが望ましい。また、術後の環境音や医療機器のアラーム音により、聴覚的な刺激が過剰になることもあるため、必要に応じて静かな環境を提供することも検討すべきである。

知覚については、触覚・痛覚・温度覚ともに正常であるが、術後の創部周囲には軽度の知覚鈍麻があると報告されている。これは手術による一時的なものと考えられるが、知覚鈍麻部位では熱傷や圧迫などの危険を感じにくいため、温熱療法の実施や体位変換時には特に注意が必要である。また、創部周囲の知覚変化は神経損傷や炎症の程度により異なるため、知覚の回復状況を定期的に評価することが重要である。

認知機能については、問題がなく会話は明瞭で理解力も良好である。元高校教師として勤務していた経歴から、知的活動を継続していたことがうかがえる。現在も週3日程度非常勤講師として数学を教えていることは、認知機能の維持に良い影響を与えていると考えられる。また、趣味の読書や囲碁は脳の活性化に寄与しており、認知機能の保持に役立っている。入院中も可能な範囲で読書や思考活動を継続できるよう支援することが望ましい。

不安については、「手術で取り切れたなら、もう癌はないと考えていいのだろうか」という発言から、今後の予後に対する不安を抱えていることがうかがえる。しかし、「早く回復して家に帰りたい」「囲碁の大会が2か月後にあるので、それまでには体力を回復させたい」という前向きな発言も多く、目標を持って療養に取り組む姿勢が見られる。A氏の性格は几帳面で計画的であり、この特性が回復過程においてセルフケア能力を高める要因となる一方で、思い通りに回復が進まない場合にはストレスとなる可能性もある。表情についての具体的な情報は不足しているため、日々の看護ケアの中で表情の変化を観察し、不安や苦痛の早期発見に努める必要がある。

A氏は「もう少し早く受診すればよかった」と自己責任を感じる発言もあり、これが心理的負担となっている可能性がある。このような心理的側面についても理解し、必要に応じて傾聴の機会を設けることが重要である。また、医師からの説明内容の理解度を確認し、疑問や不安があれば解消できるよう支援することで、治療への積極的な参加を促進することができる。

看護介入としては、まず意識レベルや認知機能の定期的な評価を行い、変化があれば早期に対応することが重要である。次に、術後の疼痛管理を適切に行い、睡眠の質を確保することで、せん妄予防につなげる。また、眼鏡の使用や適切な照明の確保など、感覚機能を補助するための環境調整を行う。さらに、A氏の不安や疑問に対しては、個別の状況に応じた情報提供と精神的サポートを提供し、家族の協力も得ながら回復への意欲を維持できるよう支援する。そして、入院中も可能な範囲で読書や囲碁など趣味活動を継続できる環境を整えることで、認知機能の維持と精神的安定を図ることが望ましい。

看護問題の明確化

#手術による組織損傷に関連した急性疼痛

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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