本事例の要約
本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。
5.睡眠-休息
A氏は入院前、22時就寝、6時起床の規則正しい生活を送っていた。睡眠時間は7〜8時間で、眠剤の使用はなく、読書をしてから就寝する習慣があった。これは健康的な睡眠パターンであり、A氏が几帳面で計画的な性格であることも、規則正しい睡眠習慣の維持に寄与していたと考えられる。しかし現在は、術後の疼痛や環境の変化により睡眠の質が低下している。特に夜間の体位変換時に疼痛が増強し、断続的な睡眠となっている。睡眠時間は約5時間程度と入院前と比較して2〜3時間減少しており、日中に30分程度の仮眠をとることもある。
熟眠感については明確な記載はないが、睡眠が断続的であることから十分な熟眠が得られていない可能性が高い。睡眠導入剤については、現在のところ使用していないが、必要時にはゾルピデム5mgの内服が指示されている。疼痛による睡眠障害は術後回復の妨げとなる可能性があるため、夜間の疼痛管理が重要である。就寝前のアセトアミノフェンの計画的な投与や、体位変換時の痛みを軽減するための適切な体位保持の工夫(クッションの使用など)を検討する必要がある。また、睡眠環境の調整(室温、照明、騒音など)も睡眠の質向上には重要である。
日中の過ごし方については、現在は術後のリハビリテーションとして、看護師付き添いのもとでのベッドサイドでの立位訓練と病室内の短距離歩行を1日2回実施している状況である。その他の具体的な活動内容の記載はないが、術後3日目であることを考慮すると、病室内での安静が中心であると推測される。趣味は読書と囲碁であることから、体調に応じて読書などの静かな活動を取り入れることで、入院生活のストレス軽減や気分転換につながる可能性がある。休日の過ごし方については情報がないため、退院後の生活リズムを整える観点からも、休日の過ごし方や睡眠パターンについて情報収集を行う必要がある。
A氏は65歳であり、加齢に伴う睡眠パターンの変化として、総睡眠時間の減少、睡眠の分断化、深睡眠の減少などが考えられる。特に高齢者では入眠困難や中途覚醒が増加しやすく、環境変化への適応も若年者と比較して時間を要する傾向がある。入院前は眠剤を使用せずに7〜8時間の睡眠が確保できていたことから、加齢による顕著な睡眠障害はなかったと推測されるが、手術侵襲や環境変化によって睡眠障害が顕在化している可能性がある。術後の回復過程において、適切な睡眠は組織修復や免疫機能の維持に重要であるため、睡眠の質向上のための介入が必要である。
睡眠障害が続く場合には、短期的な睡眠導入剤の使用も検討されるが、高齢者では薬剤の副作用(ふらつき、転倒リスクの増加など)に注意が必要である。ゾルピデム5mgは比較的低用量であり、高齢者に配慮した処方となっているが、服用後の転倒予防のための環境整備(ベッド柵の確認、ナースコールの位置確認など)が重要である。また、薬剤に頼らない睡眠改善策として、日中の適度な活動量の確保、就寝前のリラクゼーション(読書など)、カフェイン摂取の制限、規則正しい就寝・起床時間の維持などを指導することも有効である。
退院に向けては、入院前の良好な睡眠パターンに戻れるよう支援することが重要である。創部痛の緩和とともに徐々に睡眠の質が改善することが期待されるが、退院後も疼痛や不安などによる睡眠障害が続く可能性があるため、睡眠状態の継続的な評価と必要に応じた支援が求められる。また、A氏が非常勤講師として勤務していることや囲碁サークルの代表を務めていることを考慮すると、社会的役割の再開に伴うストレスや生活リズムの変化が睡眠に影響する可能性もあるため、退院後の生活調整についても指導が必要である。
以上のことから、A氏の睡眠-休息状態は術後の一時的な障害があるものの、疼痛管理の改善や環境調整により改善が期待できる状態と考えられる。睡眠状態の継続的な観察と、疼痛管理、環境調整、睡眠衛生指導などの包括的なアプローチが必要である。また、回復期には日中の活動量を徐々に増やし、適度な疲労感を得ることで夜間の睡眠の質向上にもつながるよう支援することが重要である。
看護問題の明確化
#疾患に伴う手術創部痛に関連した睡眠障害
事例の目次
【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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