本事例の要約
本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。
看護計画#1
看護問題
#手術に関連した感染と縫合不全のリスク
長期目標
退院までに感染症状や縫合不全の兆候なく、創部の治癒が促進される。
短期目標
1週間以内に創部感染や縫合不全の徴候がなく、炎症反応値(白血球数、CRP値)が改善傾向を示す。
≪O-P≫観察計画
・腹部5か所の創部の状態(発赤、腫脹、熱感、浸出液、離開)を観察する
・ダグラス窩ドレーンからの排液量・性状(色調、混濁、血性、膿性、消化液様、悪臭)を観察する
・バイタルサインの変化(特に発熱、頻脈、血圧低下)を定期的に測定する
・腹部の膨満感、腹痛の有無と性状を確認する
・腸蠕動音の聴取状況(部位、頻度、性状)を観察する
・排ガスの有無と量、性状(悪臭の有無)を確認する
・排便の有無と性状(血液混入、粘液付着、悪臭)を観察する
・嘔気・嘔吐の有無と性状を観察する
・吻合部周辺の違和感や痛みの変化を観察する
・白血球数やCRP値などの炎症マーカーの推移を確認する
・食事摂取量と食後の腹部症状(膨満感、痛み)を観察する
・全身倦怠感や活力低下など全身状態の変化を観察する
≪T-P≫援助計画
・創部の清潔保持のため、医師の指示に従って創部の消毒とドレッシング材の交換を行う
・ドレーン管理(固定状態の確認、適切な位置の保持、閉塞予防)を徹底する
・創部に過度な緊張がかからないよう、体位変換時や歩行時に適切な介助を行う
・術創部を清潔に保つため、必要に応じて部分清拭を実施する
・腸蠕動促進のため、術後3日目から段階的な離床と歩行距離の拡大を支援する
・十分な酸素化を促進するため、深呼吸や排痰を促す
・腹部膨満感軽減のため、腹部マッサージを実施する
・便秘予防のため、医師の指示に従って酸化マグネシウムの内服を確実に行う
・脱水予防と循環血液量維持のため、経口摂取の促進と適切な輸液管理を行う
・吻合部や創部の安静を保つため、強い咳嗽時には創部を軽く押さえるよう介助する
・創部感染予防のため、手指衛生を徹底し、無菌操作でケアを実施する
・栄養状態の維持・改善のため、少量頻回の食事摂取を促進する
≪E-P≫教育・指導計画
・創部の観察ポイント(発赤、腫脹、熱感、浸出液、痛みの増強)と異常時の報告方法を説明する
・手術部位の清潔保持の重要性と、シャワー浴や入浴再開時の注意点を説明する
・適切な栄養摂取の重要性と、消化管手術後の段階的な食事形態の進め方を説明する
・腸蠕動促進のための腹部マッサージの方法と効果について指導する
・創部に過度な負担をかけない日常生活動作(重いものを持たない、急激な動きを避けるなど)を指導する
・術後合併症の早期発見のため、発熱、創部痛の増強、腹部膨満感の増悪などの症状出現時の対応を説明する
・便通コントロールの重要性と、腹圧がかかりすぎない排便方法を指導する
・手術後の腸管機能回復に合わせた水分摂取の重要性と適切な量について説明する
・長期的な感染予防のための生活習慣(禁煙、適度な運動、十分な睡眠など)について指導する
・退院後に注意すべき縫合不全の症状(腹痛、発熱、創部からの排膿、排便時の出血など)と受診の目安を説明する
看護計画#2
看護問題
#手術による組織損傷に関連した急性疼痛
長期目標
退院までに疼痛が軽減され(NRS 0~1/10)、日常生活動作が支障なく行えるようになる。
短期目標
1週間以内に疼痛が軽減され(安静時NRS 1~2/10、体動時NRS 2~3/10)、基本的な日常生活動作が自立して行えるようになる。
≪O-P≫観察計画
・疼痛の部位、性質、強度(NRSスケール)、持続時間、増悪・軽減因子を確認する
・安静時と体動時の疼痛スコアの変化を観察する
・疼痛による睡眠や食事への影響を観察する
・疼痛による日常生活動作への影響(特に腹部を屈曲させる動作)を観察する
・鎮痛薬(アセトアミノフェン)使用前後の疼痛緩和効果を評価する
・疼痛に伴う表情や行動の変化(顔をしかめる、姿勢が硬直するなど)を観察する
・創部の状態(発赤、腫脹、熱感、浸出液)を観察する
・ダグラス窩ドレーンからの排液量と性状を観察する
・バイタルサインの変化(特に血圧上昇、頻脈、呼吸数増加)を観察する
・疼痛に対する認識や対処行動(我慢する傾向がないか)を評価する
・疼痛による不安や焦りなどの心理的反応を観察する
・手術部位以外の痛み(肩こり、腰痛など)の有無を確認する
≪T-P≫援助計画
・疼痛評価スケール(NRS)を用いて定期的に痛みの評価を行う
・疼痛時にはアセトアミノフェン500mgの内服を提供する
・体位変換やベッドアップ時には腹部を支える姿勢をとり、腹圧がかからないよう介助する
・腹部の創部に負担がかからないよう、体位変換時には両膝を立てて行うよう介助する
・深呼吸やリラクセーション法を実施し、緊張を緩和する
・疼痛が強い場合は、処方されている鎮痛薬の効果が最大になるタイミングで活動を計画する
・安楽な体位の工夫(クッションや枕の使用)を行う
・腹部の創部保護のため、咳嗽時には創部を軽く押さえるよう介助する
・体動時の急な動きを避け、ゆっくりとした動作を促す
・術後3日目からの病棟内歩行時には、歩行前に鎮痛薬を使用し、疼痛予防を図る
・疼痛軽減のための非薬物的介入(温罨法、冷罨法、音楽療法など)を提供する
・ベッド周囲の環境調整(必要な物品の配置など)を行い、無理な動作を減らす
≪E-P≫教育・指導計画
・疼痛の程度を我慢せずに伝えることの重要性を説明する
・疼痛スケール(NRS)の使用方法と自己評価の仕方を説明する
・創部を保護しながら行う効果的な体位変換の方法を指導する
・アセトアミノフェンなどの鎮痛薬の効果と適切な使用方法を説明する
・日常生活動作時の疼痛軽減のためのボディメカニクスを指導する
・咳嗽時や排便時に創部を保護する方法(創部を手で固定するなど)を指導する
・腹部の負担を軽減するための日常生活の工夫(高さのある便座の使用、重いものを持たないなど)について説明する
・深呼吸法やリラクセーション法など、疼痛緩和のためのセルフケア方法を指導する
・退院後に注意すべき疼痛症状(急激な疼痛増強、発熱を伴う疼痛など)と受診の目安を説明する
・疼痛日誌の記録方法と活用法を指導する
看護計画#3
看護問題
#疾患に伴う腸管切除術に関連した栄養摂取不足
長期目標
退院までに必要栄養量が摂取でき、体重減少がなく、血液データ(アルブミン値、ヘモグロビン値)が改善傾向を示す。
短期目標
1週間以内に食事摂取量が8割以上となり、腹部膨満感が軽減し、水分摂取量が1500ml/日以上確保できる。
≪O-P≫観察計画
・食事摂取量(割合、食品の種類や形態の受け入れ状況)を毎食確認する
・水分摂取量と排泄量のバランスを観察する
・腹部膨満感、吻合部周辺の違和感など消化器症状の有無と程度を確認する
・嘔気・嘔吐の有無と発生タイミング(食前、食直後、食後しばらくしてなど)を観察する
・体重の変化を定期的に測定し、急激な減少がないか確認する
・排ガスや排便の状況(頻度、性状、量)を観察する
・腸蠕動音の聴取状況(部位、頻度)を確認する
・血液データの変化(特にアルブミン値、ヘモグロビン値、電解質)を評価する
・食事摂取時の姿勢や食べ方、疲労の程度を観察する
・口腔内の状態(乾燥、口内炎、舌苔など)を確認する
・皮膚や粘膜の乾燥状態、皮膚ツルゴールを観察する
・活動レベルと疲労度の関連を評価する
≪T-P≫援助計画
・食事時には上半身を45度以上挙上し、誤嚥を予防する
・食事の際はベッド周囲の環境を整え、リラックスして食事ができるよう配慮する
・少量頻回の食事摂取ができるよう、間食や補食を工夫する
・個人の嗜好を考慮した食事内容となるよう栄養科と連携する
・腹部膨満感軽減のため、医師の指示に従い酸化マグネシウムの内服を確実に行う
・食前の口腔ケアを促し、食欲を増進させる
・脱水予防のため、こまめな水分摂取を促す
・食事摂取量が少ない場合は、高カロリー・高タンパクの栄養補助食品を活用する
・腸管蠕動促進のため、医師の指示に従って段階的な離床と活動量の増加を支援する
・食事の前後に疲労が強い場合は、十分な休息時間を確保する
・経口摂取量に応じた輸液管理を行い、水分・電解質バランスを維持する
・褥瘡予防のため、栄養状態と皮膚の状態を関連付けて観察し、必要な予防ケアを実施する
≪E-P≫教育・指導計画
・消化管手術後の食事摂取の進め方と、段階的な食事形態の変更について説明する
・腹部膨満感を軽減するための食事の工夫(少量頻回摂取、ゆっくり食べる、よく噛むなど)を指導する
・水分摂取の重要性と、1日の目標摂取量(1500ml以上)について説明する
・大腸癌術後の食事の留意点(高繊維食品の適切な摂取、消化のよい食品の選択)を説明する
・退院後の食事管理(バランスの良い食事、規則正しい食事時間、適切な量)について指導する
・体重測定の必要性と、極端な体重減少時の対応について説明する
・腸管蠕動を促進する日常生活の工夫(適度な運動、腹部マッサージなど)を指導する
・術後の消化吸収機能に合わせた食品の選択方法について説明する
・栄養状態の自己管理方法(食事記録の付け方、体調変化と栄養摂取の関連)を指導する
・アルコール摂取に関する注意点と、退院後の飲酒についての判断基準を説明する
事例の目次
【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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