【ゴードン】イレウス 入院2日目(0018)| 8.役割-関係

ゴードン

本事例の要約

イレウスと診断され入院した88歳男性のA氏。腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送され、腸閉塞と診断された。保存的治療目的で入院となり、現在はイレウス管による減圧治療中である。入院2日目の11月15日に介入するという事例。

8.役割-関係

A氏は88歳の男性で、元会社員として定年まで働いており、現在は無職である。長年にわたり社会人としての役割を果たしてきたことが推測され、定年後も社会的規範や責任感を持ち続けていると考えられる。職業人としての役割を喪失した後の生活適応については詳細な情報がなく、定年後の生きがいや社会活動、地域との関わりなどについての情報収集が必要である。高齢者にとって退職後の役割移行は自己アイデンティティに大きな影響を与えることが知られており、A氏においても定年後の役割獲得や社会参加の状況を把握することは、退院後の生活支援計画を立案する上で重要である。

家族構成については、A氏は妻と二人暮らしであり、キーパーソンは長男である。妻は76歳と高齢であり、「主人の世話ができるか心配」と看護師に不安を打ち明けている。このことから、家庭内での夫婦関係において、A氏が主導的な役割を担っていた可能性がある。しかし現在は病気による入院で、家庭内での役割を一時的に果たせない状況にある。妻の面会状況は「毎日面会に来て励ましている」とあり、夫婦の絆の強さが窺える。一方で、高齢の妻にとって毎日の面会は身体的・精神的な負担となる可能性もあり、妻の健康状態や疲労度についても配慮が必要である。

長男はキーパーソンとして重要な役割を担っているが、「仕事で面会時間は短い」とあり、直接的なサポートには限界がある状況である。しかし、「電話で頻繁に状況を確認している」ことから、情報収集と意思決定の中心的役割を担っていると考えられる。また、「父の年齢を考えると心配」「退院後の介護サービス利用も検討している」という発言からは、親の高齢化と健康状態の変化を現実的に捉え、今後の支援体制を考慮している姿勢が窺える。家族内での役割分担や意思決定プロセスについては、さらに詳細な情報収集が必要である。特に家族内のコミュニケーションパターンや、重要な決断をする際の過程について理解することで、効果的な家族支援が可能となる。

経済状況については具体的な情報がなく、経済的基盤や医療費の負担感、退院後の生活への経済的影響などについての情報収集が必要である。現役時代の職業や退職金、年金の状況、医療保険の加入状況などを把握することで、必要に応じた社会資源の活用を提案することができる。特に長男が「退院後の介護サービス利用も検討している」という発言を踏まえると、介護保険サービスの利用や自己負担額についての情報提供が有用と考えられる。

A氏自身の発言からは、「年には勝てないね」と冗談を言いながらも、「退院したら健康に気をつけよう」と前向きな姿勢も見られる。これは疾病体験を通じて、自己の健康管理に対する役割認識が高まっていることを示唆している。また、A氏は几帳面で自分のことは自分でしようとする意志の強さがあるという性格特性を持っており、自己管理能力の高さと自律性への強い欲求が窺える。このような特性は回復過程においてポジティブに作用する可能性がある一方で、依存的な状況への適応困難さをもたらす可能性もある。

看護介入としては、まず家族システムの理解と支援が重要である。妻と長男それぞれの役割や負担、サポート能力を評価し、必要に応じて社会資源の情報提供や連携調整を行う。特に高齢の妻に対しては、面会時の疲労度を観察し、無理のない面会方法や遠隔でのコミュニケーション方法(電話やビデオ通話など)を提案することも有用である。長男に対しては、仕事と家族サポートの両立における困難さを理解し、医療者との効率的な情報共有方法を検討する。

次に、A氏の役割喪失感への対応として、入院中でも可能な自己決定の機会を設け、自律性を尊重したケア提供を心がける。例えば、ケアの時間帯や方法についての希望を確認するなど、小さな選択でも自己コントロール感を高める工夫を行う。また、A氏の「自分でしようとする意志の強さ」を活かし、回復過程での積極的な参画を促すことも重要である。

退院後の生活を見据えた役割調整と移行支援も重要である。現在の症状や治療の見通しを踏まえ、退院後の生活における注意点や、家庭内での役割の段階的な再獲得について、A氏と家族に情報提供を行う。特に妻の「主人の世話ができるか心配」という不安に対しては、具体的な介護方法の指導や、必要に応じて介護保険サービスの活用について早期から情報提供を行うことが有効である。

経済状況についての情報が不足しているため、社会資源の活用に関する情報収集と提供も重要な介入である。医療社会福祉士との連携を図り、医療費助成制度や介護保険サービス、その他の福祉サービスについての情報提供を行う。長男が検討している「退院後の介護サービス利用」についても、具体的なサービス内容や利用方法、費用などの情報を提供することで、退院後の生活への見通しを持ちやすくする。

継続的な観察としては、面会時の家族の様子や会話内容、A氏と家族の関係性の変化などを注意深く観察する。特に妻の疲労度や不安の表出、長男との連絡頻度や内容などを継続的に評価し、必要に応じて支援方法を調整することが重要である。また、A氏自身の役割認識や家族への思いの変化、退院後の生活への期待や不安についても継続的に関わりを持ち、表出を促すことが求められる。

高齢者においては、加齢に伴う社会的役割の変化や喪失が生じやすく、特に疾病によってこれらの変化が急速に進行することがある。A氏の場合も、88歳という高齢であることに加え、急性疾患による入院という状況が、これまでの役割や関係性に変化をもたらしている可能性が高い。老年期の発達課題である「自我の統合」を支援する視点を持ち、A氏がこれまでの人生や役割を肯定的に振り返り、現在の状況に意味を見出せるよう支援することも重要である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う活動制限に関連した家族役割の変化

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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