【ゴードン】イレウス 入院2日目(0018)| 7.自己知覚-自己概念

ゴードン

本事例の要約

イレウスと診断され入院した88歳男性のA氏。腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送され、腸閉塞と診断された。保存的治療目的で入院となり、現在はイレウス管による減圧治療中である。入院2日目の11月15日に介入するという事例。

7.自己知覚-自己概念

A氏は88歳の男性で、几帳面で自分のことは自分でしようとする意志の強さを持った性格である。このような自立心と自己管理能力の高さは、長年会社員として定年まで働いてきた社会的役割や責任感から培われてきたものと推測される。しかし現在は、イレウスによる入院とイレウス管挿入、ベッド上安静という状況により、自己決定や自立性が制限されていることで、自己概念に影響が生じている可能性がある。特に「早く家に帰りたい」「病院だと落ち着いて眠れない」という発言からは、病院環境への不適応感と共に、自宅での自立した生活への強い希望が窺える。

A氏のボディイメージについては、現在イレウス管が挿入されており、腹部膨満感や腹痛を伴う状態である。これまで健康維持に努めてきたと思われるA氏にとって、腸閉塞という急性疾患による身体の変化は、身体像の混乱や喪失感をもたらしている可能性がある。特に経鼻から挿入されたイレウス管は、外見的変化や違和感を引き起こし、ボディイメージの変容を生じさせると考えられる。また、高齢者においては加齢に伴う外見や機能の変化に対する受容過程も進行中であり、急性疾患による身体変化はこの過程をさらに複雑にする要因となりうる。

疾患に対する認識については、A氏は「前の手術のように、また手術になるのでは」と不安を表出している。これは2年前の虫垂切除術の体験が、現在の病状理解に影響を与えていることを示している。イレウスの原因が以前の手術による腹部癒着である可能性が高いことから、A氏は過去の手術体験と現在の状況を関連づけて理解しようとしていると考えられる。一方で、「年には勝てないね」という発言からは、加齢に伴う体力低下や回復力の衰えを自覚し、受容しようとする姿勢も見られる。さらに「退院したら健康に気をつけよう」という前向きな発言は、疾患体験を通じた健康管理への意識の高まりを示唆している。

自尊感情については、A氏の「自分のことは自分でしようとする意志の強さ」という特性が、現在の依存的状況によって脅かされている可能性がある。自立性を重んじるA氏にとって、排泄や清潔ケアなどの基本的なセルフケアを他者に依存せざるを得ない状況は、自尊感情の低下をもたらすリスクがある。特に高齢男性は、身体機能の衰えや依存状態を受け入れることに抵抗感を示すことが多く、A氏においても同様の心理的葛藤が生じている可能性がある。

育った文化や周囲の期待については、情報が限られているため、さらなる情報収集が必要である。A氏の生育歴や家族観、職業観などの文化的背景を理解することで、現在の病気体験の意味づけや対処行動をより深く理解することが可能となる。現在の情報からは、妻との二人暮らしで、長男がキーパーソンであることから、家族内での役割意識や責任感が強い可能性がある。また、妻も高齢であることから、A氏は家庭内での夫としての役割や妻への配慮も意識している可能性がある。「主人の世話ができるか心配」という妻の発言に対するA氏の認識や反応についても、情報収集が必要である。

看護介入としては、まずA氏の自律性を尊重したケア提供が重要である。治療上の制限がある中でも、可能な範囲で意思決定の機会を設け、ケアの方法や時間帯などの選択肢を提示することで、自己決定権を尊重する。例えば、清潔ケアの方法や時間帯の希望を確認するなど、小さな選択でも自律性を支援することが有効である。

次に、病状と治療に関する適切な情報提供を行う。イレウスの病態や保存的治療の意義、予測される経過などについて、A氏の理解度に合わせた説明を行うことで、状況の理解と受容を促進する。特に「前の手術のように、また手術になるのでは」という不安に対しては、保存的治療の目的と有効性、手術への移行基準などを明確に説明することが重要である。

身体イメージの変化に対する支援も重要である。イレウス管の必要性や管理方法を説明し、一時的な変化であることを強調する。また、身体の変化に対する感情表出を促し、それを受容する姿勢で関わることで、ボディイメージの再構築を支援する。

さらに、A氏の強みと対処能力を認識し、強化するアプローチが有効である。几帳面で自己管理能力の高いA氏の特性を活かし、治療への参画意識を高める工夫を行う。例えば、イレウス管からの排液量や性状の観察を一緒に行い、改善の兆候を共有するなどの関わりが考えられる。「退院したら健康に気をつけよう」という発言を支持し、具体的な健康管理方法についての情報提供も有効である。

家族との関係性においては、面会に来る妻と電話で状況を確認する長男との連携を強化する。特に妻の「主人の世話ができるか心配」という不安に対しては、退院後の生活を見据えた支援計画を家族と共に検討することが重要である。家族内での役割調整や社会資源の活用について、早期から情報提供と相談支援を行うことで、A氏と家族の不安軽減を図る。

継続的な観察としては、A氏の言動や表情から自己概念の変化や適応過程を評価する。特に依存状態への適応困難さや自尊感情の低下を示す言動(「迷惑をかけて申し訳ない」「こんなことになって情けない」など)に注意を払い、適切な心理的サポートを提供する。また、回復過程における前向きな発言や自己効力感の回復を示す言動(「少しずつ良くなっている気がする」「自分でできることが増えてきた」など)も捉え、肯定的なフィードバックを行うことが重要である。

高齢者においては、加齢に伴う役割喪失や身体機能の低下が自己概念に大きな影響を与えることが知られている。A氏の場合も、88歳という高齢であることを考慮し、老年期の発達課題である自我の統合と絶望の克服を支援する視点を持ってケアを提供することが重要である。A氏が自身の人生を肯定的に振り返り、現在の疾患体験を含めた人生の意味づけができるよう、傾聴と共感的理解を基盤とした関わりを継続することが求められる。

看護問題の明確化

#疾患に伴う身体機能の制限と依存状態に関連した自己概念の混乱

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

看護の攻略部屋wiki

看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK


コメント

タイトルとURLをコピーしました