【ゴードン】イレウス 入院2日目(0018)| 10.コーピング-ストレス耐性

ゴードン

本事例の要約

イレウスと診断され入院した88歳男性のA氏。腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送され、腸閉塞と診断された。保存的治療目的で入院となり、現在はイレウス管による減圧治療中である。入院2日目の11月15日に介入するという事例。

10.コーピング-ストレス耐性

A氏は現在、イレウスによる腹痛や腹部膨満感、イレウス管挿入による不快感、ベッド上安静という制限された入院環境に置かれている。「早く良くなって帰りたい」「病院だと落ち着いて眠れない」という発言からは、入院環境への適応困難とストレス状態が窺える。特にA氏は几帳面で自分のことは自分でしようとする意志の強さを持つ性格であるが、現在は排泄や清潔ケアなど基本的な日常生活動作も看護師の介助を必要とする状況である。このような自律性の制限は、自立心の強いA氏にとって大きなストレッサーとなっていると考えられる。また、「前の手術のように、また手術になるのでは」という不安や、夜間の睡眠障害も精神的ストレスを増強する要因となっている。

仕事や生活でのストレス状況については、A氏は現在無職であり、元会社員として定年まで働いていたことが示されている。しかし、退職後の生活様式や日常的なストレス要因、趣味や社会活動などについての具体的な情報は不足している。A氏が日常生活で経験しているストレスの内容や程度、それに対する対処方法を理解することは、入院中のストレス管理や退院後の生活支援に重要であるため、さらなる情報収集が必要である。

ストレス発散方法についても具体的な情報は限られているが、飲酒習慣として「晩酌として日本酒を1合程度、週に3~4回摂取していた」という情報がある。アルコールは適量であれば一時的にストレス緩和効果をもたらすことがあるが、長期的な対処方法としては限界があり、入院中は継続できない。A氏の持続可能なストレス対処方法(例:趣味、運動、社会的交流など)についての情報収集が必要である。

家族のサポート状況については、妻との二人暮らしであり、キーパーソンは長男である。妻は76歳と高齢ではあるが、「毎日面会に来て励ましている」ことから、精神的サポートの重要な源となっていることが窺える。長男は「仕事で面会時間は短い」ものの、「電話で頻繁に状況を確認している」とあり、遠隔からではあるが継続的な関心と支援を提供している。これらの家族からのサポートはA氏のストレス対処に肯定的な影響を与えていると考えられるが、一方で、妻の「主人の世話ができるか心配」という発言や、長男の「父の年齢を考えると心配」という発言からは、家族自身もストレス状態にあることが推測される。家族のストレス状態がA氏に伝わることで、逆にA氏の心理的負担が増加する可能性も考慮する必要がある。

生活の支えとなるものについては、具体的な情報が不足している。A氏の価値観や信念、人生における重要な経験や達成感、精神的な支柱となるものなどを理解することで、ストレス対処能力の強化や心理的回復力(レジリエンス)の促進に役立てることができる。特に高齢者においては、長年の人生経験から培われた対処方法や価値観が、危機的状況への適応に重要な役割を果たすことが知られている。

A氏は「年には勝てないね」と冗談を言いながらも、「退院したら健康に気をつけよう」と前向きな発言もしており、困難な状況に対しても肯定的な見通しを持とうとする姿勢が見られる。これはストレス対処において重要な認知的側面であり、回復過程において活用できる強みである。

また、A氏の年齢(88歳)を考慮すると、加齢に伴うストレス対処能力の変化も考慮する必要がある。高齢者は長年の経験から培われた対処スキルを持つ一方で、認知的処理速度の低下や生理的な回復力の減少により、ストレスに対する脆弱性が増す場合もある。特に身体的ストレス(疼痛、不眠など)に対する耐性は加齢とともに低下する傾向があり、A氏の場合も、腹痛や睡眠障害によるストレスが増強されている可能性がある。

看護介入としては、まずストレッサーの軽減と環境調整が重要である。イレウス管の不快感を最小限にするための工夫(固定方法の調整など)や、疼痛コントロールの徹底(ペンタジン15mg筋注の適切な使用)、睡眠環境の調整などを行う。また、ベッド上であっても可能な範囲での自己決定と自律性を尊重し、ケアの時間や方法についての希望を確認するなど、コントロール感を高める関わりを持つ。

次に、効果的なストレス対処方法の支援を行う。A氏のこれまでの対処方法(晩酌など)が現在の状況では使用できない場合、代替となる方法(呼吸法、筋弛緩法、気分転換となる会話や音楽鑑賞など)を提案し、実践を支援する。特に認知的側面へのアプローチとして、「退院したら健康に気をつけよう」という前向きな発言を支持し、回復への見通しを共有することも有効である。

家族を含めた心理的サポートの強化も重要である。面会時間を有効に活用し、A氏と家族の良好なコミュニケーションを促進する。特に妻の不安(「主人の世話ができるか心配」)については、退院後の生活や介護に関する具体的な情報提供や指導を行い、不安軽減を図る。長男に対しても、遠隔からのサポート方法や、必要に応じた社会資源の活用についての情報提供を行う。

継続的な観察としては、A氏のストレス反応(不安、焦り、怒り、抑うつなどの感情表出や、睡眠障害、食欲不振などの身体症状)を注意深く観察し、評価する。特に高齢者は非典型的なストレス反応(せん妄、認知機能の一時的低下、身体症状の増悪など)を示すことがあるため、バイタルサインやMMSEスコアの変化なども含めた包括的な評価を行う。

また、ストレス対処能力の強化に向けて、A氏の強みや資源を積極的に見出し、活用することも重要である。几帳面で自己管理能力の高いという特性を活かし、治療への参画意識を高める(例:イレウス管からの排液量や性状の観察を一緒に行うなど)ことで、状況への適応を促進する。

高齢者のストレス対処を支援する際には、長年の人生経験から形成された価値観や信念を尊重し、その人らしい対処方法を見出せるよう支援することが重要である。A氏の場合も、これまでの人生で培ってきた強みや対処能力を引き出し、活用できるような関わりを継続することが、入院中のストレス管理だけでなく、退院後の生活適応においても有効であると考えられる。

看護問題の明確化

#疾患に伴う身体的制限と入院環境に関連したストレス対処効果の低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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