【ゴードン】イレウス 入院2日目(0018)| 2.栄養-代謝

ゴードン

本事例の要約

イレウスと診断され入院した88歳男性のA氏。腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送され、腸閉塞と診断された。保存的治療目的で入院となり、現在はイレウス管による減圧治療中である。入院2日目の11月15日に介入するという事例。

2.栄養-代謝

A氏(88歳男性)の栄養・代謝状態について、現在の状況と入院前との比較を通してアセスメントする。A氏は入院前、妻が作る和食中心の食事を1日3食規則正しく摂取できていた。水分摂取も1日1500ml程度と良好であり、基本的な栄養と水分のバランスが保たれていたと考えられる。しかし、現在はイレウスの治療のため絶飲食が指示されており、点滴による水分・電解質管理が行われている状態である。口渇感の訴えがあることから、水分摂取の欲求が満たされていない可能性がある。

好きな食べ物については具体的な情報がないため、今後の食事再開に向けて嗜好調査が必要である。食事に関するアレルギーは記載されていないが、花粉症のアレルギーがあるため、果物や野菜などの交差反応についても確認が必要である。特に高齢者では食物アレルギーの自覚がないまま症状が現れることもあるため、詳細な情報収集が重要である。

身体計測データについては、身長160cm、体重53kgであり、BMIは20.7と標準範囲内である。しかし、高齢者においては筋肉量の減少が基礎代謝量に影響するため、BMI値だけでは栄養状態を正確に評価できない可能性がある。身体活動レベルは、入院前は日常生活動作は自立していたが、腰椎圧迫骨折の既往による軽度の腰痛があり、長距離歩行の際には杖を使用することがあったことから、やや低下していたと考えられる。現在は医師の指示によりベッド上安静となっており、活動量がさらに制限されている。必要栄養量については、ハリス・ベネディクト式を用いると、基礎代謝量は約1250kcal/日、現在の活動係数を考慮すると必要エネルギー量は約1500kcal/日と推定される。

食欲に関しては、入院前は良好であったが、現在はイレウスによる腹部症状と絶飲食のため評価できない状況である。嚥下機能は入院前は問題なく、自力で食事摂取可能であった。口腔内の状態は、現在は絶飲食により乾燥気味であり、うがい水による口腔ケアを実施している。口腔内の乾燥は唾液分泌の減少を示しており、高齢による唾液腺機能の低下に加え、絶飲食や薬剤の影響も考えられる。口腔内の乾燥は細菌増殖のリスクとなるため、定期的な口腔ケアの継続が必要である。

嘔吐・吐気については、入院の契機となった症状であり、11月13日朝から腹痛と嘔吐が出現していた。イレウス管の挿入後は、茶褐色の排液が認められているが、現在の嘔気の有無についての明確な記載はない。イレウス管からの排液量は入院1日目は950mlと多かったが、入院2日目には500ml程度と減少傾向にある。これはイレウス管による減圧効果を示していると考えられるが、腹部症状や嘔気の有無について継続的な観察が必要である。

皮膚の状態については、明確な記載はないが、88歳という高齢であること、ベッド上安静の指示があること、アルブミン値の低下があることから、褥瘡発生のリスクが高いと考えられる。特に仙骨部や踵部など圧迫を受けやすい部位の皮膚状態の観察と予防ケアが重要である。医師からも褥瘡予防のための体位変換と清潔ケアの継続が重要であるとの指示がある。

血液データについては、栄養状態に関連する項目として、Albは2.9g/dLと低値を示しており、低栄養状態であることを示唆している。これは急性期の炎症反応による影響も考えられるが、高齢であることも影響している可能性がある。TPも5.9g/dLと低下しており、総合的なタンパク質栄養状態の不良を示している。貧血傾向も見られ、RBC 3.60×10⁶/μL、Hb 11.2g/dL、Ht 36.2%といずれも基準値を下回っている。これは慢性的な栄養不良や高齢による造血機能の低下が影響している可能性がある。

電解質については、Naは130mEq/Lと低値であり、低ナトリウム血症の状態である。これはイレウスによる体液喪失や絶飲食による影響と考えられる。一方、Kは5.3mEq/Lとやや高値を示しており、腎機能低下(eGFR 45mL/min/1.73㎡)による排泄障害の影響が考えられる。高カリウム血症は不整脈などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、厳重な観察が必要である。

血糖値については、Gluが145mg/dLとやや高値を示している。糖尿病の既往は記載されていないが、高齢者では耐糖能異常が潜在していることが多く、ストレスによる血糖上昇も考えられるため、継続的な観察が必要である。

以上のアセスメントから、A氏は低栄養状態にあり、電解質バランスの異常、口腔内乾燥、褥瘡発生リスクなど、栄養・代謝に関する複数の問題を有していると考えられる。これらは高齢であることや現在のイレウスという疾患、絶飲食という治療方針が複合的に影響していると考えられる。

必要な看護介入としては、まず輸液による適切な水分・電解質補給の管理が重要である。口渇感に対しては、うがい水による口腔ケアを定期的に行い、口腔内の乾燥予防に努める。褥瘡予防のために、定期的な体位変換(少なくとも2時間ごと)、圧迫部位の除圧、皮膚の清潔保持を行う。電解質異常、特に高カリウム血症については、不整脈などの症状出現に注意し、定期的な心電図モニタリングや血液検査結果の確認を行う。

今後、イレウス症状が改善し経口摂取が再開される際には、段階的な食事内容の調整と摂取状況の観察が必要となる。特に高齢者では、急激な食事再開による消化器症状の悪化や誤嚥のリスクがあるため、慎重な対応が求められる。また、低栄養状態の改善のために、タンパク質・エネルギー摂取量の確保と栄養状態のモニタリングが重要である。

継続的な観察が必要な項目としては、イレウス管からの排液量と性状、腹部症状の変化、バイタルサインの推移、電解質値の変動、褥瘡発生リスク部位の皮膚状態、口腔内の状態などが挙げられる。また、A氏の年齢を考慮すると、退院後の栄養管理についても、家族(特に妻)への指導を含めた支援計画が必要である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う絶飲食状態に関連した栄養摂取不足
#疾患に伴う腸管機能障害に関連した体液・電解質バランスの異常
#疾患に伴う活動制限に関連した褥瘡発生のリスク

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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