【ゴードン】イレウス 入院2日目(0018)| 11.価値-信念

ゴードン

本事例の要約

イレウスと診断され入院した88歳男性のA氏。腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送され、腸閉塞と診断された。保存的治療目的で入院となり、現在はイレウス管による減圧治療中である。入院2日目の11月15日に介入するという事例。

11.価値-信念

A氏の信仰については、「特になく、宗教的な儀式や習慣への配慮は必要としていない」という情報がある。しかし、信仰がないことは必ずしも価値観や信念がないことを意味するわけではなく、A氏の人生観や死生観、道徳的判断の基準となる価値体系については、さらなる情報収集が必要である。特に88歳という高齢であることを考慮すると、長い人生経験を通じて培われた独自の価値観や信念を持っていると推測される。これらを理解することは、A氏の意思決定プロセスを尊重し、その人らしいケアを提供する上で重要である。

意思決定を決める価値観や信念については、直接的な情報は限られているが、いくつかの特徴が窺える。A氏は几帳面で自分のことは自分でしようとする意志の強さがあるという性格特性から、自律性や自己決定を重視する価値観を持っていると推測される。現在の入院状況では、イレウス管挿入やベッド上安静という制限の中で自己決定の機会が限られているが、その中でも可能な限り自分の意思を表明しようとする姿勢が見られる。「早く良くなって帰りたい」「病院だと落ち着いて眠れない」などの発言は、自宅での自立した生活を重視する価値観の表れと考えることができる。

また、「年には勝てないね」と冗談を言いながらも、「退院したら健康に気をつけよう」という前向きな発言からは、健康を価値として重視し、自己管理や予防的健康行動に対する肯定的な態度を持っていることが推測される。この健康に対する価値観は、現在の治療への協力的な姿勢にも影響を与えている可能性がある。

家族との関係性においても、A氏の価値観が反映されていると考えられる。妻との二人暮らしであり、妻は毎日面会に来て励ましていることから、家族の絆を重視する価値観が窺える。また、長男がキーパーソンとなっていることも、家族内での役割や責任、世代間の関係性に関する伝統的な価値観を持っている可能性を示唆している。

目標については、短期的には「早く良くなって帰りたい」という願望が表明されているが、中長期的な人生目標や、退院後の具体的な生活目標についての情報は不足している。A氏にとっての「良い生活」や「質の高い人生」がどのようなものであるかを理解することは、意思決定支援や退院支援において重要である。特に高齢者においては、残された人生をどのように生きたいか、どのような価値を優先したいかという終末期に近づく中での価値の再評価が行われることが多い。A氏の場合も、今回の入院を機に、自身の価値観や人生目標について再考している可能性がある。

加齢による価値観の変化についても考慮する必要がある。エリクソンの発達理論によれば、老年期の発達課題は「自我の統合 対 絶望」であり、自分の人生を振り返り、意味や価値を見出すことが重要となる。A氏の88歳という年齢を考慮すると、これまでの人生経験を統合し、残された時間をどのように過ごすかについての価値判断を行っている段階にあると推測される。特に今回の疾患体験は、自身の健康や生命の有限性を再認識させる機会となり、価値観の再評価や優先順位の変更をもたらす可能性がある。

看護介入としては、まずA氏の価値観と信念を尊重した意思決定支援が重要である。治療や検査、ケアの選択肢を提示する際には、A氏の自律性を尊重し、十分な情報提供と相談の機会を設ける。特にイレウス管管理や安静度の変更、食事再開などの治療方針については、A氏の理解と同意を得ながら進めることが重要である。

次に、A氏の価値観や目標を反映したケア計画の立案を行う。例えば、自律性を重視する価値観を考慮し、可能な限り自己決定の機会を設けることや、健康を重視する価値観を活かした健康教育や自己管理支援を行うことが有効である。また、家族の絆を重視する価値観を考慮し、面会時間の調整や家族との効果的なコミュニケーション支援も重要である。

さらに、スピリチュアルケアの視点からのアプローチも検討する。特定の宗教的信仰はないとされているが、人生の意味や目的、死生観などのスピリチュアルな側面への支援は、高齢者の心理的安寧に重要である。傾聴と共感的理解を基盤に、A氏が自身の人生や現在の疾患体験に意味を見出せるような関わりを持つことが有効である。

退院に向けては、A氏の目標に沿った退院支援計画の立案が重要である。「早く家に帰りたい」という願望を尊重しつつも、安全で持続可能な在宅生活のための支援体制を検討する。特に妻の「主人の世話ができるか心配」という不安や、長男が「退院後の介護サービス利用も検討している」という発言を踏まえ、A氏の価値観と現実的な支援ニーズのバランスを図った計画を、A氏と家族の参画のもとに立案することが重要である。

継続的な観察としては、A氏の発言や行動、表情などから価値観や信念、目標の表出や変化を捉える。特に治療経過に伴う心境の変化や、将来への見通しに関する発言には注意を払い、記録する。また、家族との関わりの中での価値観の表出(例:家族への気遣いや感謝の表現など)も重要な観察ポイントである。

高齢者の価値観や信念は、長い人生経験を通じて形成され、個人の生きる指針となっている。A氏の場合も、88年の人生で培ってきた価値体系を尊重し、それを看護ケアに反映させることで、その人らしさを大切にした看護を提供することが可能となる。限られた情報の中でも、自律性、健康、家族の絆などの価値観が窺えるA氏に対して、これらの価値観を尊重した関わりを継続することが、入院生活の質の向上と退院後の適応促進につながると考えられる。

看護問題の明確化

なし

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

看護の攻略部屋wiki

看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK


コメント

タイトルとURLをコピーしました