本事例の要約
イレウスと診断され入院した88歳男性のA氏。腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送され、腸閉塞と診断された。保存的治療目的で入院となり、現在はイレウス管による減圧治療中である。入院2日目の11月15日に介入するという事例。
看護計画#1
看護問題
#疾患に伴う腹部手術歴と加齢に関連したイレウス再燃・状態悪化のリスク
長期目標
イレウスが改善し、退院時には腸管機能が回復して自立した排泄が可能となる
短期目標
1週間以内にイレウス症状が軽減し、排ガスがみられ、経口摂取が開始できる
≪O-P≫観察計画
・イレウス管からの排液量と性状、色調の変化を6時間ごとに確認する
・腹部の膨満感、圧痛の有無と程度を1日3回評価する
・腸蠕動音の頻度と強さを4時間ごとに聴取する
・排ガスの有無と量、性状を確認する
・尿量と性状(色調、混濁、濃縮の有無)を毎回測定する
・腹痛の部位、性状、強度(NRSスケール)を定期的に評価する
・バイタルサイン(特に体温、血圧、脈拍)の変動を4時間ごとに測定する
・血液検査データ(特にBUN、Cre、Na、K値)の推移を確認する
・水分出納バランスを24時間単位で評価する
・嘔気・嘔吐の有無と程度、性状を観察する
・腹部X線検査の結果から腸管ガス像の変化を確認する
・意識状態や全身倦怠感など全身状態の変化を観察する
≪T-P≫援助計画
・イレウス管の固定部位を定期的に確認し、皮膚トラブルを予防する
・イレウス管の屈曲や閉塞がないよう適切な位置に調整する
・体位変換時にはイレウス管の牽引に注意し、安全に実施する
・尿器の使用時には羞恥心に配慮し、プライバシーを保護する
・口腔内の乾燥予防のため、2時間ごとに口腔ケアを実施する
・褥瘡予防のため、2時間ごとに体位変換を行う
・ベッド上での運動(足首の背屈・底屈、膝の屈伸)を1日3回促す
・医師の指示に基づき、腹部の温罨法を適切に実施する
・点滴の滴下状況と刺入部を1時間ごとに確認する
・不安軽減のため、処置や観察の際には説明を十分に行う
・疼痛時には医師の指示に基づき、適切に鎮痛剤を使用する
・清潔保持のため、清拭とリネン交換を毎日実施する
≪E-P≫教育・指導計画
・イレウスの病態と治療方針について患者と家族に説明する
・イレウス管の必要性と注意点について理解を促す
・経口摂取再開時の段階的な方法と注意点を指導する
・再発予防のための食事内容(食物繊維の適量摂取、少量頻回食)について説明する
・水分摂取の重要性と目標量(1日1500ml程度)を伝える
・腹部手術後の癒着によるイレウス再発のリスクと早期症状(腹痛、腹部膨満感、嘔気)の説明をする
・便秘予防のための生活習慣(規則的な排便習慣、適度な運動)について指導する
・退院後の服薬管理(特に降圧剤の継続)について家族を含めて説明する
・退院後の活動と休息のバランスについて具体的に指導する
・退院後の受診スケジュールと腹部症状出現時の対応について説明する
看護計画#2
看護問題
#疾患に伴う絶飲食状態に関連した栄養摂取不足
長期目標
退院時までに低栄養状態が改善し、必要栄養量(約1500kcal/日)を経口摂取できるようになる
短期目標
イレウス症状が改善し、1週間以内に段階的な経口摂取が開始され、水分1000ml/日以上の摂取が可能となる
≪O-P≫観察計画
・血清アルブミン値、総蛋白値、ヘモグロビン値の推移を確認する
・体重変化を毎日測定し、急激な減少がないか評価する
・口腔内の乾燥状態、口内炎や潰瘍の有無を1日2回観察する
・皮膚の乾燥状態、弾力性、褥瘡リスク部位の発赤を4時間ごとに観察する
・電解質値(特にNa、K値)の変動を確認する
・イレウス管からの排液量と性状の変化を6時間ごとに確認する
・浮腫の有無と程度を1日1回評価する
・腹部症状(膨満感、腸蠕動音、排ガスの有無)を4時間ごとに観察する
・水分出納バランスを24時間単位で評価する
・経口摂取再開後の摂取量、残食量を毎食確認する
・嚥下機能の状態を経口摂取再開時に評価する
・口渇感や空腹感の訴えの有無と程度を確認する
≪T-P≫援助計画
・輸液の滴下状況を1時間ごとに確認し、適切な投与速度を維持する
・口腔ケアを2時間ごとに実施し、乾燥予防と粘膜保護を図る
・皮膚の清潔を保つため、全身清拭を1日1回実施する
・褥瘡予防のため、体位変換を2時間ごとに実施する
・経口摂取再開時には、誤嚥予防のため30度以上の上半身挙上を保持する
・経口摂取再開時は患者の好みを考慮した食事内容を医師と相談する
・1回の食事摂取量を少量から始め、患者の状態に合わせて徐々に増量する
・食事摂取時の姿勢保持と環境調整を行い、疲労を最小限にする
・タンパク質やエネルギー補給を優先し、栄養価の高い食品から提供する
・嚥下しやすい食形態(ゼリー、軟菜食など)を選択する
・食事中および食後30分は誤嚥徴候の観察を継続する
・食事の介助が必要な場合は、自立度を尊重しながら適切に支援する
≪E-P≫教育・指導計画
・絶飲食の必要性とその期間について患者と家族に説明する
・経口摂取再開時の段階的な進め方(水分から流動食、軟食へ)について指導する
・高齢者の栄養必要量と効率的な栄養摂取方法について家族に説明する
・退院後の食事内容(高タンパク質、適切なエネルギー量)について具体的に指導する
・水分摂取の重要性と目標量(1日1500ml程度)を伝える
・口腔ケアの方法と重要性について患者と家族に指導する
・食事時の姿勢や環境調整の重要性について説明する
・少量頻回の食事摂取方法について指導する
・体重測定の重要性と方法について説明する
・食欲不振時の対応方法(好みの食品、温度調整など)について家族に指導する
看護計画#3
看護問題
#疾患に伴う腸管機能障害に関連した便秘
長期目標
退院までに腸管機能が回復し、自力での排便が可能となり、規則的な排便パターン(1日1回程度)を確立する
短期目標
イレウス症状が改善し、1週間以内に排ガスがみられ、自発的な腸蠕動が回復する
≪O-P≫観察計画
・排ガスの有無、頻度、量、性状を毎回確認する
・腸蠕動音の頻度、強さ、部位を4時間ごとに聴取する
・腹部の膨満感、緊満度、圧痛の有無と程度を4時間ごとに評価する
・イレウス管からの排液量、性状、色調の変化を6時間ごとに確認する
・排便の有無、量、性状、回数を毎回確認する
・腹痛の部位、性質、強度(NRSスケール)の変化を定期的に評価する
・水分出納バランスを24時間単位で評価する
・バイタルサインの変動(特に体温上昇や頻脈)を定期的に観察する
・経口摂取再開後の食事摂取量と内容を毎食確認する
・尿量と性状の変化を毎回確認する
・腹部X線検査の結果から腸管ガス像の変化を確認する
・血液検査値(BUN、Cre、電解質)の推移を確認する
≪T-P≫援助計画
・イレウス管の適切な位置を維持し、屈曲や閉塞がないよう調整する
・ベッド上での体位変換を2時間ごとに実施し、腸管の蠕動を促進する
・医師の許可があれば、腹部マッサージを時計回りに1日3回実施する
・医師の指示に基づき、腹部の温罨法を適切に実施する
・活動制限の範囲内でベッド上での足首の屈伸運動を促進する
・医師の許可が得られた段階で、ベッド上座位や端座位への姿勢変換を支援する
・経口摂取再開時は、水分から開始し徐々に食事内容を調整する
・経口摂取再開後は、食後30分間の座位保持を促し消化を助ける
・排便時のプライバシーを確保し、羞恥心に配慮した環境を整える
・医師の指示に基づき、腸管機能改善のための薬剤を適切に使用する
・排尿時は自然な姿勢がとれるよう環境を整え、排便反射を促進する
・イレウス管の固定部や鼻腔の皮膚トラブルを予防するケアを実施する
≪E-P≫教育・指導計画
・イレウスの病態と治療方針について患者と家族に説明する
・腸管機能回復の過程と排ガス・排便の重要性について理解を促す
・経口摂取再開後の食事内容(食物繊維を含む食品の摂取)について具体的に指導する
・水分摂取の重要性と目標量(1日1500ml程度)を伝える
・腹部手術後の癒着によるイレウス再発予防の生活指導を行う
・自宅での適度な運動方法(散歩など)について具体的に説明する
・排便習慣を確立するための生活リズムの整え方を指導する
・便秘予防のための食事内容(野菜、果物、発酵食品など)について説明する
・腹部症状出現時の早期受診の重要性と判断基準を説明する
・退院後の排便状況のセルフモニタリング方法を指導する
事例の目次
【ゴードン】イレウス 入院2日目(0018)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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