【ゴードン】慢性閉塞性肺疾患”COPD” 入院4日目 (0008)| 8.役割-関係

ゴードン

本事例の要約

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の入院4日目の事例である。長年の喫煙習慣があり、入院前から呼吸困難感の増強を認めていた。入院後、酸素療法と薬物療法により症状は改善傾向にあるが、禁煙への意欲は低く、ADLの低下と再発予防が課題となっている。妻は今後の介護に不安を抱えており、包括的な支援を必要としている事例である。

8.役割-関係

A氏は65歳まで大工として勤務していたが、退職することになり、職業人としての役割の喪失を経験している。大工という職業は、A氏のアイデンティティの重要な部分を占めていたと考えられる。退職後は趣味の庭いじりや将棋を通じて自己実現を図っていたが、体力低下により活動が制限されている状況である。

家族構成は70歳の妻との2人暮らしであり、キーパーソンは妻である。妻は毎日面会に訪れており、夫婦間のコミュニケーションは良好である。しかし、妻は「このまま悪化したら介護が必要になるのでは」と強い不安を抱えており、時に涙ぐむ場面もみられている。A氏の喫煙継続に対しても「子供たちみんなが心配している」「少しでも長生きしてほしい」と切実な思いを抱えているが、効果的な働きかけができていない状況である。また、子供たちからも禁煙を勧められているが、A氏は話題を避けるような態度をとっており、家族関係に緊張が生じている可能性がある。

経済状況については、具体的な情報が不足している。退職後の収入源や医療費の負担状況、経済的な不安の有無について、情報収集が必要である。特に、在宅酸素療法の導入可能性も考慮されていることから、医療費の増加に対する経済的な準備状況についても確認が必要である。

必要な看護介入として、まず家族関係の調整が重要である。特に、禁煙をめぐる家族との軋轢について、A氏の気持ちと家族の思いを橋渡しする役割を担う必要がある。また、妻の介護不安に対しては、具体的な支援方法や利用可能な社会資源について情報提供を行い、退院後の生活に向けた準備を支援することが重要である。

社会的な役割の再構築に向けては、A氏の趣味活動や興味のある分野を把握し、呼吸機能の制限下でも可能な活動を一緒に探っていく必要がある。特に、大工としての経験や技能を活かせる新たな活動の可能性について検討することで、自己効力感の回復につながる可能性がある。

経済面については、医療ソーシャルワーカーと連携し、利用可能な医療費支援制度や社会保障制度について情報収集を行う必要がある。また、退院後の治療継続に必要な経済的支援について、早期から検討を始めることが重要である。

今後の観察ポイントとして、家族関係の変化、特に禁煙に関する話題での反応や態度の変化を注意深く観察する必要がある。また、妻の心理的負担の程度や支援ニーズの変化についても継続的な評価が必要である。退院に向けては、具体的な役割分担や支援体制の構築状況、経済的な準備状況についても確認を続ける必要がある。さらに、A氏自身の社会的役割に対する意識の変化や、新たな活動への意欲についても定期的に評価していく必要がある。

看護問題の明確化

#疾患に伴う活動制限に関連した家族役割の変容リスク

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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