本事例の要約
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の入院4日目の事例である。長年の喫煙習慣があり、入院前から呼吸困難感の増強を認めていた。入院後、酸素療法と薬物療法により症状は改善傾向にあるが、禁煙への意欲は低く、ADLの低下と再発予防が課題となっている。妻は今後の介護に不安を抱えており、包括的な支援を必要としている事例である。
5.睡眠-休息
入院前のA氏は、夜間の咳嗽と喀痰により睡眠が中断されることがあったものの、睡眠導入剤を使用することなく休息が取れていた。日中は趣味の庭いじりや将棋を楽しむなど、活動と休息のバランスを保っていたが、呼吸困難感の増強により活動量が徐々に制限されていた。この活動量の低下は、本来の生活リズムや睡眠の質に影響を及ぼす可能性があったと考えられる。
入院後は呼吸状態の改善に伴い、夜間の咳嗽が減少し、睡眠の質は改善傾向にある。現在は日中の呼吸リハビリテーションや病棟内での活動により適度な身体的疲労が得られており、それが夜間の良好な睡眠につながっていると考えられる。72歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う睡眠時間の短縮や睡眠の分断化が生じやすい時期であるが、現時点では睡眠に関する訴えはなく、睡眠導入剤の使用も必要としていない。
しかし、入院による環境の変化や活動制限、また慢性閉塞性肺疾患による呼吸機能の制限が、今後の睡眠パターンに影響を与える可能性がある。特に、病室での安静を強いられる環境下では、日中の活動量が不足し、生活リズムが乱れる可能性がある。さらに、夜間の排泄のためのトイレ移動時には酸素ボンベの切り替えや歩行器の使用が必要であり、これらの動作が睡眠を妨げる要因となる可能性もある。
必要な看護介入として、まず睡眠・覚醒リズムの維持を支援することが重要である。日中は呼吸リハビリテーションへの参加を促し、適度な活動量を確保することで、夜間の良質な睡眠につなげることが必要である。また、病室内での環境調整として、温度、湿度、照明の管理を適切に行い、快適な睡眠環境を整えることも重要である。夜間のトイレ移動時には、必要に応じて看護師が付き添い、安全な移動を確保することで、睡眠の中断による影響を最小限に抑える必要がある。
退院後の生活を見据えた介入として、自宅での睡眠環境の調整方法や、効果的な休息の取り方についても指導が必要である。特に、呼吸困難感により臥床時の体位に制限がある場合は、枕の使用方法や就寝時の体位について具体的な助言を行うことが重要である。また、日中の活動と休息のバランスを自己管理できるよう、活動量の調整方法についても指導を行う必要がある。
今後の観察ポイントとして、夜間の咳嗽や喀痰の有無、呼吸困難感の程度、睡眠時の体位、夜間のトイレ移動の頻度などを継続的に観察する必要がある。また、日中の活動量と疲労度、休息のとり方についても評価を続け、必要に応じて活動と休息のバランスを調整していく必要がある。さらに、退院が近づいた際には、自宅での睡眠環境の整備状況や、家族の支援体制についても確認が必要である。
看護問題の明確化
なし
事例の目次
【ゴードン】慢性閉塞性肺疾患”COPD” 入院4日目 (0008)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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