本事例の要約
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の入院4日目の事例である。長年の喫煙習慣があり、入院前から呼吸困難感の増強を認めていた。入院後、酸素療法と薬物療法により症状は改善傾向にあるが、禁煙への意欲は低く、ADLの低下と再発予防が課題となっている。妻は今後の介護に不安を抱えており、包括的な支援を必要としている事例である。
3.排泄
排泄状況について、入院前は自立して排泄を行っており、日中・夜間ともにトイレでの排泄が可能であった。排便は1日1回程度で便秘傾向はなく、下剤の使用も必要としていなかった。ただし、呼吸困難感により、トイレまでの移動時に息切れを強く自覚していた。現在は病室外の個室トイレまで歩行器を使用し、酸素ボンベに切り替えて看護師が付き添い歩行している。トイレ内での下衣の上げ下げや後始末は自立しており、便器からの立ち上がりも手すりを使用して安定している。
排泄パターンについて、排便は1日1回で性状は普通便である。排尿回数や量については具体的な記録がないため、詳細な観察が必要である。特に、高齢者では夜間頻尿や排尿障害が生じやすいため、排尿パターンの把握が重要である。バルーンカテーテルは挿入されていない。
腎機能に関する血液データでは、BUNが20mg/dL、Crが0.9mg/dLと正常範囲内である。糸球体濾過量(GFR)の具体的な数値は記載されていないが、高齢者では加齢に伴う腎機能の低下が一般的であるため、定期的なモニタリングが必要である。
水分摂取については、食事は全量摂取できており、水分も自発的に摂取できている。しかし、具体的な摂取量の記録がないため、適切な水分出納の評価が困難である。慢性閉塞性肺疾患患者では、気道分泌物の粘調度を下げるために十分な水分摂取が重要となるため、1日の水分摂取量と尿量の記録が必要である。
腹部の状態については、腹部膨満や腸蠕動音に関する情報が不足している。呼吸困難による活動制限や、姿勢の制限が腸管運動に影響を与える可能性があるため、腹部の視診、聴診、触診による評価が必要である。また、高齢者では腸管運動の低下や腹筋力の低下により、便秘のリスクが高まる。特に活動量の低下は腸蠕動運動を減少させ、便秘を引き起こす重要な要因となる。便秘による努責は、胸腔内圧を上昇させ、呼吸困難感を増強させる可能性がある。さらに、努責による疲労は、すでに呼吸困難により制限されている日常生活活動にさらなる影響を及ぼす可能性がある。そのため、便秘の予防は呼吸器症状の管理において重要な要素となる。排便状況の観察と便秘予防のための積極的な介入が必要である。
このアセスメントから、以下の看護介入が必要である。まず、排泄の自立支援として、安全な移動環境の整備と、呼吸困難感に配慮した介助方法の確立が重要である。トイレまでの距離や移動時間を考慮し、必要に応じて休憩をとりながら移動することで、呼吸困難感の増強を予防する。また、トイレ内の環境整備として、手すりの位置や高さが適切か確認し、必要に応じて調整を行う。
排泄パターンの把握のため、排尿回数、量、性状、排便回数、性状について記録を行う。特に夜間の排尿状況については、睡眠への影響も考慮しながら観察する必要がある。水分出納については、1日の摂取量と排泄量を記録し、バランスを評価する。必要に応じて飲水を促し、適切な水分バランスの維持を図る。
腹部状態の観察として、1日1回以上の視診、聴診、触診を実施し、腸蠕動音や腹部膨満の有無を確認する。便秘の予防に向けて、可能な範囲での運動促進や、食事内容の工夫について検討する。また、状況に応じて下剤の必要性を検討する。また、呼吸リハビリテーションと並行して、腹筋力の維持・改善を図ることで、排泄機能の維持を支援する。
退院に向けては、自宅での排泄環境の確認と必要な設備の提案を行う。特に、呼吸困難感による移動制限を考慮し、手すりの設置や福祉用具の活用について検討する必要がある。また、家族に対して、排泄介助時の注意点や呼吸困難時の対応方法について指導を行うことが重要である。
看護問題の明確化
#慢性閉塞性肺疾患に伴う活動制限に関連した便秘発生のリスク状態
事例の目次
【ゴードン】慢性閉塞性肺疾患”COPD” 入院4日目 (0008)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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