【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 2.栄養-代謝

ゴードン

本事例の要約

本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。

2.栄養-代謝

A氏は術後3日目であり、食事と水分の摂取状況は、術後1日目から流動食を開始している。現在の食事摂取量は約6割程度と十分とは言えず、水分摂取量は1日1000ml程度である。手術による腸管への侵襲および腸管蠕動の回復過程にあることから、腹部膨満感のため全量摂取が困難な状況である。食事時の姿勢は上半身を45度挙上して摂取しており、誤嚥予防の観点からも適切な姿勢が保たれている。本日(術後3日目)から食事を流動食から五分粥に変更する指示が出ており、消化管手術後の段階的な食事形態の変更が実施されている。術後の消化管機能の回復過程として、食事形態の変更に伴う腹部症状(腹痛、腹部膨満感、嘔気、嘔吐など)の出現がないか注意深く観察する必要がある。

入院前の食生活は、妻が作る和食中心の献立で、野菜を多く取り入れるよう心がけていた。また、月に2~3回程度、趣味の囲碁の集まりで外食することもあった。好きな食べ物に関する具体的な情報はないが、ビールを晩酌程度(350ml/日)飲用していたことから、アルコールとの相性が良い食事を好む可能性がある。食事に関するアレルギーの情報はなく、アレルギーとしては花粉症のみであることから、食物アレルギーによる食事制限の必要はないと考えられる。しかし、大腸癌術後の食事指導として、高繊維食の適切な摂取や十分な水分摂取の重要性について、退院指導に含める必要がある。

A氏の身長は173cm、体重は68kg、BMIは22.7であり、標準体重範囲内である。術前の身体活動レベルは、近所を30分程度散歩することはあったが特に計画的な運動習慣はなく、低~中程度と推測される。Harris-Benedictの式を用いた基礎エネルギー消費量の概算(男性:66.5+13.8×体重kg+5.0×身長cm-6.8×年齢)に基づくと、A氏の基礎エネルギー消費量は約1,469kcal/日程度と推定される。身体活動レベルを低~中程度(1.3~1.5)とすると、必要エネルギー量は約1,910~2,204kcal/日となる。しかし、術後の状態であることから、現在はこれよりも低いエネルギー摂取量から開始し、徐々に増加させていく必要がある。術後の体重変化や栄養状態を定期的に評価しながら、個別の栄養必要量を調整していくことが重要である。

A氏の食欲については、腹部膨満感のため食欲が低下している可能性があるが、徐々に回復していると考えられる。嚥下機能は良好で問題はなく、口腔内の状態についても特記すべき問題はない。嘔気については現在ないと記載されており、嘔吐も認められていない。しかし、術後の腸管蠕動の回復に伴い、吻合部周辺の違和感を訴えることがあり、これが食欲に影響している可能性がある。腹部膨満感の緩和のために、酸化マグネシウムの内服を開始し、排ガスや排便状況を観察することになっている。腹部症状の変化に注意しながら、食事摂取量の増加を支援する必要がある。

皮膚の状態については、腹部に5か所の創部があり、ダグラス窩にドレーン1本が留置されている。創部の詳細な状態(発赤、腫脹、浸出液の有無など)についての具体的な記載はないが、術後経過は良好とされていることから、現時点では創部感染の徴候はないと推測される。しかし、術後合併症予防の観点から、創部の状態を定期的に観察し、早期に異常を発見することが重要である。褥瘡の有無については明確な記載がないが、術前のADLが自立していたこと、術後も早期離床を進めていることから、褥瘡発生のリスクは比較的低いと考えられる。ただし、術後の活動制限による長時間の同一体位が続く場合には、褥瘡予防のためのケア(体位変換、褥瘡予防マットレスの使用など)が必要となる。

血液データについては、術前と術後3日目の値を比較すると、いくつかの変化が認められる。アルブミン値は入院時4.1g/dLから術後3.5g/dLへと減少しており、これは手術侵襲による栄養状態の一時的な低下を反映していると考えられる。総蛋白も7.2g/dLから6.6g/dLへと減少している。赤血球数は4.28×10⁶/μLから3.82×10⁶/μLへ、ヘモグロビン値は13.2g/dLから11.8g/dLへ、ヘマトクリット値は40.1%から36.2%へとそれぞれ減少しており、これは手術時の出血(120mL)および術後の生理的な変化によるものと考えられる。ナトリウムは140mEq/Lから138mEq/Lへ、カリウムは4.2mEq/Lから4.1mEq/Lへとわずかに減少しているが、いずれも正常範囲内である。血糖値は98mg/dLから118mg/dLへと上昇しているが、これは手術侵襲によるストレス反応として一般的に見られる変化である。HbA1cは入院時5.4%で正常範囲内であり、術後は測定されていない。CRPは0.58mg/dLから3.82mg/dLへと上昇しており、これは手術侵襲による炎症反応を反映している。これらの血液データの変化は術後の一般的な経過として解釈できるが、特にアルブミン値やヘモグロビン値の推移を継続的にモニタリングし、栄養状態や貧血の進行がないか評価する必要がある。

A氏は65歳であり、加齢に伴う生理的変化として、基礎代謝の低下や消化吸収機能の軽度低下が考えられる。しかし、術前のBMIが標準範囲内であることや、特に栄養障害を示唆する所見がないことから、現時点では加齢による栄養状態への顕著な影響は認められない。ただし、高齢者は若年者と比較して手術侵襲からの回復に時間を要することがあり、術後の栄養管理には十分な配慮が必要である。

以上を総合すると、A氏の栄養-代謝状態は、術後の一時的な低下はあるものの、重篤な栄養障害には至っていないと考えられる。今後は食事形態の変更に伴う腹部症状の観察、食事摂取量の増加支援、水分バランスの管理、創部の状態観察などを継続的に行う必要がある。また、退院に向けて、大腸癌術後の食事指導(高繊維食の適切な摂取、十分な水分摂取など)や、生活習慣の改善指導を計画的に実施することが重要である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う腸管切除術に関連した栄養摂取不足

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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