本事例の要約
本事例は、65歳男性が下血とS状結腸癌StageⅡAと診断され、腹腔鏡下S状結腸切除術を受けた術後3日目の事例である。本日7月26日に術後合併症の予防と早期離床、ADL拡大に向けた看護介入を行う。
3.排泄
A氏は腹腔鏡下S状結腸切除術、D3リンパ節郭清術、機能的端々吻合術施行後3日目である。排便に関しては、術後のため腸管蠕動の回復途上にあり、術後2日目の夕方に初めて少量の排ガスが認められたが、現在までに排便はない状態である。入院前は1日1回の規則的な排便があり、便の性状は有形軟便であった。便秘傾向があり、時々市販の酸化マグネシウムを服用することがあったことから、元来腸管運動の低下傾向があったと考えられる。術後の腸管運動の促進のために、酸化マグネシウム330mgを1日3回毎食後に本日から開始予定であり、センノシド12mgを1日1回就寝前(頓用)で処方されている。腹部は軽度膨満しているが、腹部X線検査では腸管ガスの貯留を認めるものの、術後イレウスの所見はないとされている。腸蠕動音は聴取できるようになっており、腸管機能の回復が徐々に進んでいることが示唆される。術後の腸管蠕動の回復パターンとしては個人差があるが、通常は術後3〜5日で排便が見られるため、排ガス・排便の有無を継続的に観察し、腹部膨満感の増強や腹痛、嘔気・嘔吐などの症状がないか注意深くモニタリングする必要がある。
排尿に関しては、現在はバルーンカテーテルが留置されており、1日の尿量は約1800mlで尿は淡黄色透明である。排尿量は適切であり、脱水や腎機能障害を示唆する所見はない。術後3日目の本日、バルーンカテーテルの抜去を予定している。入院前の排尿状況は日中4〜5回、夜間0〜1回程度であり、特に排尿障害はなかったと考えられる。バルーンカテーテル抜去後は、初回排尿の有無と残尿量の確認が重要であり、残尿量が50ml以下であることを確認する必要がある。65歳男性であることから、加齢に伴う前立腺肥大の可能性もあり、カテーテル抜去後の排尿状況(排尿回数、排尿量、残尿感の有無、尿勢、尿流の途絶など)を慎重に観察する必要がある。また、術後の活動制限による排尿筋力の低下や、腹部手術による一時的な排尿障害の可能性もあるため、適切な排尿姿勢の指導や十分な水分摂取の励行など、排尿を促進する介入が必要である。
輸液と尿量のバランス(in-outバランス)については、具体的な輸液量の記載はないが、1日尿量が約1800mlであることから、水分バランスは概ね良好と考えられる。術後3日目であり経口摂取も開始されているため、輸液量は段階的に減量されていると推測される。水分摂取量は1日1000ml程度であり、経口摂取と輸液を合わせた水分バランスの管理が重要である。術後の浮腫や脱水の徴候がないか観察し、適切な水分バランスを維持することが重要である。
排泄に関連した食事・水分摂取状況としては、現在は流動食を摂取中であり、1回の食事摂取量は約6割程度で、水分は1日1000ml程度摂取できている。腹部膨満感のため全量摂取は難しい状況であるが、水分摂取は比較的良好である。術後の排便促進のためには、十分な水分摂取と食物繊維の摂取が重要であるため、段階的に食事形態を変更しながら、水分摂取を継続的に促す必要がある。本日から食事を流動食から五分粥に変更する指示が出ており、食事形態の変更に伴う腹部症状の変化や排便状況の変化を観察することが重要である。
安静度については、術後2日目からリハビリテーションを開始し、看護師付き添いのもとでベッドサイドでの立位訓練と病室内の短距離歩行(約5m)を1日2回実施している。術後3日目である本日から、病棟内歩行を開始し、徐々に歩行距離を延長していく予定である。適度な活動は腸管蠕動を促進し排便を促すため、早期離床と活動量の段階的増加を支援することが重要である。しかし、活動に伴う疼痛や倦怠感がある場合には、無理のない範囲でのリハビリテーションを進める必要がある。
血液データについては、BUNが入院時15.2mg/dLから術後3日目16.8mg/dLとわずかに上昇しているが、正常範囲内である。Crは入院時0.82mg/dLから術後3日目0.78mg/dLとわずかに低下しているが、こちらも正常範囲内である。GFRの具体的な値の記載はないが、Crが正常範囲内であることから、腎機能は保たれていると考えられる。これらの値から現時点では腎機能障害はないと判断できるが、術後の輸液管理や薬物療法による影響を考慮し、腎機能関連の検査値の推移を注意深く観察する必要がある。特に、バルーンカテーテル抜去後の排尿状況に問題が生じた場合には、腎機能への影響を早期に把握するために、これらの値の変動に注意する必要がある。
A氏は65歳男性であり、加齢に伴う生理的変化として、腸管蠕動の低下や腎機能の軽度低下、前立腺肥大の可能性などが考えられる。特に男性高齢者ではバルーンカテーテル抜去後の排尿障害のリスクが高いため、カテーテル抜去後の初回排尿時には必ず付き添い、排尿状況や残尿感の有無を確認することが重要である。また、加齢による腸管蠕動の低下は術後のイレウスリスクを高める可能性があるため、早期離床や適切な水分摂取、腸管蠕動促進薬の使用など、総合的なアプローチが必要である。
総合すると、A氏の排泄状態は術後の経過としては概ね予測範囲内であるが、術後の腸管機能回復の個人差を考慮し、排ガス・排便状況の観察を継続する必要がある。また、本日予定されているバルーンカテーテル抜去後の排尿状況を慎重に観察し、必要に応じて適切な介入を行うことが重要である。酸化マグネシウムの内服開始後の効果判定や、腹部症状の変化、活動量増加に伴う排泄状況の変化なども継続的に評価する必要がある。
看護問題の明確化
#疾患に伴う腸管切除・吻合術に関連した便秘
#疾患に伴う術後安静に関連した排尿パターン変更のリスク
事例の目次
【ゴードン】大腸癌 術後急性期(0021)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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