本事例の要約
これは膵臓癌末期で緩和ケア病棟に入院中、痛みのコントロールが困難であり、食事摂取量の減少と体重減少が著しく、残された時間をできるだけ自宅で過ごしたいという本人の希望を尊重した在宅緩和ケアへの移行支援が必要な事例である。介入日は入院14日目の5月15日である。
看護計画#1
看護問題
#疾患の進行に伴う疼痛
長期目標
患者が残された時間を自宅で過ごし、疼痛による苦痛が最小限に抑えられた状態で、自分らしい生活を送ることができる
短期目標
1週間以内に疼痛レベルがNRS 3以下に維持され、安静時の苦痛が軽減される
患者と家族が疼痛管理の知識を習得し、自宅での対応に自信を持つことができる
≪O-P≫観察計画
・疼痛の部位、性質、強さ、出現時間、持続時間、増悪因子、緩和因子を評価
・NRSスケールを用いた定期的な疼痛評価(安静時・体動時)を実施
・オピオイド製剤の効果発現時間と持続時間を確認
・レスキュー薬使用回数と効果を評価
・疼痛に伴う表情や行動の変化を観察
・疼痛による睡眠障害や日常生活への影響を評価
・オピオイド製剤の副作用(便秘、悪心・嘔吐、眠気、せん妄など)の出現を確認
・皮膚の状態とフェンタニル貼付部位の皮膚トラブルの有無を確認
・薬剤の効果に影響を与える可能性のある症状(発熱、腹水増加など)を観察
・患者と家族の疼痛管理に対する理解度と不安の表出を確認
≪T-P≫援助計画
・疼痛増強時には安楽な体位への調整を行い、体位変換時の苦痛を軽減
・痛みが強い時間帯を予測し、前もってレスキュー薬の使用を提案
・規則的なフェンタニル貼付剤の交換と適切な貼付部位の選択
・皮膚トラブル予防のためのスキンケアを実施
・疼痛増強時の声かけや傾聴により、精神的安定を図る
・日中の活動と休息のバランスを考慮した日課計画の立案
・夜間の環境調整(照明、音など)により睡眠の質を向上
・腹水による腹部膨満感軽減のための体位調整
・温罨法や冷罨法など非薬物的な疼痛緩和方法の実施
・嚥下困難時の内服薬の剤形変更について医師と相談
・オピオイド使用に伴う便秘予防のための水分摂取と排便コントロール
≪E-P≫教育・指導計画
・疼痛の種類と疼痛管理の基本原則について説明
・オピオイド製剤(フェンタニル貼付剤)の正しい貼付方法と交換時期の指導
・レスキュー薬(オキシコドン速放錠)の使用タイミングと方法について説明
・オピオイド製剤の副作用とその対処法についての指導
・疼痛増強時や急変時の対応方法と連絡先の情報提供
・非薬物的な疼痛緩和方法(リラクゼーション、マッサージなど)の指導
・在宅での医療処置や介護方法について家族への実技指導
・訪問看護や訪問診療の利用方法と連絡体制の説明
看護計画#2
看護問題
#疾患の進行に伴う今後への不安
長期目標
患者が自分らしさを保ちながら、残された時間を有意義に過ごし、平安な気持ちで自宅での療養生活を送ることができる
短期目標
1週間以内に患者が不安や恐れを表出でき、それらに対処するための方略を見出すことができる
2週間以内に患者と家族が今後の見通しについて共通理解を持ち、在宅療養に向けた準備ができる
≪O-P≫観察計画
・不安や恐れに関する言動や表情の変化を観察
・死や予後に関する患者の認識と受容の程度を評価
・在宅療養に関する患者と家族の思いの相違点を確認
・自尊心の低下を示す言動(自己否定的な発言など)を観察
・日々の気分の変動や精神状態の変化を評価
・夜間のせん妄状態と不安との関連性を確認
・身体状態の変化に対する患者の受け止め方を観察
・家族(特に妻)の不安や疲労の程度を評価
・患者の「自分らしさ」に関する価値観や希望を確認
・精神的支えとなっている人間関係や活動を把握
・スピリチュアルな苦痛や実存的な問いに関する表出を確認
≪T-P≫援助計画
・不安や恐れを表出できる静かな環境と時間を確保
・傾聴と共感的態度で患者の思いを受け止める関わりを実践
・日々の生活の中で自己決定の機会を最大限に提供
・「教え子に会いたい」「庭を見たい」などの希望実現に向けた調整
・身だしなみや整容の援助を通じた自尊心の維持
・リラクセーション技法(呼吸法など)の実施による不安軽減
・夜間の環境調整とオリエンテーションによるせん妄予防
・思い出の品や写真などを活用した回想法の実施
・在宅療養に向けた環境整備の支援と具体的な準備の手伝い
・家族との対話の機会を設け、患者の思いを共有できるよう支援
・患者の強みや人生の成功体験を引き出す会話の機会を作る
≪E-P≫教育・指導計画
・疾患の進行に伴う症状変化と対応方法についての説明
・在宅での緊急時対応と連絡体制についての情報提供
・家族に対する患者の心理面への配慮と関わり方の助言
・不安や恐れへの対処法(気分転換、呼吸法など)の指導
・せん妄出現時の適切な対応方法についての家族指導
・患者と家族が互いの思いを表出し合う方法についての助言
・地域の在宅緩和ケア資源(訪問看護、緩和ケア外来など)の情報提供
・自宅での環境調整や介護負担軽減のための工夫の提案
看護計画#3
看護問題
#疾患の進行と治療に関連した自己健康管理の困難さ
長期目標
患者と家族が在宅療養に必要な健康管理の知識と技術を習得し、必要な支援を活用しながら自宅での生活を安全に営むことができる
短期目標
1週間以内に患者と家族が疾患の進行に伴う症状変化の観察ポイントと対処法を理解できる
退院までに家族が在宅での医療処置(疼痛管理、内服管理など)を実施できる自信を持つ
≪O-P≫観察計画
・疾患の進行に伴う身体症状(疼痛、嘔気、腹水など)の変化を評価
・日常生活動作(ADL)の変化と介助が必要な項目を確認
・服薬状況と内服薬の効果・副作用の出現を観察
・フェンタニル貼付剤の貼付部位の皮膚状態を確認
・嚥下状態と内服薬の飲み込みやすさを評価
・水分・食事摂取量と好みの変化を観察
・排泄パターンと便秘の程度を評価
・睡眠状態とせん妄の有無・程度を確認
・転倒リスクの評価と環境因子を確認
・患者と家族の健康管理に対する理解度と不安の表出を観察
・家族(特に妻)の介護負担と疲労の程度を評価
≪T-P≫援助計画
・日常の健康観察(バイタルサイン、症状変化)の記録方法を簡略化
・服薬カレンダーの作成と服薬管理の支援
・嚥下しやすい内服方法の工夫(とろみ剤の使用、内服時の姿勢など)
・転倒予防のための環境整備と動線の確保
・安楽な体位の工夫と体位変換方法の実践
・日中の活動と休息のバランスを考慮したスケジュール立案
・症状出現時の対応手順を明確化したフローチャートの作成
・排便コントロールのための生活リズム調整
・夜間のせん妄予防のための環境調整と対応策の実施
・可能な範囲での水分摂取を促す工夫の実施
・在宅サービス(訪問看護、訪問診療など)との連携体制の確立
≪E-P≫教育・指導計画
・疾患の経過と今後予測される症状変化についての説明
・オピオイド管理(フェンタニル貼付剤の交換方法、レスキュー薬の使用判断)の指導
・症状悪化時のサインと対応方法の指導
・転倒予防のための環境調整と移動介助の方法の指導
・在宅での食事・水分摂取の工夫と摂取量の目安についての説明
・末梢静脈輸液の管理と観察ポイントの指導
・緊急時の連絡体制と対応方法の説明
・利用可能な在宅サービスとその連絡方法の情報提供
・家族の介護負担軽減のためのレスパイトケア活用の提案
事例の目次
【ゴードン】膵臓癌 終末期の看護(0022)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK
コメント