本事例の要約
78歳男性A氏の誤嚥性肺炎による入院で、発熱と呼吸困難を主訴に救急搬送され、入院後に重度の嚥下機能低下を認め経鼻経管栄養を開始した。今後はリハビリテーションをしながら経口摂取を進めていく予定。
3.排泄
A氏の排泄状況について、入院前は自立しており排尿・排便ともに問題は認められなかった。現在の排尿回数は6-7回/日で、尿の性状は黄色透明である。血液データでは血中尿素窒素18.2mg/dL、クレアチニン0.8mg/dLと腎機能は正常範囲内を維持している。尿意は保たれており、日中はポータブルトイレを自力で使用できているが、夜間せん妄による不穏時は看護師の誘導を要する状態である。
排便に関しては2日に1回程度の普通便を認め、下剤の使用は現在も入院前も必要としていない。これは78歳という高齢であることを考慮すると、良好な排便コントロールが保たれていると評価できる。しかし、現在は経鼻経管栄養(1500ml/日)による栄養摂取となっているため、経管栄養剤の浸透圧や投与速度によっては下痢を引き起こす可能性がある。特に注入速度が速すぎる場合や、経管栄養剤の温度、濃度が不適切な場合は下痢のリスクが高まる。下痢が続く場合は、経管栄養剤の種類や投与方法の変更を検討する必要があり、医師や栄養士との相談が必要である。また、活動量の低下は便秘を助長する要因となる可能性もある。
水分出納については、経管栄養による水分摂取量は1500ml/日であるが、投与間の水分フラッシュや内服薬での追加水分量の詳細な情報が不足している。高齢者は脱水のリスクが高く、特に発熱を伴う肺炎の急性期であることから、より詳細な水分出納の把握と管理が必要である。加えて、夜間のせん妄による発汗の程度や量について十分な情報が得られていないため、寝衣や寝具の湿潤状態の確認、体温測定、皮膚の乾燥状態などの詳細な観察が必要である。発汗による不感蒸泄の増加は脱水のリスクを高めるため、必要に応じて水分補給量の調整を検討する必要がある。
腹部の状態については、腹部膨満の有無や腸蠕動音に関する情報が不足しているため、定期的な腹部のフィジカルアセスメントが必要である。経管栄養中の患者は特に腸管運動の低下や腹部膨満のリスクが高いため、注意深い観察が求められる。
必要な看護介入として、まず排尿に関しては、日中の自立した排泄行動を促進しながら、夜間は転倒予防に配慮した排泄介助を実施する必要がある。ポータブルトイレの位置や環境整備を適切に行い、安全な排泄動作を支援する。また、尿量、性状の観察を継続し、脱水や腎機能障害の早期発見に努める。
排便に関しては、経管栄養による便性状の変化や排便回数の変動に注意を払う必要がある。腹部マッサージや可能な範囲での体位変換、早期離床を促し、腸蠕動運動の促進を図る。排便の有無や性状を毎日確認し、便秘の予防と早期発見に努める。
水分管理については、1日の総投与水分量と尿量、不感蒸泄を考慮した正確な水分出納の把握が重要である。発熱や発汗による水分喪失も考慮し、必要に応じて水分投与量の調整を医師に提案する。また、高齢者は口渇中枢の機能低下により脱水を自覚しにくいため、皮膚の緊張度や口腔内湿潤度などの観察も重要である。
今後のリハビリテーション開始に向けて、活動量の増加に伴う排泄パターンの変化にも注意を払う必要がある。また、せん妄症状の改善に伴い、排泄の自立度が向上することも予測されるため、患者の状態に応じた段階的な自立支援を行うことが重要である。
さらに、経管栄養中の腸管合併症予防のため、腹部の膨満感や腸蠕動音の評価、排ガスの有無、腹痛の訴えなどを定期的に確認する必要がある。異常が認められた場合は、速やかに医師に報告し、経管栄養の投与速度や量の調整を検討する。
看護問題の明確化
#せん妄による夜間不穏に関連した転倒・転落のリスク状態(排泄行動時)
#誤嚥性肺炎に伴う経管栄養管理に関連した低栄養・消化器症状出現・脱水・誤嚥性肺炎再燃のリスク状態
事例の目次
【ゴードン】誤嚥性肺炎 入院5日目(0006)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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