本事例の要約
78歳男性A氏の誤嚥性肺炎による入院で、発熱と呼吸困難を主訴に救急搬送され、入院後に重度の嚥下機能低下を認め経鼻経管栄養を開始した。今後はリハビリテーションをしながら経口摂取を進めていく予定。
10.コーピング-ストレス耐性
A氏は入院による急激な環境変化と疾患の進行により、これまでの生活習慣や役割の大きな変更を強いられている。入院前は毎朝の30分程度の散歩や週1-2回の地域の友人との集まりを通じて、規則正しい生活リズムとストレス発散の機会を確保していた。また、飲酒は週1-2回の友人との集まり時のみビール350ml程度の適度な範囲で行っており、社会的交流を通じたストレス対処方法を持っていた。
性格的には几帳面で社交的である一方、自己主張は控えめで、体調不良時でも周囲に相談せず無理をする傾向がある。この特徴は、40年間の管理職経験による責任感の強さと関連していると考えられるが、現在の入院生活においては適切な支援を受け入れにくい要因となっている可能性がある。
家族のサポート状況としては、妻が毎日面会に訪れ、長男が月1回の訪問、次男が2ヶ月に1回の帰省と、定期的な関わりを持っている。しかし、本人の「息子たちは忙しいから、あまり頼りたくない」という発言からは、支援を受けることへの心理的抵抗が感じられる。このような自立性を保ちたい思いと、現実の介護ニーズとの間でストレスを感じている可能性がある。
現在の入院環境では、経鼻経管栄養の開始や活動制限により、これまでのストレス対処方法を用いることが困難な状況にある。特に、せん妄の出現により「仕事に行かなければ」「会社の資料を作らないと」という発言が見られ、環境変化への適応が困難な状態となっている。
必要な看護介入として、まず患者の性格特性を考慮した関わりが重要である。自己主張が控えめな性格を踏まえ、こちらから積極的に声をかけ、不安や要望を表出しやすい環境を整える必要がある。また、これまでの社会的役割や経験を尊重しながら、現状での新たなストレス対処方法を一緒に見出していく支援が必要である。
継続的な観察が必要な項目として、ストレスの表出状況、せん妄症状の変化、家族との関わり方、気分の変化などが挙げられる。特に、自己主張が控えめな性格であることを考慮し、表情や言動などからもストレスがないか観察する必要がある。
さらなる情報収集が必要な項目として、入院前の具体的なストレス対処方法、生活の中での楽しみや生きがい、友人関係などが挙げられる。
また、家族の支援体制を整えるため、長男との予定されている家族カンファレンスでは、患者の性格特性やストレス対処傾向についても共有し、効果的な支援方法について話し合う必要がある。
看護問題の明確化
#入院による環境変化と疾患の進行に関連した非効果的コーピング
事例の目次
【ゴードン】誤嚥性肺炎 入院5日目(0006)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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