【ゴードン】誤嚥性肺炎 入院5日目(0006)| 2.栄養-代謝

ゴードン

本事例の要約

78歳男性A氏の誤嚥性肺炎による入院で、発熱と呼吸困難を主訴に救急搬送され、入院後に重度の嚥下機能低下を認め経鼻経管栄養を開始した。今後はリハビリテーションをしながら経口摂取を進めていく予定。

2.栄養-代謝

A氏は身長165cm、体重は入院前62kgから入院後58kgと急激な4kgの減少を認める。入院前のBMIは22.8kg/m²で標準であったが、現在は21.3kg/m²となっている。78歳という後期高齢者であることを考慮すると、この短期間での体重減少は低栄養のリスクを示す重要な警告サインである。基礎代謝量は、ハリスベネディクト式を用いると約1,250kcal/日と推定され、活動係数1.2、ストレス係数1.2を考慮すると、現状では約1,800kcal/日の摂取が望ましいと考える。現在の経管栄養1500ml/日では必要栄養量が不足している可能性があり、状況に応じて医師に確認していく。

血液データは、アルブミン値が入院時3.6g/dLから現在3.4g/dLと低下傾向にあり、総タンパク質も6.6g/dLと基準値下限に近い。これは急性期の炎症反応による異化亢進、経管栄養への移行期における必要栄養量確保の不足、そして高齢による蛋白同化能の低下が影響していると考えられる。貧血指標については、ヘモグロビン12.8g/dL、ヘマトクリット38.6%、赤血球428万/μLと軽度低下を認めるが、これは急性炎症による相対的な貧血と考えられ大きな問題はないと考える。電解質バランスは、ナトリウム140mEq/L、カリウム4.0mEq/Lと正常範囲を維持できているが、経管栄養管理下での継続的なモニタリングが必要である。血糖値は入院時126mg/dLから現在108mg/dLと改善傾向にあり、現在の栄養管理が血糖コントロールの面では適切に機能していることを示している。

嚥下機能の詳細な評価では、入院前から認められていた咀嚼力の低下と月1-2回のむせこみに加え、40年間の喫煙歴(1日20本)が嚥下反射の低下に影響を及ぼしている可能性が高い。加齢による嚥下関連筋群の筋力低下、喉頭感覚の鈍化、唾液分泌量の減少なども誤嚥のリスク因子として考えられる。現在実施中の嚥下訓練については、リハビリテーション専門職と連携しながら、嚥下筋の強化、咳反射の改善、口腔機能の向上を総合的に進める必要がある。

栄養管理の注意点として、経鼻経管栄養の実施に際しては、以下の点に特に留意が必要である。注入速度は50-100ml/時(石の指示も確認)で開始し、消化器症状や胃内容物の停滞がないことを確認しながら段階的に増量する。チューブ先端の位置確認は毎回の注入前に必ず実施し、X線での確認も定期的に行う。半座位30-45度を保持し、誤嚥性肺炎の予防に努める。また、経管栄養剤の選択については、患者の消化吸収能力、電解質バランス、必要栄養量を考慮し、適切な製剤を医師や栄養士と相談する必要がある。
せん妄による「不穏行動がみられることから、経鼻経管栄養チューブの自己抜去のリスクが高い状態である。このため、チューブの固定方法を工夫し、テープの劣化や固定具合を定期的に確認する必要がある。また、不穏時には家族の協力を得ながら付き添いを強化しする。特に夜間は、せん妄症状が増強する傾向にあるため、頻回な訪室による観察と、早期の症状察知、速やかな対応が必要である。
経管栄養剤の胃食道逆流による誤嚥のリスクもあるため、注入前後30分間は確実に半座位を保持する必要がある。胃内容物の停滞を予防するため、4時間ごとに胃内残渣量の確認を実施し、残渣量が前回注入量の半分を超える場合は注入を一時中止する。せん妄による体動で体位が崩れることも予測されるため、体位の確認と調整に注意する。また、不顕性誤嚥のリスクを考慮し、呼吸音の聴取や痰の性状確認を定期的に実施する必要がある。

水分バランスについては、現在の投与量1500ml/日に加え、投与間の水分フラッシュや内服薬での追加水分、抗生剤の点滴も考慮した総合的な管理が必要である。高齢者は脱水のリスクが高く、また過剰投与も心負荷増大のリスクとなるため、尿量、皮膚緊張度、口腔内湿潤度などを指標とした綿密な観察が重要である。点滴については水分量と、終了の目安について確認が必要である。

口腔ケアについては、経管栄養中であっても一日3回以上の実施が推奨される。特に夜間のせん妄による不穏時も考慮し、口腔内の観察、清拭、保湿を確実に実施する必要がある。また、義歯の使用状況や口腔内トラブルの有無についても情報収集が必要である。

皮膚の状態については、低栄養、活動量低下、加齢による皮膚の脆弱化を考慮し、褥瘡予防の観察とケアが重要である。特に仙骨部、踵部などの褥瘡好発部位の観察を強化し、体圧分散マットレスの使用や定期的な体位変換を実施する必要がある。
褥瘡リスクについては、ブレーデンスケールを用いた評価が必要である。高齢で活動が制限されていること、栄養状態の低下、発熱による発汗、軽度の貧血、アルブミン値の低下などの要因から、褥瘡発生のリスクは高いと判断される。特に、せん妄による不穏時の摩擦やずれの増加、ベッド上での活動制限、経管栄養による低栄養のリスクなど、複数の危険因子が存在している。褥瘡予防には、2時間ごとの体位変換、適切な体圧分散用具の使用、皮膚の清潔保持と保湿、十分な栄養補給が重要である。特に仙骨部、大転子部、踵部などの好発部位については、毎日の皮膚観察を実施し、発赤や皮膚の変化を早期に発見する必要がある。また、シーツのしわや医療機器による圧迫がないよう環境調整を行い、体位変換時にはずれ力の軽減に留意する。リハビリテーション開始後は、活動量の増加に伴う新たな圧迫部位の出現にも注意が必要である。

栄養状態の継続的な評価として、週1回の体重測定、上腕周囲長や下腿周囲長の計測、血液検査データの推移観察を行い、必要栄養量の充足状況を評価することが重要である。また、リハビリテーションの進行に伴い、活動量に応じた必要栄養量の再計算と栄養投与量の調整も必要となる。

今後の経口摂取再開に向けては、嚥下造影検査の結果を踏まえ、段階的な訓練を実施する。訓練開始時は、氷片や少量の増粘剤入りの水分から開始し、安全性を確認しながら食形態と量を調整していく必要がある。この過程では、家族の協力も重要となるため、介入時は妻に同席してもらうなどを検討する必要がある。

看護問題の明確化

#嚥下機能低下に関連した低栄養のリスク
#経鼻経管栄養チューブの留置に関連した誤嚥性肺炎の再燃リスク
#経鼻経管栄養チューブの留置に関連した自己抜去のリスク
#活動制限、低栄養状態に関連した褥瘡発生のリスク

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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