本事例の要約
右胸部痛を主訴に救急搬送され、急性心筋梗塞と診断された65歳男性に対し、緊急カテーテル検査の結果、右冠動脈#2に99%狭窄を認め、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行。術後、CCUでの管理を経て、一般病棟へ転棟となった入院2日目の事例。介入日は3月15日である。
8.役割-関係
A氏は会社経営者として重要な社会的役割を担っており、責任感が強く几帳面な性格である。この経営者としての役割は、A氏の自己概念の中核を成していると考えられ、今回の急性心筋梗塞の発症による突然の入院は、その役割遂行に大きな影響を及ぼしている。入院前は多忙な業務により不規則な生活を送っており、週3-4回の社用での会食があるなど、仕事中心の生活を送っていた。このような生活習慣が、高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患の管理を困難にしていた可能性がある。
家族関係については、妻と二人暮らしであり、妻がキーパーソンとして位置づけられている。妻は毎日面会に訪れており、積極的な支援姿勢を示している。「食事の管理や服薬の確認など、私にできることはしっかりとサポートしていきたい」という妻の発言からは、今後の療養生活における強力な支援者となることが期待できる。一方で、妻は「主人の性格を考えると、退院後すぐに仕事中心の生活に戻ってしまうのではないかと心配です」という不安も表出しており、退院後の生活改善に向けては妻の心配や不安にも配慮した支援が必要である。
経済状況に関する具体的な情報は限られているが、会社経営者という立場から、現時点で経済的な問題は想定されない。ただし、入院期間中の会社運営や、退院後の業務調整に関する具体的な情報が不足しているため、今後の生活設計や職場復帰に向けた計画を立てる上で、これらの情報収集が必要である。
必要な看護介入として、まず職場復帰に向けた段階的な計画立案が重要である。その際、A氏の経営者としての役割と責任を考慮しながら、健康管理との両立が可能な働き方について共に検討する必要がある。特に、これまでの不規則な生活習慣や頻繁な社用での会食など、疾病管理に影響を及ぼす可能性のある業務習慣について見直しを促すことが重要である。
また、妻の支援を効果的に活用するため、医療者、患者、家族間での情報共有と協力体制の構築が必要である。妻の不安に対しては、定期的な面談の機会を設け、A氏の回復状況や今後の見通しについて情報提供を行うとともに、具体的な支援方法についてアドバイスを行う。特に、服薬管理や食事管理など、妻が実践可能なサポート方法について具体的な指導を行うことで、妻の役割遂行への自信を高めることができる。
今後の観察ポイントとして、面会時の夫婦間のコミュニケーションの様子や、妻のストレス状態、支援継続に対する負担感などについても注意を払う必要がある。また、心臓リハビリテーション開始後は、回復状況に応じた職場復帰の時期や方法について、主治医を含めた医療チームで検討を行い、具体的な行動計画を立案していく必要がある。
退院後の生活を見据えた支援として、地域の医療・介護資源との連携体制の構築も重要である。かかりつけ医との情報共有や、必要に応じて産業医との連携を図ることで、職場復帰後の継続的な健康管理体制を整えることができる。定期的な外来受診や検査の予定について、業務スケジュールとの調整が可能な体制を整えることも、治療の継続性を確保する上で重要である。
看護問題の明確化
#急性心筋梗塞に伴う入院治療による社会的役割機能の中断
事例の目次
【ゴードン】心筋梗塞 入院2日目 (0014)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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