本事例の要約
大手IT企業に勤務するシステムエンジニアが、重要なプロジェクトをきっかけに不眠と被害妄想が出現し、その後幻聴も伴うようになった。自宅での興奮行動がみられたため医療保護入院となり、薬物療法により徐々に症状が改善している統合失調症の事例。介入日は2月3日。
11.価値-信念
A氏の信仰に関する直接的な情報は記載されていないため、宗教的価値観や信仰が治療や生活に与える影響については評価することができない。この点については、今後の情報収集が必要である。
価値観や信念については、完璧主義的な性格特性と仕事に対する強い責任感を持っていることが特徴的である。システムエンジニアとしての職業において、この価値観は高い職務遂行能力として発揮されていた一方で、重要なプロジェクトを任されたことをきっかけに不眠が続き、現在の疾患発症の誘因となった可能性がある。仕事に対する強い責任感と完璧を求める価値観は、A氏の行動規範や自己評価の基準として機能していると考えられる。
目標については、「仕事のことが心配」という発言に表れているように、職場復帰への関心が維持されている。父親も「息子の体調が落ち着いてきたら、会社と復職について相談したい」と述べており、職場復帰が具体的な目標として共有されている。また、妹が持参したプログラミングの本への関心は、専門職としてのスキル維持への意欲を示唆している。
必要な看護介入として、まず患者の価値観や信念を十分に理解し、尊重する姿勢で関わることが重要である。完璧主義的な価値観については、その長所を認めながらも、過度のストレスを生まない程度の柔軟性を獲得できるよう支援する。また、職場復帰という目標に向けて、段階的な計画立案を支援し、現実的な達成可能性を検討する必要がある。
デイルームでの活動や作業療法への参加を通じて、仕事以外の価値や興味の発見を促すことも重要である。これにより、生活の質を高める新たな価値観や目標の形成を支援することができる。家族の支援を活用しながら、患者の価値観や目標の実現に向けた環境調整を行う必要がある。
継続的な観察が必要な点として、価値観や信念の表出場面における言動、目標に対する意欲の程度、他者との価値観の共有場面での反応などがある。特に、完璧主義的な価値観が回復過程にどのような影響を与えるか、注意深く観察する必要がある。
追加の情報収集が必要な点として、以下の項目がある。宗教や信仰の有無とその内容、人生観や死生観、家族や社会に対する価値観、仕事以外の生活における重要な価値や目標、発症前の生活における価値基準や意思決定の特徴などである。また、現在の治療や入院生活に対する考えや希望についても確認が必要である。
これらの情報は、患者の全人的な理解と個別性の高い看護計画の立案に不可欠である。特に、統合失調症の症状による価値観や信念への影響を評価し、現実検討力の回復とともに、より適応的な価値観や目標の形成を支援することが重要である。
また、家族との価値観の共有状況についても評価が必要である。両親や妹との良好な関係性は、患者の価値観や目標の実現を支える重要な資源となる可能性がある。特に、父親の復職に対する前向きな姿勢は、患者の目標達成を支援する具体的な力となることが期待される。
看護問題の明確化
#統合失調症の症状と完璧主義的価値観に関連した非効果的な目標設定
事例の目次
【ゴードン】統合失調症 入院21日目 (0010)| 今回の情報
1.健康知覚-健康管理
2.栄養-代謝
3.排泄
4.活動-運動
5.睡眠-休息
6.認知-知覚
7.自己知覚-自己概念
8.役割-関係
9.性-生殖
10.コーピング-ストレス耐性
11.価値-信念
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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