事例の要約
前立腺癌の診断を受け、根治的前立腺全摘除術を施行した高齢男性患者の術後管理と看護介入という事例。介入日は3月15日。
基本情報
氏名はA氏とし、75歳男性である。身長は165cm、体重は68kgで、BMIは24.9と標準範囲内である。家族構成は妻と長男夫婦、孫2人の6人家族で、キーパーソンは妻(73歳)である。職業は元会社員で3年前に定年退職しており、現在は趣味の園芸を楽しんでいる。性格は温厚で協調性があり、医療スタッフの説明にも真摯に耳を傾ける姿勣が見られる。感染症の既往はなく、薬物アレルギーも特にない。認知力はMMSE 28点、HDS-R 27点と良好で、日常生活に支障はない。
病名
前立腺癌(T2N0M0、Gleason score 7)。治療として腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を施行した。
既往歴と治療状況
既往歴として高血圧症があり、15年前から内服治療を継続している。また、糖尿病の診断を8年前に受け、食事療法と内服薬でコントロールしている。前立腺癌については、定期健診でのPSA値上昇(8.2ng/ml)をきっかけに精密検査を受け、今回の診断に至った。
入院から現在までの情報
入院は手術前日に行い、術前オリエンテーションを実施した。手術当日は全身麻酔下で腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を施行し、手術時間は4時間30分であった。術後は集中治療室で1日観察した後、一般病棟に転室した。現在は術後3日目で、疼痛コントロールと早期離床を中心とした看護を実施している。創部の治癒は良好で、感染徴候は認められない。
バイタルサイン
来院時
体温36.2℃、血圧148/82mmHg、脈拍72回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 98%(室内気)であった。
現在
体温36.8℃、血圧135/78mmHg、脈拍78回/分・整、呼吸数20回/分、SpO2 97%(室内気)で、術後経過として安定している。
食事と嚥下状態
入院前
食事は妻の手料理を中心とした和食を好み、1日3食規則正しく摂取していた。嚥下機能に問題はなく、咀嚼力も良好である。喫煙歴は20歳から50歳まで1日20本程度あったが、現在は完全禁煙している。飲酒は晩酌として日本酒を1合程度摂取していた。
現在
術後2日目から流動食を開始し、現在は全粥食に移行している。嚥下機能に変化はなく、食欲も徐々に回復傾向にある。禁酒を継続しており、水分摂取量は1日1500ml程度である。
排泄
入院前
排尿は1日6-7回程度で、夜間頻尿(2-3回)があったが、これは前立腺肥大による症状と考えられていた。排便は1日1回、硬さは普通便で自立していた。
現在
術後は尿道カテーテルを留置しており、血尿が軽度認められるが、徐々に改善傾向にある。排便は術後2日目から開始し、現在は軟便が1日1回程度で、下剤は酸化マグネシウム330mgを1日2回服用している。
睡眠
入院前
就寝時間は22時頃で、起床は6時頃と規則正しい生活を送っていた。夜間覚醒は排尿のため2-3回あったが、再入眠は良好であった。
現在
手術に対する不安や環境変化により入眠困難があり、眠剤としてゾルピデム5mgを頓用で使用している。夜間は2-3時間おきに覚醒するが、日中の活動量を増やすことで改善を図っている。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は老眼鏡を使用して新聞を読むことができ、聴力も日常会話に支障はない。知覚機能に異常はなく、コミュニケーションは良好である。信仰は特にないが、家族の絆を大切にする価値観を持っている。
動作状況
歩行・移乗
入院前は自立歩行が可能で、散歩を日課としていた。現在は術後のため歩行器を使用した歩行訓練を開始している。
排尿・排泄
入院前は自立していたが、現在は尿道カテーテル留置中で看護師が管理している。排便はポータブルトイレを使用している。
入浴・衣類の着脱
入院前は自立していたが、現在は創部保護のため清拭を実施している。衣類の着脱は上半身は自立、下半身は一部介助が必要である。
転倒歴
これまでに転倒歴はないが、術後の活動量低下により転倒リスクがある状況である。
内服中の薬
- アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後(降圧薬)
- メトホルミン 500mg 1日2回 朝夕食後(糖尿病治療薬)
- アスピリン 100mg 1日1回 朝食後(抗血小板薬)
- 酸化マグネシウム 330mg 1日2回 朝夕食後(緩下剤)
- ゾルピデム 5mg 1日1回 就寝前 頓用(睡眠薬)
入院前は自己管理で服薬していたが、入院中は看護師管理とし、服薬確認を徹底している。退院後は再び自己管理に移行予定である。
検査データ
項目 | 入院時 | 最近(術後3日目) | 基準値 |
---|---|---|---|
WBC | 6800 | 9200 | 3500-9000 /μL |
RBC | 445 | 380 | 400-500 万/μL |
Hb | 13.2 | 10.8 | 12.0-16.0 g/dL |
Ht | 39.8 | 32.5 | 36.0-48.0 % |
PLT | 285000 | 245000 | 15-35 万/μL |
TP | 7.2 | 6.8 | 6.5-8.2 g/dL |
Alb | 4.1 | 3.6 | 3.8-5.2 g/dL |
AST | 22 | 28 | 10-35 U/L |
ALT | 18 | 25 | 5-35 U/L |
BUN | 18 | 22 | 8-22 mg/dL |
Cr | 0.9 | 1.1 | 0.6-1.2 mg/dL |
Na | 142 | 140 | 135-147 mEq/L |
K | 4.2 | 4.0 | 3.5-5.0 mEq/L |
CRP | 0.2 | 2.8 | <0.3 mg/dL |
PSA | 8.2 | – | <4.0 ng/mL |
今後の治療方針と医師の指示
尿道カテーテルは術後1週間をめどに抜去予定で、その後排尿機能の回復状況を評価する。病理検査結果を待って、追加治療(放射線療法やホルモン療法)の必要性を検討する。PSA値の定期的な測定により再発の早期発見に努める。リハビリテーションは理学療法士と連携して段階的に進め、2週間程度での退院を目標としている。外来での継続的なフォローアップが重要であり、月1回の定期受診を予定している。
本人と家族の想いと言動
A氏は「手術が成功してほっとしている。早く家に帰って妻の手料理が食べたい」と語り、治療に対して前向きな姿勢を示している。一方で「がんが完全に治ったのか心配」という不安も口にしている。妻は「主人が元気になってくれればそれでよい。私も体調に気をつけて支えていきたい」と献身的な態度を見せている。長男夫婦も「できる限りのサポートをしたい」と協力的で、家族の結束が強いことが伺える。家族全体として治療への理解があり、在宅での療養環境も整っている状況である。
アセスメント
疾患の簡単な説明
前立腺癌は泌尿器系の悪性腫瘍であり、直接的には呼吸器系に影響を与えない疾患である。しかし、腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術を施行したことにより、全身麻酔の影響や術後の疼痛による呼吸抑制、長期臥床による肺機能低下のリスクが存在する。また、75歳という高齢であることから、加齢による生理的な肺機能低下も考慮する必要がある。
呼吸数、SpO2、肺雑音、呼吸機能、胸部レントゲン
現在の呼吸数は20回/分で正常上限に位置しており、術後の軽度の頻呼吸を示している。SpO2は97%(室内気)で正常範囲内であるが、入院前と比較してわずかに低下傾向がみられる。肺雑音に関する詳細な情報は不足しており、聴診による肺音の評価が必要である。胸部レントゲンの結果についても具体的な記載がないため、術後の肺合併症の有無や肺野の状態を確認する必要がある。高齢者では肺活量の低下や残気量の増加といった生理的変化があり、これらが術後の呼吸機能に影響を与える可能性がある。
呼吸苦、息切れ、咳、痰
現在のところ明らかな呼吸苦の訴えはないものの、術後3日目という時期を考慮すると、疼痛による浅呼吸や長期臥床による肺拡張不全のリスクが存在する。体動時の息切れについては詳細な評価が不足しており、歩行器使用時の呼吸状態の観察が重要である。咳や痰の有無については情報が不十分であり、気道分泌物の状況を継続的に評価する必要がある。特に全身麻酔後は気道分泌物の増加や咳嗽反射の低下が起こりやすく、無気肺や肺炎のリスクが高まる。
喫煙歴
20歳から50歳まで1日20本、30年間の喫煙歴があり、pack-year(箱年)は30年に相当する。現在は完全禁煙しているが、長期間の喫煙により慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが存在する。喫煙による肺機能への影響は不可逆的であり、肺胞の破壊や気道の炎症による呼吸機能低下が懸念される。また、術後の創傷治癒や感染リスクにも影響を与える可能性がある。
呼吸に関するアレルギー
薬物アレルギーは特にないと記載されているが、環境アレルギーや食物アレルギーについては詳細な情報が不足している。病院環境での新たなアレルゲンへの曝露により、気管支喘息様症状が出現する可能性も考慮する必要がある。
ニーズの充足状況
現在のSpO2値97%は正常範囲内であり、酸素化は概ね良好である。しかし、術後の活動量低下や疼痛による呼吸抑制により、深呼吸や効果的な咳嗽が困難となっている可能性がある。早期離床と呼吸リハビリテーションにより肺機能の維持・改善を図る必要がある。喫煙歴による肺機能への長期的な影響を考慮すると、予防的な呼吸ケアが重要である。
現在の呼吸状態は安定しているが、術後合併症としての肺炎や無気肺の予防が最優先課題である。継続的な呼吸状態の観察と、深呼吸・咳嗽の促進による気道クリアランスの維持が必要である。また、段階的な活動量の増加により呼吸機能の回復を促進し、呼吸器系の詳細な評価を継続して実施することが重要である。高齢者特有の呼吸筋力低下や胸郭の可動性低下も考慮し、個別性に応じた呼吸ケアの提供が求められる。
食事と水分の摂取量と摂取方法
現在は全粥食に移行しており、術後2日目から流動食を開始した経過を考慮すると、消化機能の回復は良好である。水分摂取量は1日1500ml程度で、術後の脱水予防としては適切な量である。摂取方法は自力摂取が可能であり、嚥下機能に問題がないことが確認されている。しかし、食欲の詳細な評価や摂取カロリー数については具体的な情報が不足しており、栄養状態の詳細な把握が必要である。
食事に関するアレルギー
薬物アレルギーは特にないとされているが、食物アレルギーについての詳細な情報は記載されていない。高齢者では新たな食物アレルギーの発症は稀であるが、病院食への適応や特定の食材に対する反応について継続的な観察が必要である。
身長、体重、BMI、必要栄養量、身体活動レベル
身長165cm、体重68kg、BMI 24.9で標準範囲内であり、入院前の栄養状態は良好であったと考えられる。75歳男性の基礎代謝率を考慮すると、必要栄養量は約1800-2000kcal/日と推定される。しかし、術後の身体活動レベルの低下により、現在の必要栄養量は減少している可能性がある。体重変化の詳細な記録が不足しており、術後の体重推移を継続的に評価する必要がある。
食欲、嚥下機能、口腔内の状態
食欲は徐々に回復傾向にあるとされているが、具体的な摂取率については情報が不足している。嚥下機能は良好で咀嚼力も問題ないが、口腔内の状態については詳細な評価が必要である。高齢者では唾液分泌の低下や口腔乾燥が起こりやすく、これらが食欲や摂食機能に影響を与える可能性がある。
嘔吐、吐気
現在のところ明らかな嘔吐や吐気の訴えはないが、全身麻酔後や術後の疼痛により消化機能が低下している可能性がある。また、内服薬による胃腸障害のリスクも考慮する必要があり、継続的な観察が重要である。
血液データ(TP、Alb、Hb、TG)
TP値は入院時7.2g/dLから術後6.8g/dLへと軽度低下しており、Alb値も4.1g/dLから3.6g/dLへ低下している。これは術後の侵襲による蛋白質の消耗を示している。Hb値は13.2g/dLから10.8g/dLへ著明に低下しており、術後貧血の状態である。TG値については記載がないため、脂質代謝の評価が必要である。これらの数値は栄養状態の悪化を示唆しており、積極的な栄養管理が必要である。
ニーズの充足状況
現在の栄養摂取状況は部分的に充足されているが、血液データから判断すると栄養状態の低下が認められる。術後の創傷治癒や感染予防のためには十分な蛋白質とエネルギーの摂取が必要であり、現在の摂取量では不十分である可能性が高い。高齢者特有の基礎代謝の低下や消化機能の低下も考慮し、個別性に応じた栄養管理が重要である。
術後の創傷治癒促進と栄養状態の改善が最優先課題である。具体的には摂取カロリー数の詳細な評価と栄養補助食品の検討が必要である。また、食事摂取率の継続的な観察と体重変化のモニタリングにより栄養状態の改善を図る必要がある。血液データの改善傾向を確認するため、定期的な検査の実施と管理栄養士との連携による個別の栄養計画の策定が重要である。
排便回数と量と性状、排尿回数と量と性状、発汗
排便は術後2日目から開始し、現在は軟便が1日1回程度である。術前は硬さが普通便で1日1回であったことから、術後の活動量低下や食事変更の影響が考えられる。排便量については具体的な記載がなく、詳細な評価が必要である。排尿については尿道カテーテル留置中であり、血尿が軽度認められるが徐々に改善傾向にある。術前は1日6-7回、夜間頻尿が2-3回あったが、これは前立腺肥大による症状であった。発汗については具体的な情報が不足しており、術後の体温調節機能の評価が必要である。
in-outバランス
水分摂取量は1日1500ml程度であるが、尿量の詳細な記録が不足している。尿道カテーテル留置中であるため、正確な尿量測定が可能であり、腎機能の評価において重要な指標となる。術後の輸液管理も含めた総合的なin-outバランスの評価が必要である。発汗量や不感蒸泄も考慮した水分バランスの詳細な把握が求められる。
排泄に関連した食事、水分摂取状況
現在は全粥食に移行し、水分摂取量は1日1500mlで適切な摂取が行われている。しかし、食物繊維の摂取量については詳細な情報がなく、便秘予防のための食事内容の評価が必要である。術前は妻の手料理を中心とした和食を摂取していたことから、食事内容の変化が排便パターンに影響している可能性がある。
麻痺の有無
神経学的な麻痺は認められないが、術後の疼痛や活動制限により排泄動作に影響を与えている可能性がある。特に腹圧をかけることへの不安や疼痛により、自然な排便が困難となっている状況が考えられる。
腹部膨満、腸蠕動音
腹部膨満や腸蠕動音に関する具体的な情報が不足しており、詳細な腹部アセスメントが必要である。術後は腸管運動の低下が起こりやすく、これらの評価は排泄機能のアセスメントにおいて重要である。聴診による腸蠕動音の確認と触診による腹部膨満の評価を継続的に実施する必要がある。
血液データ(BUN、Cr、GFR)
BUN値は入院時18mg/dLから術後22mg/dLへ軽度上昇しており、Cr値も0.9mg/dLから1.1mg/dLへ上昇している。これらの値は正常範囲内であるが、軽度の腎機能低下を示唆している。75歳という年齢を考慮すると、加齢による腎機能の生理的低下に加え、術後の脱水や循環動態の変化が影響している可能性がある。GFR値の記載がないため、より詳細な腎機能評価が必要である。
ニーズの充足状況
排泄機能のニーズは部分的に充足されている状況である。排便については下剤の使用により維持されているが、自然な排便パターンの回復が課題である。排尿については尿道カテーテル留置により管理されているが、カテーテル抜去後の排尿機能が重要な評価ポイントとなる。高齢者では排泄筋力の低下や膀胱機能の変化があり、これらが術後の回復に影響する可能性がある。
排便パターンの正常化と排尿機能の回復が最優先課題である。具体的には食物繊維摂取の促進と適度な活動量の確保により自然排便を促進する必要がある。尿道カテーテル抜去に向けて膀胱機能の段階的な評価と残尿測定の準備が重要である。また、腎機能の継続的なモニタリングにより、水分・電解質バランスの維持を図る必要がある。腹部症状の詳細な観察を継続し、消化器系合併症の早期発見に努めることが重要である。
ADL、麻痺、骨折の有無
入院前は自立歩行が可能で散歩を日課としており、ADLは完全に自立していた。現在は術後3日目で歩行器を使用した歩行訓練を開始しているが、活動範囲は制限されている。神経学的な麻痺や骨折はないものの、術後の疼痛や創部保護のため動作が制限されている状況である。75歳という年齢による筋力低下や関節可動域の制限も基礎にあり、術後の活動制限によりさらなる身体機能の低下が懸念される。
ドレーン、点滴の有無
尿道カテーテルが留置されており、これが移動時の制約因子となっている。点滴については具体的な記載がないが、術後管理として末梢静脈ラインが確保されている可能性が高い。これらの医療機器により安全な移動への配慮が必要であり、カテーテルやライン類の管理を適切に行いながらの活動が求められる。
生活習慣、認知機能
入院前は規則正しい生活を送っており、22時就寝、6時起床という生活パターンを維持していた。認知機能はMMSE 28点、HDS-R 27点と良好で、指示理解や安全への配慮は十分可能である。性格は温厚で協調性があり、リハビリテーションへの意欲も期待できる。しかし、入院環境への適応や術後の不安が活動意欲に影響している可能性がある。
ADLに関連した呼吸機能
現在の呼吸状態はSpO2 97%で安定しているが、活動時の呼吸変化については詳細な評価が不足している。喫煙歴(30年間、1日20本)による慢性的な呼吸機能への影響があり、活動量増加時の呼吸機能の評価が重要である。術後の疼痛による浅呼吸や呼吸抑制が活動耐性に影響している可能性がある。
転倒転落のリスク
これまでに転倒歴はないが、術後の活動量低下により転倒リスクが高い状況である。高齢者特有のバランス機能の低下や反応時間の遅延に加え、尿道カテーテル留置や術後の疼痛が転倒リスクを増加させている。また、病院環境への不慣れや夜間の視界不良も転倒要因となる可能性がある。
ニーズの充足状況
運動機能のニーズは著しく制限されている状況である。術前の自立した活動レベルと比較すると、現在は大幅な機能低下がみられる。歩行器使用による歩行訓練は開始されているが、段階的な機能回復が必要である。入浴は清拭に変更され、衣類着脱も下半身で一部介助が必要な状態であり、基本的ADLの一部が制限されている。
段階的な活動量増加と転倒予防が最優先課題である。具体的には理学療法士との連携による個別的なリハビリテーション計画の実施が必要である。疼痛コントロールを適切に行いながら、早期離床と歩行訓練を段階的に進める必要がある。転倒予防のためには環境整備と夜間の見守り体制の強化が重要である。また、尿道カテーテル抜去に向けた準備を進めることで、より自立した活動が可能となる。呼吸機能と活動耐性の評価を継続し、安全で効果的な運動療法の提供が求められる。
睡眠時間、パターン
入院前は22時就寝、6時起床という規則正しい睡眠パターンを維持していた。夜間覚醒は排尿のため2-3回あったものの、再入眠は良好であった。現在は手術に対する不安や環境変化により入眠困難が生じており、睡眠パターンの著しい変化が認められる。夜間は2-3時間おきに覚醒し、睡眠の質の低下が顕著である。総睡眠時間については具体的な記載がないが、断眠による疲労の蓄積が懸念される。
疼痛、掻痒感の有無、安静度
術後3日目であることから創部の疼痛が睡眠に影響している可能性が高い。疼痛の詳細な評価については情報が不足しており、疼痛スケールによる客観的評価が必要である。掻痒感については記載がないが、術後の皮膚状態や薬剤による副作用として出現する可能性がある。安静度については歩行器使用での歩行訓練を開始していることから、段階的な活動制限の緩和が行われている状況である。
入眠剤の有無
現在はゾルピデム5mgを頓用で使用している。高齢者では薬物代謝能力の低下により、睡眠薬の効果が遷延する可能性があり、転倒リスクの増加や認知機能への影響が懸念される。また、薬物依存のリスクも考慮し、非薬物的な睡眠促進方法の検討が重要である。
疲労の状態
術後の侵襲や睡眠不足により身体的疲労が蓄積している状況である。日中の活動量を増やすことで改善を図っているが、活動と休息のバランスの調整が必要である。疲労の客観的評価については情報が不足しており、主観的疲労感の詳細な聴取が求められる。高齢者では回復力の低下があり、適切な休息時間の確保が重要である。
療養環境への適応状況、ストレス状況
病院環境への不慣れが睡眠障害の一因となっている。騒音、照明、温度などの環境因子が睡眠に与える影響について詳細な評価が必要である。がんの診断や手術に対する心理的ストレスも睡眠に大きく影響しており、不安や恐怖感の軽減が必要である。家族からの支援は得られているが、心理的サポートの充実が求められる。
ニーズの充足状況
睡眠・休息のニーズは著しく障害されている状況である。術前の良好な睡眠パターンと比較すると、現在は睡眠の質と量の両方が低下している。薬物に依存した睡眠となっており、自然な睡眠パターンの回復が課題である。高齢者特有の睡眠構造の変化(深睡眠の減少、早朝覚醒など)も基礎にあり、個別性に応じた睡眠ケアが必要である。
睡眠の質の改善と自然な睡眠パターンの回復が最優先課題である。具体的には疼痛コントロールの最適化により、痛みによる睡眠中断を防ぐ必要がある。療養環境の調整(照明、騒音の軽減)と睡眠衛生の指導により、睡眠環境を整備することが重要である。日中の活動量増加と規則正しい生活リズムの維持により、自然な睡眠を促進する必要がある。また、心理的サポートの提供により不安の軽減を図り、段階的な睡眠薬の減量を検討することが望ましい。睡眠日誌の活用により客観的な睡眠状態の評価を継続することが重要である。
ADL、運動機能、認知機能、麻痺の有無、活動意欲
入院前は更衣動作が完全に自立していたが、現在は上半身は自立、下半身は一部介助が必要な状態である。認知機能はMMSE 28点、HDS-R 27点と良好であり、更衣の手順や必要性は十分理解している。神経学的な麻痺はないが、術後の疼痛や創部保護のため動作が制限されている。性格は温厚で協調性があり、医療スタッフへの協力的な態度がみられるが、自立への意欲と現実のギャップに対する心理的負担が考えられる。
点滴、ルート類の有無
尿道カテーテルが留置されており、これが下半身の更衣動作を困難にしている主要因である。カテーテル管理を適切に行いながらの更衣が必要であり、安全性と尊厳の保持の両立が求められる。点滴ルートについては具体的な記載がないが、術後管理として末梢静脈ラインが確保されている可能性があり、これも上肢の可動域制限の一因となっている可能性がある。
発熱、吐気、倦怠感
現在の体温は36.8℃で軽度の発熱がみられ、これは術後の生体反応と考えられる。発熱により発汗量の増加があり、更衣回数の増加が必要となる可能性がある。吐気については明らかな訴えはないが、全身麻酔後の影響や内服薬による副作用として出現する可能性がある。術後の侵襲や睡眠不足により倦怠感が生じており、これが更衣動作への意欲低下に影響している可能性がある。
ニーズの充足状況
更衣のニーズは部分的に充足されている状況である。上半身の更衣は自立しているものの、下半身の更衣介助により自立性が制限されている。これは尿道カテーテル留置という医学的必要性によるものであるが、患者の自尊心や羞恥心に配慮した支援が必要である。高齢者では関節可動域の制限や筋力低下があり、これらが更衣動作に影響を与えている可能性がある。
自立性の回復と尊厳の保持が最優先課題である。具体的には尿道カテーテル抜去に向けた準備を進めることで、下半身の更衣自立度を向上させる必要がある。疼痛コントロールを適切に行いながら、段階的な機能回復を促進することが重要である。更衣介助時にはプライバシーの保護と羞恥心への配慮を徹底し、可能な限り自力で行える部分は患者自身に委ねることが必要である。また、適切な衣類の選択(前開きの衣類、着脱しやすい素材など)により、更衣動作の負担軽減を図ることが望ましい。理学療法士との連携により上肢機能の維持・改善を図り、全体的なADL向上につなげることが重要である。
バイタルサイン
現在の体温は36.8℃で軽度の発熱を示している。来院時の体温36.2℃と比較すると0.6℃の上昇がみられ、術後の炎症反応による発熱と考えられる。血圧は135/78mmHgで安定しており、脈拍78回/分・整、呼吸数20回/分で循環動態は安定している。SpO2は97%で酸素化も良好であるが、発熱による代謝亢進により呼吸数がわずかに増加している可能性がある。
療養環境の温度、湿度、空調
病院環境の温度・湿度管理については具体的な情報が不足している。高齢者は体温調節機能の低下があり、環境温度の変化に対する適応能力が低下している。特に術後は血管拡張や発汗機能の変化により、適切な環境調整が重要である。空調システムによる直接的な風の当たりや急激な温度変化が体温調節に影響を与える可能性がある。
発熱の有無、感染症の有無
現在36.8℃の軽度発熱がみられるが、これは手術侵襲による生理的反応の範囲内と考えられる。しかし、感染症の早期兆候としての発熱の可能性も否定できない。創部の感染徴候については「感染徴候は認められない」と記載されているが、継続的な観察が必要である。尿道カテーテル留置により尿路感染症のリスクが高まっており、発熱の原因として考慮する必要がある。
ADL
現在は歩行器使用での歩行訓練を開始しており、活動量は制限されている。活動量の低下により発汗量が減少し、体温調節機能に影響を与えている可能性がある。入院前は散歩を日課としていたことから、活動による体温調節が十分に行われていたが、現在はその機能が制限されている状況である。
血液データ(WBC、CRP)
WBC値は入院時6800/μLから術後9200/μLへ上昇しており、軽度の白血球増多を示している。CRP値は0.2mg/dLから2.8mg/dLへ著明に上昇しており、炎症反応の亢進が確認される。これらの値は術後の正常な炎症反応の範囲内であるが、感染症の可能性を完全に否定することはできない。継続的なトレンドの観察が重要である。
ニーズの充足状況
体温調節機能のニーズは概ね充足されているが、軽度の体温上昇がみられる状況である。高齢者特有の体温調節中枢の機能低下や発汗機能の低下により、環境変化への適応が困難になっている可能性がある。術後の代謝変化と活動量の制限により、正常な体温調節パターンが変化している状況である。
適切な体温管理と感染予防が最優先課題である。具体的には定期的な体温測定により発熱パターンを把握し、38℃以上の発熱時の対応を明確にする必要がある。療養環境の温度・湿度調整により快適な環境を提供し、適切な水分補給により脱水を予防することが重要である。血液データの継続的な監視により感染症の早期発見に努め、創部やカテーテル挿入部の観察を強化する必要がある。また、段階的な活動量増加により自然な体温調節機能の回復を促進し、衣類の調整や寝具の管理により個別性に応じた体温管理を行うことが求められる。
自宅/療養環境での入浴回数、方法、ADL、麻痺の有無
入院前は入浴が自立しており、具体的な入浴回数については記載がないが、一般的な高齢者の入浴パターンを考慮すると週3-4回程度と推測される。現在は創部保護のため清拭を実施している状況である。神経学的な麻痺はないが、術後の疼痛や活動制限により入浴動作が困難となっている。腹腔鏡手術による創部があり、感染予防の観点から入浴制限が必要である。
鼻腔、口腔の保清、爪
口腔ケアの詳細な状況については情報が不足している。高齢者では唾液分泌の低下や口腔乾燥が起こりやすく、口腔内細菌の増殖により感染リスクが高まる可能性がある。嚥下機能は良好とされているが、口腔内の清潔保持が誤嚥性肺炎の予防において重要である。鼻腔の清潔状況や爪の状態についても詳細な評価が必要であり、セルフケア能力の把握が求められる。
尿失禁の有無、便失禁の有無
現在は尿道カテーテル留置中であり、尿失禁は認められない。しかし、カテーテル周囲の皮膚の清潔保持が重要である。便失禁については記載がないが、現在ポータブルトイレを使用しており、排便コントロールは良好と考えられる。会陰部の清潔保持は感染予防の観点から重要であり、特にカテーテル留置中は細心の注意が必要である。
ニーズの充足状況
清潔保持のニーズは部分的に充足されている状況である。清拭による全身清拭は実施されているが、シャワー浴や入浴と比較すると清潔感や爽快感は劣る。高齢者では皮膚の乾燥やバリア機能の低下があり、適切なスキンケアが必要である。術後の創部管理と清潔保持の両立が課題となっている。
感染予防と皮膚統合性の維持が最優先課題である。具体的には創部周囲の清潔保持と適切な創傷管理により感染を予防する必要がある。カテーテル周囲の皮膚ケアを強化し、会陰部の清潔を維持することが重要である。口腔ケアの充実により誤嚥性肺炎を予防し、全身の清潔保持により感染リスクを軽減する必要がある。皮膚の観察を継続し、褥瘡や皮膚トラブルの早期発見に努める必要がある。また、段階的な入浴再開に向けた準備を進め、患者の清潔に対する満足度を向上させることが重要である。
危険箇所(段差、ルート類)の理解、認知機能
認知機能はMMSE 28点、HDS-R 27点と良好であり、危険認識能力は十分保たれている。尿道カテーテル留置により移動時の注意が必要であり、ルート類の管理に対する理解は良好である。しかし、病院環境への不慣れにより、段差や障害物に対する注意が散漫になる可能性がある。歩行器使用により移動範囲は制限されているが、安全な移動に対する意識は高い。
術後せん妄の有無
現在のところ明らかなせん妄症状は認められないが、手術侵襲や環境変化により発症リスクは存在する。睡眠障害や薬物使用(ゾルピデム)がせん妄の誘因となる可能性がある。75歳という年齢や術後の身体的ストレスを考慮すると、継続的な精神状態の観察が必要である。夜間の見当識障害や不安の増強などの前駆症状の有無を評価する必要がある。
皮膚損傷の有無
創部の治癒は良好で感染徴候は認められないとされている。しかし、術後の活動制限により褥瘡発生リスクが高まっている。カテーテル留置部や長時間の同一体位による皮膚損傷の可能性がある。高齢者では皮膚の菲薄化や脆弱性があり、わずかな外力でも皮膚損傷が生じやすい状況である。
感染予防対策(手洗い、面会制限)
薬物アレルギーがないことから、感染予防対策に制限はない。しかし、手洗いや感染予防行動の実施状況については詳細な評価が必要である。尿道カテーテル留置により尿路感染症のリスクが高く、カテーテル管理における感染予防が重要である。面会制限や面会者の感染対策についても適切な指導が必要である。
血液データ(WBC、CRP)
WBC値は9200/μLと軽度上昇しており、CRP値は2.8mg/dLと著明に上昇している。これらは術後の正常な炎症反応の範囲内であるが、感染症の早期兆候として継続的な監視が必要である。トレンドの変化に注意し、さらなる上昇がみられる場合は感染症の可能性を考慮する必要がある。
ニーズの充足状況
安全確保のニーズは概ね充足されているが、複数のリスク因子が存在する状況である。認知機能は良好であるが、身体機能の制限や医療機器の装着により安全性が脅かされる可能性がある。転倒リスクや感染リスクの管理が重要な課題となっている。
転倒予防と感染予防の強化が最優先課題である。具体的には環境整備(床面の整理、照明の確保、手すりの設置)により転倒リスクの軽減を図る必要がある。夜間の見守り体制を強化し、ナースコールの適切な使用を指導することが重要である。感染予防対策として手指衛生の徹底とカテーテル管理の適正化を図り、血液データの継続的な監視により感染症の早期発見に努める必要がある。また、せん妄予防のための規則正しい生活リズムの維持と適切な環境調整を行うことが重要である。家族への安全指導も実施し、面会時の感染予防対策を徹底することが求められる。
表情、言動、性格は問題ないか
性格は温厚で協調性があり、医療スタッフの説明にも真摯に耳を傾ける姿勢がみられる。「手術が成功してほっとしている」という前向きな発言がある一方で、「がんが完全に治ったのか心配」という不安も表現している。表情については具体的な記載がないが、治療に対する前向きな姿勢と根深い不安という二面性が言動から読み取れる。感情表出は適切に行われており、コミュニケーション能力に問題はない。
家族や医療者との関係性
家族との関係性は良好で、妻は「主人が元気になってくれればそれでよい」と献身的な態度を示している。長男夫婦も「できる限りのサポートをしたい」と協力的であり、家族の結束が強いことが確認される。医療スタッフとの関係についても協調的な態度がみられ、治療への理解も示している。信頼関係の構築は良好と考えられる。
言語障害、視力、聴力、メガネ、補聴器
言語障害は認められず、コミュニケーションは良好である。視力については老眼鏡を使用して新聞を読むことができ、日常生活に支障はない。聴力も日常会話に支障はなく、補聴器の使用は不要である。これらの感覚機能はコミュニケーションを促進する要因となっている。
認知機能
MMSE 28点、HDS-R 27点と認知機能は良好で、複雑な情報の理解や意思決定能力は十分保たれている。病状や治療に関する説明を適切に理解し、自分の気持ちや不安を言語化して表現することができている。時間や場所の見当識も良好であり、現実検討能力に問題はない。
面会者の来訪の有無
家族の面会は定期的に行われていると推測されるが、具体的な面会頻度や面会者については詳細な記載がない。妻がキーパーソンであり、長男夫婦の協力も得られている状況から、継続的な家族支援が期待できる。面会制限や感染対策の影響についても評価が必要である。
ニーズの充足状況
コミュニケーションのニーズは概ね充足されているが、心理的支援の必要性が認められる。家族との良好な関係性と医療スタッフとの信頼関係により、基本的なコミュニケーションは確保されている。しかし、がんに対する不安や治療への恐怖について、より深い心理的サポートが必要である。感情表出の促進と不安の軽減が課題となっている。
心理的支援の充実と家族支援の強化が最優先課題である。具体的には積極的な傾聴により患者の不安や恐怖を受け止め、適切な情報提供により治療への理解を促進する必要がある。家族を含めた情報共有の機会を設け、一体となった支援体制を構築することが重要である。がんに対する心理的サポートとして専門的なカウンセリングの検討も必要である。また、患者会や同じ疾患を持つ患者との交流の機会を提供し、ピアサポートを活用することも有効である。定期的な面談により心理状態の変化を把握し、個別性に応じたコミュニケーション支援を継続することが求められる。
信仰の有無、価値観、信念、信仰による食事
信仰は特にないとされているが、家族の絆を大切にする価値観を持っている。これは日本の伝統的な家族観に基づいた価値体系と考えられ、家族中心の意思決定や相互支援を重視している。宗教的な制約はないため、食事や治療方法に関する制限はない。しかし、人生観や死生観については詳細な評価が必要であり、がんという疾患に直面した際の精神的支柱について把握することが重要である。
治療法の制限
宗教的な理由による治療制限はないため、医学的に必要な治療はすべて実施可能である。輸血や手術に対する宗教的制約もなく、最適な治療選択が可能である。ただし、本人や家族の価値観に基づく治療選択の希望があれば、十分な話し合いが必要である。
ニーズの充足状況
宗教的なニーズは特に認められないが、精神的支柱や心の支えに関するニーズは存在する。家族との絆が最も重要な支えとなっており、この関係性の維持が精神的安定につながっている。がんの診断という人生の重大な局面において、生きる意味や価値について考える機会が生じている可能性がある。
家族関係の維持と精神的支援が重要な課題である。具体的には家族との時間を大切にし、絆を深める機会を提供することが必要である。宗教的儀式は必要ないが、日本の文化的背景に配慮した支援が重要である。生きがいや人生の意味について話し合う機会を設け、精神的な成長を支援することが求められる。また、終末期に関する価値観や延命治療に対する考えについて、適切な時期に話し合いを行うことが重要である。家族全体の価値観を尊重し、文化的に適切なケアを提供することが必要である。
職業、社会的役割、入院
元会社員で3年前に定年退職しており、現在は趣味の園芸を楽しんでいる。社会的役割としては家族の中心的存在として、夫・父・祖父としての役割を担っている。6人家族の世帯主として、経済的・精神的な支柱となってきた背景がある。入院により日常的な園芸活動が中断され、家族への心配や負担をかけていることに対する責任感や申し訳なさを感じている可能性がある。
疾患が仕事/役割に与える影響
前立腺癌の診断と治療により、身体的な制約が生じている。園芸という趣味活動は身体機能を必要とするため、術後の回復状況によっては活動の制限が予想される。家族への心配をかけることで、保護者・支援者としての役割に変化が生じている。「早く家に帰って妻の手料理が食べたい」という発言は、家族の一員としての役割への復帰願望を示している。がんという疾患により、将来への不安や家族への負担感が増加している可能性がある。
ニーズの充足状況
役割遂行のニーズは著しく制限されている状況である。入院により日常的な役割が一時的に中断され、園芸活動という生きがいも停止している。家族からの支援を受ける立場となったことで、役割の逆転による心理的負担が生じている可能性がある。達成感や満足感を得られる活動が制限され、自己効力感の低下が懸念される。
役割復帰と新たな生きがいの発見が重要な課題である。具体的には段階的な園芸活動の再開に向けたリハビリテーション計画の策定が必要である。家族との関係性において、支援を受けることの意味について話し合い、相互支援の関係性として捉え直すことが重要である。入院中にできる有意義な活動を見つけ、小さな達成感を積み重ねることで自己効力感の回復を図る必要がある。退院後の生活設計において、体力に応じた園芸活動の継続方法を検討し、新たな役割や生きがいの発見を支援することが重要である。また、同じ疾患を持つ患者への支援や体験談の共有など、新たな社会的役割の可能性についても検討することが有効である。
趣味、休日の過ごし方、余暇活動
趣味は園芸であり、定年退職後の主要な生きがいとなっている。散歩を日課としており、規則正しい生活の中で身体活動と自然との触れ合いを楽しんでいた。新聞を読むことも日常的な活動であり、知的活動への関心も保たれている。家族との時間を大切にし、6人家族での団らんも重要な余暇活動と考えられる。
入院、療養中の気分転換方法
入院中の気分転換方法については具体的な情報が不足している。老眼鏡を使用して新聞を読むことは可能であり、知的活動による気分転換は継続できる状況である。家族との面会が主要な気分転換となっている可能性が高い。テレビ視聴やラジオ聴取など、受動的な娯楽への参加状況についても評価が必要である。
運動機能障害
歩行器を使用した歩行訓練を開始しているが、活動範囲は制限されている。散歩という日課が中断されており、身体的な楽しみが著しく制限されている。術後の疼痛や創部保護により、積極的な身体活動は困難な状況である。上半身の機能は比較的保たれているため、座位でできる活動への参加は可能である。
認知機能、ADL
認知機能は良好(MMSE 28点、HDS-R 27点)であり、複雑な娯楽活動への参加も可能である。ADLの一部制限があるものの、知的活動やコミュニケーションを中心としたレクリエーション活動は十分参加可能である。手指の巧緻性についての詳細な評価が必要であり、手工芸や読書などの活動への適応を評価する必要がある。
ニーズの充足状況
レクリエーションのニーズは著しく制限されている状況である。主要な趣味である園芸が完全に中断され、散歩という日課も停止している。気分転換や楽しみを得る機会が大幅に減少し、生活の質の低下が懸念される。受動的な娯楽への参加は可能であるが、能動的な活動への参加が困難な状況である。
入院中の楽しみの創出と退院後の活動再開準備が重要な課題である。具体的にはベッドサイドでできる園芸関連活動(植物の観察、園芸雑誌の読書、栽培計画の作成など)を導入し、継続的な関心を維持する必要がある。病院内でのレクリエーション活動への参加を促進し、他患者との交流による社会的な楽しみを提供することが重要である。家族との面会時間を活用した共同活動(写真鑑賞、思い出話など)により心理的満足を得られるよう支援する必要がある。退院後の園芸活動再開に向けて、体力に応じた活動計画を立案し、段階的な復帰を支援することが重要である。また、新しい趣味や室内でできる活動の紹介により、活動の幅を広げることも有効である。
発達段階
75歳の高齢期にあり、エリクソンの発達段階では統合性対絶望の段階に位置している。定年退職後3年が経過し、人生の振り返りと新たな生きがいの模索が重要な発達課題となっている。がんの診断という人生の危機的状況に直面し、生の意味や価値観の再構築が求められている段階である。家族との関係性やこれまでの人生の統合が重要な要素となっている。
疾患と治療方法の理解
前立腺癌と腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術について基本的な理解はあるものの、詳細な病態や予後についての理解度は明確ではない。「がんが完全に治ったのか心配」という発言から、治療効果や再発リスクについて十分な理解に至っていない可能性がある。PSA値の意味や定期的な検査の必要性についても理解を深める必要がある。病理検査結果の説明待ちの状況であり、追加治療の可能性についても学習が必要である。
学習意欲、認知機能、学習機会への家族の参加度合い
認知機能は良好(MMSE 28点、HDS-R 27点)であり、学習能力は十分保たれている。医療スタッフの説明に真摯に耳を傾ける姿勢があり、学習意欲は高いと評価される。家族も治療への理解があり、学習機会への参加は積極的である。妻がキーパーソンとして、情報の共有や学習の支援を行っている。家族全体の協力的な態度により、効果的な学習環境が整っている。
ニーズの充足状況
学習のニーズは部分的に充足されている状況である。基本的な疾患理解はあるものの、詳細な病態や治療経過についての理解が不十分である。高齢期の発達課題である人生の統合や死生観の確立について、がんという疾患を通じて深く考える機会が提供されている。家族との学習機会は確保されているが、専門的な知識やセルフケア技術の習得が課題となっている。
疾患理解の深化と自己管理能力の向上が最優先課題である。具体的には前立腺癌の病態、手術の効果、予後について段階的で理解しやすい説明を提供する必要がある。PSA値の変化や定期検査の意義について学習し、長期的な健康管理への理解を深めることが重要である。家族を含めた学習機会を設け、退院後の生活管理や症状観察について具体的な指導を行う必要がある。がんとの向き合い方や生活の質の維持について話し合い、患者教育資材を活用した継続的な学習支援を提供することが重要である。また、同じ疾患を持つ患者の体験談や患者会への参加により、実践的な知識と心理的支援を同時に得られる機会を提供することが有効である。高齢期の発達課題に配慮し、人生の意味や家族との関係性についても学習の機会を設けることが重要である。
看護計画
看護問題
前立腺全摘除術に伴う尿道カテーテル留置に関連した感染リスク状態
長期目標
退院時までに感染徴候なく尿道カテーテルが抜去され、自然排尿が可能となる
短期目標
1週間以内に感染徴候の出現なくカテーテル管理が適切に行われる
≪O-P≫観察計画
・体温、脈拍、血圧、呼吸数の変化
・白血球数、CRP値の推移
・尿の性状(色調、混濁、血尿の程度)
・尿量の変化
・カテーテル挿入部の発赤、腫脹、圧痛の有無
・会陰部の清潔状態
・悪寒戦慄の有無
・排尿時の疼痛や不快感の訴え
・膀胱留置カテーテルの固定状況
・尿路感染症状(頻尿感、残尿感)の有無
≪T-P≫援助計画
・カテーテル周囲の清拭を1日2回実施する
・会陰部の清拭を排便後と就寝前に行う
・カテーテルバッグを膀胱より低い位置に保持する
・カテーテルの屈曲や圧迫を防ぐ体位調整を行う
・十分な水分摂取を促し1日1500ml以上の摂取を支援する
・カテーテル固定部の皮膚保護を行う
・無菌的な尿量測定を実施する
・手指衛生を徹底し感染予防策を実施する
・カテーテル交換時は無菌操作を厳守する
・発熱時は医師へ速やかに報告し指示を仰ぐ
≪E-P≫教育・指導計画
・カテーテル管理の重要性について説明する
・手洗いの正しい方法を指導する
・会陰部の清潔保持方法を説明する
・感染症状(発熱、尿の変化)の観察ポイントを指導する
・水分摂取の重要性について説明する
・退院後のカテーテル管理方法を指導する
看護問題
前立腺全摘除術に伴う疼痛と活動制限に関連した転倒リスク状態
長期目標
退院時までに転倒なく安全に歩行器なしでの移動が可能となる
短期目標
1週間以内に歩行器使用にて転倒なく病棟内の移動が可能となる
≪O-P≫観察計画
・歩行時のふらつきや不安定性
・疼痛の程度と疼痛による活動制限の状況
・下肢筋力と関節可動域の状態
・起立性低血圧の有無
・視力、聴力の状態
・認知機能と判断力の変化
・夜間の見当識と行動パターン
・カテーテルやルート類による移動への影響
・環境への適応状況
・転倒への恐怖心の程度
≪T-P≫援助計画
・歩行器の適切な使用方法を支援する
・移動時はカテーテルバッグを安全に保持する
・疼痛時は鎮痛薬の使用を医師と相談する
・ベッド周囲の環境整備を行う
・夜間の照明を適切に調整する
・滑り止めマットやスリッパを使用する
・段階的な歩行訓練を理学療法士と連携して実施する
・起立時はゆっくりとした動作を支援する
・移動時は必要に応じて付き添いを行う
・ナースコールの適切な使用を促す
≪E-P≫教育・指導計画
・転倒リスクについて説明する
・歩行器の正しい使用方法を指導する
・安全な起立・歩行方法を指導する
・夜間のトイレ使用時の注意点を説明する
・疼痛時の対処方法を指導する
・家族に見守りのポイントを説明する
看護問題
がんの診断と手術に伴う心理的ストレスに関連した睡眠パターン混乱
長期目標
退院時までに睡眠薬に頼らず7時間程度の質の良い睡眠がとれる
短期目標
1週間以内に夜間の中途覚醒が2回以下となり入眠困難が改善する
≪O-P≫観察計画
・入眠までの時間と夜間覚醒回数
・睡眠の質に対する主観的評価
・日中の眠気や疲労感の程度
・不安や心配事の内容と程度
・疼痛による睡眠への影響
・睡眠薬の使用状況と効果
・夜間の行動パターン
・病院環境への適応状況
・家族への心配や不安の表出
・治療や予後に関する不安の程度
≪T-P≫援助計画
・就寝前のリラクゼーション環境を整える
・夜間の騒音や照明を最小限に調整する
・疼痛コントロールを適切に行う
・日中の活動量を段階的に増やす
・規則正しい生活リズムの確立を支援する
・傾聴により不安や心配事を受け止める
・家族との面会時間を調整する
・睡眠薬の適切なタイミングでの服用を支援する
・温かい飲み物の提供などリラックス法を実施する
・必要時は心理カウンセラーとの面談を調整する
≪E-P≫教育・指導計画
・睡眠衛生について説明する
・不安やストレスが睡眠に与える影響を説明する
・リラクゼーション法を指導する
・治療の見通しと予後について分かりやすく説明する
・家族に心理的支援の重要性を説明する
・退院後の生活リズムの整え方を指導する
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
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