本事例の要約
これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。
6.適切な衣類を選び、着脱する
A氏は65歳の女性で、関節リウマチの診断を受け入院している。衣類の着脱に関するADLについて、入院前は自立していたが、関節症状の増悪により特に上着のボタンやファスナーの操作、靴下の着脱に時間を要する状況となっている。しかし、現在も自力で衣服の着脱は行えている。A氏は几帳面で丁寧な性格であり、自立心が強いため、できる限り自分で衣服の着脱を行いたいという意欲が高い。
運動機能については、関節リウマチによる両手指の朝のこわばりと関節痛が主な症状である。特に朝方は手指関節の動きが制限されるため、衣服の細かい操作性を要する動作(ボタンの留め外し、ファスナーの上げ下げなど)に困難を生じている。また、右膝変形性関節症の既往もあり、しゃがんだり前かがみになったりする動作も制限されているため、下着や靴下などの着脱時の姿勢保持にも影響している可能性がある。こうした状況にもかかわらず、A氏の移動能力は保たれており、病棟内は独歩で移動可能である。
認知機能は正常で、日常会話や指示理解に問題はなく、見当識障害も認められない。そのため、適切な衣類の選択や着脱の手順に関する判断能力は十分保持されている。麻痺の所見はなく、運動機能の制限は関節痛とこわばりによるものである。
活動意欲は高く、「自分のことは自分でできるようになりたい」という言葉からも、日常生活動作における自立への強い欲求が伺える。この意欲は衣服の着脱においても維持されており、時間がかかっても自力で行おうとする姿勢が見られる。一方で、「このまま悪化して家事や趣味の編み物ができなくなるのではないか」という不安も抱えており、この不安が活動意欲に影響を与える可能性もある。
現在、点滴やルート類は装着されていない情報が得られており、薬物療法は内服で行われている。このことは衣服の着脱に際して物理的な障害となるものがないことを意味する。ただし、内服薬として抗リウマチ薬のメトトレキサートやプレドニゾロンを服用しており、これらの薬剤による副作用(倦怠感など)の出現に注意が必要である。
発熱については、入院時に37.2℃と微熱を認めていたが、現在は36.8℃と正常体温を示しており、発熱による衣服調整の必要性は低い。吐気についての明確な情報は得られていないが、メトトレキサートの副作用として消化器症状が出現する可能性があるため、観察を継続する必要がある。
倦怠感については、関節痛による睡眠障害の影響で疲労が蓄積している可能性がある。早朝4時頃に関節痛で目覚めることもあり、十分な休息が得られていない状況である。こうした疲労や倦怠感は衣服の着脱という細かな動作を要する活動に対するモチベーションを低下させる要因となりうる。
A氏は65歳であり、加齢に伴う筋力や関節の柔軟性の低下が基盤にある可能性がある。特に手指の巧緻性や肩関節の可動域制限は、高齢者に一般的に見られる変化であり、関節リウマチの症状と相まって衣服の着脱に困難をもたらしていると考えられる。
必要な看護介入としては、まず衣服の種類の工夫が挙げられる。ボタンやファスナーの代わりにマジックテープやゴム製の衣類を提案することで、手指の細かい操作を減らすことができる。また、着脱しやすい前開きタイプの衣類や、伸縮性のある素材の衣類を選択することも有効である。
さらに、着脱動作の工夫と自助具の活用も重要である。ボタンエイドや靴べらなどの自助具の使用方法を指導し、効率的な着脱方法を提案することで、自立した着脱を支援できる。また、リウマチ体操や関節可動域訓練を継続して行うことで、関節機能の維持・改善を図ることも重要である。
加えて、疼痛コントロールの強化も必要である。特に朝のこわばりが強い時間帯の着替えについては、前日夜や起床時の適切な鎮痛薬の使用を検討する。また、温罨法などで関節を温めてから着替えを行うことで、こわばりを軽減させる工夫も有効である。
A氏の衣類の着脱に関する状況は、現時点では自力で可能であるものの時間を要し、今後の関節症状の進行によっては更なる困難が予想される。今後は、関節症状の変化や疲労状態の観察を継続し、必要に応じて介助や自助具の導入を検討する必要がある。また、退院後の生活を見据えて、夫への介助方法の指導や自宅環境の調整(着替えやすい環境づくり)についても検討が必要である。
以上のことから、A氏の適切な衣類を選び着脱するというニーズは、現時点では時間を要するものの自力で行えているため一定程度充足されていると言えるが、朝のこわばりが強い時間帯や疲労が蓄積している状況では十分に充足されていないと考えられる。衣類の種類の工夫、着脱動作の工夫と自助具の活用、疼痛コントロールの強化という3つの側面からの介入により、このニーズのさらなる充足を目指す必要がある。
看護問題の明確化
#疾患に伴う関節機能障害に関連した衣服着脱動作の困難
事例の目次
【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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