本事例の要約
これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。
3.あらゆる排泄経路から排泄する
A氏は65歳の女性で、関節リウマチと診断され入院中である。排便に関しては、入院前は1日1回、普通便であったが、入院後やや不規則となり、2日に1回程度となっている。便の性状は普通便であるが、やや硬めである。下剤は使用していないが、水分摂取を促している状況である。排尿に関しては、入院前は自立しており、特に問題なく排尿を行っていた。現在も自力でトイレまで歩行し排泄を行っている。排尿回数は日中5〜6回、夜間1回程度である。排尿量については具体的な記載がなく、尿の性状についても特記事項はない。発汗に関する情報は記載されていない。
A氏のin-outバランスに関する詳細な記録は提供されていないため、水分摂取量と尿量の正確な測定による評価が必要である。現在の体温は36.8℃と正常範囲内であり、発熱による不感蒸泄の増加はないと考えられる。また、血圧も128/78mmHgと安定しており、循環動態は良好と思われる。
排泄に関連した食事と水分摂取状況については、食事は病院食で常食を摂取しており、食欲は良好で摂取量は8割程度である。水分摂取に関しては、排便がやや不規則になっていることから水分摂取を促していると記載されているが、具体的な摂取量は記載されていない。高齢者は口渇中枢の感受性が低下していることがあり、脱水のリスクが高いため、積極的な水分摂取の促しと摂取量の把握が重要である。また、関節リウマチの治療薬であるメトトレキサートは腎臓から排泄されるため、十分な水分摂取が薬物の排泄を促進し、副作用のリスクを軽減する可能性がある。
麻痺の有無については、明確な麻痺の記載はない。現在の歩行は関節痛のため緩慢であるが、病棟内は独歩で移動可能である。移乗動作はベッドから椅子、トイレへの移動などは問題なく行えている。ただし、朝方は特に関節のこわばりがあるため、起き上がりや立ち上がりに時間を要する。排尿・排便は自立しており、トイレまでの移動、衣服の上げ下げ、後始末まで自分で行えている。
腹部膨満や腸蠕動音に関する情報は提供されていない。これらの情報は排便状況の評価や消化器系の機能状態を把握する上で重要であるため、腹部の視診、触診、聴診による情報収集が必要である。特に入院後に排便が不規則になっている状況では、腸蠕動音の評価や腹部の張りの有無を確認することが重要である。
A氏の血液データとしては、BUN(尿素窒素)は入院時15mg/dL、最近の検査では14mg/dLと基準値(8-20mg/dL)の範囲内である。Cr(クレアチニン)も入院時0.68mg/dL、最近は0.65mg/dLと基準値(0.40-1.10mg/dL)内であり、腎機能は保たれていると考えられる。GFR(糸球体濾過量)の記載はないが、Crが正常範囲内であることから重度の腎機能障害はないと推測される。しかし、高齢者では若年者と比較して腎機能が低下している可能性があるため、推算GFRを算出して評価することが望ましい。また、A氏は高血圧症の既往があり、降圧剤を5年前から服用していることから、腎機能への影響を継続的に観察する必要がある。
加齢による排泄機能への影響としては、高齢者は腎機能の低下により電解質バランスの調整能力が低下しやすく、脱水や電解質異常のリスクが高まる。また、加齢に伴い膀胱容量の減少や尿道括約筋の弱化により排尿パターンの変化(頻尿、切迫性尿失禁など)が生じることがある。さらに、大腸の蠕動運動の低下や腹筋力の低下により排便困難や便秘のリスクが高まる。A氏の場合、現時点では排尿に関する問題は顕在化していないが、入院後に排便が不規則になっていることは、環境変化や活動量の低下、食事内容の変化などの影響が考えられる。
関節リウマチの治療薬による影響も考慮する必要がある。メトトレキサートは腎臓から排泄されるため、腎機能障害がある場合には蓄積し、副作用のリスクが高まる可能性がある。また、非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェン)も腎血流量を減少させ、腎機能に影響を与える可能性があるため、腎機能の定期的なモニタリングが重要である。特に高齢者では薬剤の影響を受けやすいため、注意が必要である。
A氏の排泄状況に影響を与える要因として、関節リウマチによる疼痛や朝のこわばりがある。これらの症状はトイレへの移動や衣服の着脱など、排泄行為全体に影響を与える可能性がある。特に朝方は関節のこわばりにより動作に時間を要するため、排泄行為に支障をきたす可能性がある。また、A氏は「自分のことは自分でできるようになりたい」という強い自立心を持っているため、排泄の自立を維持することは精神的な安定にも寄与すると考えられる。
看護介入としては、まず排便状況の改善のための取り組みが重要である。水分摂取の促進と摂取量の記録、食物繊維を多く含む食品の摂取促進、可能な範囲での適度な運動の奨励などが考えられる。また、腹部マッサージや温罨法の適用も排便を促す効果がある。排尿に関しては、現時点では問題は顕在化していないが、排尿回数や量、性状の継続的な観察が必要である。特に夜間の排尿に関しては、転倒予防のための環境整備(足元灯の設置、ベッドからトイレまでの障害物の除去など)が重要である。さらに、A氏の自立心を尊重しながら、必要に応じて排泄行為をサポートする準備も必要である。
A氏の「あらゆる排泄経路から排泄する」というニーズは部分的に充足していると考えられる。排尿に関しては自立しており、排尿回数も日中5〜6回、夜間1回程度と正常範囲内である。BUNやCrの値からも腎機能は維持されていると考えられる。一方、排便に関しては入院後やや不規則となり、2日に1回程度とやや頻度が低下している。便の性状もやや硬めであることから、水分摂取の促進や食事内容の調整、適度な運動の促進など、排便を改善するための継続的な看護介入が必要である。また、腹部膨満や腸蠕動音、詳細な水分出納、尿量や尿の性状など、排泄機能の詳細な評価に必要な情報が不足しているため、これらの情報収集を行い、より包括的な評価を行う必要がある。総合的には、現時点でのニーズは概ね充足しているが、特に排便状況の改善を目指した看護介入の継続が重要である。
看護問題の明確化
#入院環境の変化と活動制限に関連した便秘傾向
事例の目次
【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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