本事例の要約
これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。
7.体温を生理的範囲内に維持する
A氏は65歳の女性で、関節リウマチの診断で入院中である。バイタルサインについて、来院時の体温は37.2℃と微熱を呈していたが、現在は36.8℃と生理的範囲内に安定している。脈拍は来院時76回/分から現在72回/分、血圧は来院時132/82mmHgから現在128/78mmHgと安定した値を示している。呼吸数も来院時18回/分から現在16回/分、SpO2は来院時98%から現在99%(室内気)と安定している。これらのバイタルサインから、現時点では体温調節機能に問題はなく、生理的範囲内に維持されていると判断できる。
療養環境の温度、湿度、空調についての具体的な情報は得られていないため、情報収集が必要である。特に関節リウマチ患者では、環境温度や湿度が関節症状に影響を与えることがあり、適切な環境調整が重要である。一般的に、関節リウマチ患者にとっては寒冷や湿度の高い環境は関節痛を悪化させる要因となるため、室温は20〜25℃程度、湿度は50〜60%程度に保つことが望ましい。入院環境でこれらの条件が適切に管理されているか確認し、必要に応じて調整を行う必要がある。
発熱については、来院時に37.2℃と微熱を認めていたが、現在は36.8℃と解熱している。この発熱は関節リウマチの疾患活動性に関連していた可能性が高い。リウマチ性疾患では、炎症反応の亢進に伴う軽度の発熱を認めることがある。感染症については、基本情報から感染症はないと記載されており、現在のところ感染兆候は認められていない。しかし、A氏はメトトレキサートとプレドニゾロンを服用しており、これらの薬剤は免疫抑制作用を持つため、感染症のリスクが高まる可能性がある。そのため、今後も発熱や感染徴候の出現に注意深く観察を続ける必要がある。
ADLに関しては、現在の歩行は関節痛のため緩慢であるが、病棟内は独歩で移動可能である。手すりがあれば階段の昇降も可能である。移乗動作はベッドから椅子、トイレへの移動などは問題なく行えている。排泄は自立しており、入浴は看護師見守りのもとシャワー浴を実施している。衣類の着脱は特に上着のボタンやファスナーの操作、靴下の着脱に時間がかかるが自力で行っている。このように、ADLはほぼ自立しており、適度な活動量が確保されていることから、活動による熱産生と放熱のバランスは保たれていると考えられる。
血液データでは、白血球数(WBC)が入院時9,200/μLから最近8,800/μLとやや高値を示しているが、正常範囲上限に近い値である。C反応性蛋白(CRP)は入院時4.2mg/dLから最近3.8mg/dLと高値を示しており、炎症反応の持続を示唆している。これらの所見は関節リウマチの疾患活動性を反映していると考えられ、炎症反応が体温調節に影響を与えている可能性がある。しかし、現在はメトトレキサートとプレドニゾロンなどの抗リウマチ薬による治療が開始されており、炎症反応は軽減傾向にある。血沈(ESR)も入院時48mm/hから最近42mm/hと依然高値ではあるが、改善傾向を示している。
A氏は65歳であり、加齢に伴う体温調節機能の変化も考慮する必要がある。高齢者では皮膚の血管反応性の低下、発汗機能の低下、体温中枢の感受性低下などにより、環境温度の変化に対する適応能力が低下している可能性がある。特に、急激な温度変化や極端な高温・低温環境下では体温調節が困難になることがあるため、環境温度の管理に注意が必要である。
必要な看護介入としては、まず定期的なバイタルサイン測定を継続し、体温変動の有無を観察する必要がある。特に朝晩の体温測定を行い、日内変動のパターンを把握することが重要である。また、関節リウマチの疾患活動性と体温との関連を観察し、発熱が見られた場合は感染症の可能性も考慮して早期に対応する必要がある。
療養環境の調整として、室温や湿度の適切な管理を行い、必要に応じて衣類や寝具の調整を行うことも重要である。特に入浴後や就寝時など体温変動が起こりやすい時間帯には注意が必要である。また、A氏は関節痛により動きが制限されることがあるため、活動と休息のバランスを考慮した生活指導を行い、適切な体温維持を支援する必要がある。
免疫抑制剤を使用しているため、感染予防の指導も重要である。手洗いやうがいの励行、面会者の制限、環境整備などの感染予防策を徹底することで、感染症リスクを軽減し、発熱の原因となる感染症を予防することが必要である。
さらに、関節リウマチに関する患者教育を行い、疾患の特性や体温変動との関連について理解を深めることも重要である。特に、発熱が見られた場合の対応方法や医療者への報告の必要性について指導し、自己管理能力を高めることが望ましい。
以上のことから、A氏の体温を生理的範囲内に維持するというニーズは、現時点では充足されていると判断できる。しかし、関節リウマチの疾患活動性や免疫抑制剤による感染リスクの上昇など、体温変動を引き起こす要因が存在するため、継続的な観察と予防的な看護介入が必要である。特に、療養環境の調整、感染予防策の徹底、定期的なバイタルサイン測定による早期発見・早期対応が重要であり、これらの介入を通じて体温の安定維持を図る必要がある。
看護問題の明確化
#疾患治療に伴う免疫抑制状態に関連した感染リスク状態
事例の目次
【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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