【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
本事例の要約
これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。
この事例で勉強できること
関節リウマチの初期症状と診断・治療プロセス、疼痛管理の重要性、ADLへの影響とその支援方法、患者の不安と対処法、家族の協力体制の構築、退院に向けた指導と継続的な管理の必要性について学ぶことができます。
今回の情報
基本情報
A氏は65歳の女性で、身長155cm、体重48kgである。夫と二人暮らしで、キーパーソンは夫である。退職前は小学校教師として勤務していた。几帳面で丁寧な性格であり、常に自分でできることは自分でやりたいという自立心の強い方である。感染症はなく、薬剤アレルギーとしてペニシリン系抗生物質でじんましんの既往がある。認知機能は正常で、日常会話や指示理解に問題はなく、見当識障害も認めない。
病名
関節リウマチ
既往歴と治療状況
既往歴として高血圧症があり、降圧剤を5年前から服用している。また、2年前に右膝変形性関節症と診断され、保存的治療を継続している。骨粗鬆症の診断もあり、カルシウム製剤の内服治療中である。
入院から現在までの情報
A氏は発症から約3ヶ月前より両手指の朝のこわばりと関節痛を自覚していた。近医を受診し関節リウマチを疑われ、当院リウマチ内科を紹介受診した。外来での血液検査でリウマトイド因子陽性、抗CCP抗体陽性、CRP上昇を認め、関節リウマチと診断された。外来で薬物療法を開始したが、疼痛コントロール不良と関節症状の増悪傾向を認めたため、精査加療目的で11月12日に入院となった。入院後は安静と薬物調整が行われている。入院2日目からはメトトレキサートの投与が開始され、プレドニゾロンの投与量も調整された。入院3日目からはリハビリテーション科による評価と関節可動域訓練が開始されている。現在は疼痛コントロールの効果判定と薬物療法の継続中である。
バイタルサイン
来院時のバイタルサインは、体温37.2℃、脈拍76回/分、血圧132/82mmHg、呼吸数18回/分、SpO2 98%(室内気)であった。朝の手指関節の疼痛が強く、疼痛スケールでは安静時NRS 5/10、動作時NRS 7/10であった。
現在のバイタルサインは、体温36.8℃、脈拍72回/分、血圧128/78mmHg、呼吸数16回/分、SpO2 99%(室内気)と安定している。疼痛は薬物療法により軽減傾向にあり、安静時NRS 2/10、動作時NRS 5/10となっている。特に朝のこわばりについては時間が短縮しており、30分程度で改善するようになってきている。
食事と嚥下状態
入院前の食事は自宅で夫と共に和食中心の食事を摂取していた。嚥下状態は良好で、食事摂取に問題はなかった。喫煙歴はなく、飲酒は月に1〜2回、夫と共に晩酌をする程度であった。関節症状が悪化してからは、食事の準備に時間がかかるようになり、夫の協力を得るようになっていた。
現在の食事は病院食で常食を摂取しており、食欲は良好で摂取量は8割程度である。朝食時は手指の朝のこわばりにより箸の使用が困難な場合があるが、スプーンを使用して自力摂取できている。
排泄
入院前の排泄は自立しており、特に問題なく排尿・排便を行っていた。排便は1日1回、普通便であった。現在も自力でトイレまで歩行し排泄を行っている。排尿回数は日中5〜6回、夜間1回程度である。
排便は入院後やや不規則となり、2日に1回程度となっている。便の性状は普通便であるが、やや硬めである。下剤は使用していないが、水分摂取を促している。
睡眠
入院前の睡眠は良好で、22時就寝、6時起床の規則正しい生活を送っていた。しかし、関節痛が強くなってからは、夜間痛で中途覚醒することが増えていた。
現在は入院環境への適応と夜間の関節痛により入眠困難を訴えており、眠前に頓用でゾルピデム5mgを服用している。服用後は比較的良眠できているが、早朝4時頃に関節痛で目覚めることがある。日中の傾眠はみられない。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は軽度の老眼があり、新聞や書類を読む際には老眼鏡を使用している。遠方視力は問題なく、日常生活に支障はない。聴力は正常で、普通の会話音量での意思疎通に問題はない。知覚は関節部位の痛みと朝のこわばり以外に異常はなく、温度覚・触覚・圧覚ともに正常である。コミュニケーションは良好で、質問に対して適切に応答できており、自分の症状や不安についても明確に表現することができる。穏やかな口調で話し、医療者との関係も良好に保たれている。特定の宗教的信仰はないが、「人として正しく生きる」ことを大切にしている。
動作状況
入院前は自宅内での動作は自立していたが、関節痛により動作時間がやや延長していた。現在の歩行は関節痛のため緩慢であるが、病棟内は独歩で移動可能である。手すりがあれば階段の昇降も可能であるが、膝関節痛のため降りる際に特に痛みを訴える。移乗動作はベッドから椅子、トイレへの移動などは問題なく行えている。ただし、朝方は特に関節のこわばりがあるため、起き上がりや立ち上がりに時間を要する。排尿・排便は自立しており、トイレまでの移動、衣服の上げ下げ、後始末まで自分で行えている。ただし、ボタンの着脱など細かい動作に時間がかかることがある。入浴は看護師見守りのもとシャワー浴を実施している。浴室内での移動は自立しているが、洗体時に手指関節の痛みを訴えることがある。衣類の着脱は特に上着のボタンやファスナーの操作、靴下の着脱に時間がかかるが自力で行っている。転倒歴はこれまでにない。
内服中の薬
内服中の薬:
・メトトレキサート 8mg 週1回 朝食後
・プレドニゾロン 5mg 1日1回 朝食後
・アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後
・ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後
・葉酸 5mg 週1回 メトトレキサート服用翌日
・エルデカルシトール 0.75μg 1日1回 朝食後
・ロキソプロフェン 60mg 頓用 疼痛時
・ゾルピデム 5mg 頓用 不眠時
服薬状況は現在看護師管理となっている。患者自身も薬の内容を理解しているが、メトトレキサートの服用日や葉酸との服用タイミングの確認のため、看護師が配薬し内服確認を行っている。退院に向けて自己管理への移行を検討中である。
検査データ
検査データ
検査項目 | 基準値 | 入院時(11月12日) | 最近(11月14日) |
---|---|---|---|
血液学検査 | |||
WBC | 3,500-9,000/μL | 9,200/μL | 8,800/μL |
RBC | 380-500万/μL | 398万/μL | 402万/μL |
Hb | 12.0-16.0g/dL | 11.2g/dL | 11.4g/dL |
Ht | 36.0-48.0% | 33.8% | 34.2% |
Plt | 15.0-35.0万/μL | 31.5万/μL | 29.8万/μL |
生化学検査 | |||
AST | 10-40U/L | 28U/L | 26U/L |
ALT | 5-45U/L | 24U/L | 22U/L |
ALP | 104-338U/L | 242U/L | 238U/L |
γ-GTP | 0-48U/L | 32U/L | 30U/L |
T-Bil | 0.2-1.2mg/dL | 0.6mg/dL | 0.5mg/dL |
TP | 6.5-8.3g/dL | 6.8g/dL | 6.9g/dL |
Alb | 3.8-5.3g/dL | 3.4g/dL | 3.5g/dL |
BUN | 8-20mg/dL | 15mg/dL | 14mg/dL |
Cr | 0.40-1.10mg/dL | 0.68mg/dL | 0.65mg/dL |
UA | 2.5-7.0mg/dL | 4.5mg/dL | 4.2mg/dL |
Na | 135-147mEq/L | 140mEq/L | 141mEq/L |
K | 3.5-5.0mEq/L | 4.2mEq/L | 4.3mEq/L |
Cl | 98-108mEq/L | 103mEq/L | 104mEq/L |
CRP | 0-0.30mg/dL | 4.2mg/dL | 3.8mg/dL |
免疫学検査 | |||
リウマトイド因子(RF) | 0-15IU/mL | 87IU/mL | 82IU/mL |
抗CCP抗体 | 0-4.5U/mL | 150U/mL | 148U/mL |
抗核抗体(ANA) | 40倍未満 | 40倍 | 検査なし |
MMP-3 | 17.3-59.7ng/mL | 162ng/mL | 158ng/mL |
血沈(ESR) | 3-15mm/h | 48mm/h | 42mm/h |
今後の治療方針と医師の指示
今後の治療方針と医師の指示は、疼痛コントロールの強化と関節機能の維持・改善を目標としている。メトトレキサートの用量を現在の8mgから10mgへ増量予定であり、効果判定と肝機能評価のための血液検査を週1回実施することになっている。また、ステロイド製剤(プレドニゾロン)は現在の5mgを継続し、疼痛が軽減してきた段階で徐々に減量していく予定である。疼痛時のロキソプロフェンの使用は必要に応じて継続し、NSAIDsによる胃粘膜保護のためランソプラゾールの内服も継続する。リハビリテーションについては、理学療法士による関節可動域訓練とストレッチ指導が開始されており、週3回の個別リハビリテーションが予定されている。また、日常生活でのリウマチ体操の自主トレーニングも指導されている。今後1週間程度で症状の評価を行い、疼痛コントロールが良好で薬物療法が安定すれば退院を検討する。退院後は2週間ごとの外来通院を予定しており、症状や検査値に応じて薬剤調整を行っていく方針である。
本人と家族の想いと言動
本人の想いとしては「少しでも痛みが和らいでほしい」「自分のことは自分でできるようになりたい」と話している。特に朝の手指のこわばりに対する不安が強く、「このまま悪化して家事や趣味の編み物ができなくなるのではないか」という不安を訴えている。また、「病気のことをもっと知りたい」「退院後も薬をずっと飲み続けなければならないのか」という疑問も持っており、医療者に積極的に質問している。「病気と上手く付き合っていきたい」という前向きな発言もみられるが、「初めての入院で不安」とも話している。
家族(夫)は「妻の痛みを何とかしてあげたい」「自分にできるサポートは何でもしたい」と話しており、面会時には積極的に医療者とコミュニケーションを取っている。退院後の生活について「家事は自分も分担する」「必要なら手すりをつけるなど家の改修も考えている」と具体的な支援の意向を示している。また「薬の管理は二人で確認しながらやっていきたい」と退院後の服薬管理についても関心を持っている。夫婦の関係は良好で、互いを思いやる言動が多く見られている。
【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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