【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 2.適切に飲食する

ヘンダーソン

事例の要約

これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。

2.適切に飲食する

A氏は65歳の女性で、関節リウマチのため入院中である。入院前の食事は自宅で夫と共に和食中心の食事を摂取していた。現在の食事は病院食で常食を摂取しており、食欲は良好で摂取量は8割程度である。水分摂取量についての具体的な記載はないが、排便が2日に1回程度とやや不規則になっていることから水分摂取を促していることが記録されている。食事に関しては朝食時に手指の朝のこわばりにより箸の使用が困難な場合があるものの、スプーンを使用して自力摂取できている状況である。関節リウマチによる手指の機能障害が食事摂取方法に影響を与えているが、患者自身が代替手段を用いて対応できている。食事や水分の1日の具体的な摂取量については更なる情報収集が必要である。

食事に関するアレルギーについては明確な記載がない。しかし、薬剤アレルギーとしてペニシリン系抗生物質でじんましんの既往があることから、食物アレルギーの有無についても確認が必要である。特に高齢者では加齢に伴い新たなアレルギーが発症することもあるため、詳細な問診が重要である。

A氏の身長は155cm、体重は48kgであり、これらからBMIを計算すると19.98kg/m²となる。この値は日本肥満学会の基準では「普通体重」の範囲内(18.5~25.0kg/m²未満)である。しかし、高齢女性としては標準的な体重よりもやや低めであり、関節リウマチによる慢性炎症の影響で体重減少が生じる可能性も考慮する必要がある。A氏の基礎代謝量(BMR)は、ハリス・ベネディクト式を用いると約1,150kcal/日と推定される。身体活動レベル(PAL)については、入院中であり関節痛により動作が制限されていることから「低い(1.3程度)」と予測され、1日の推定エネルギー必要量は約1,500kcal前後と考えられる。タンパク質必要量は高齢者であることと関節リウマチによる炎症状態を考慮すると、通常より多めの体重1kgあたり1.2~1.5g(約58~72g/日)が望ましいと予測される。関節リウマチの活動性が高い時期は代謝が亢進しているため、通常の高齢者より多めのエネルギーとタンパク質摂取が必要である。高齢者の基礎代謝量は加齢により低下する傾向にあるが、関節リウマチによる炎症反応の亢進は代謝を増加させる可能性があるため、個別的な評価が重要である。また、入院による活動制限も考慮し、適切な栄養評価を行う必要がある。

食欲は良好と記載されており、嚥下機能も良好で食事摂取に問題はないとされている。口腔内の状態に関する具体的な記載はないため、口腔内の乾燥や潰瘍、義歯の適合状態などの評価が必要である。高齢者では唾液分泌の減少や義歯の使用による咀嚼機能の変化が生じやすいため、詳細な口腔内アセスメントが重要である。また、関節リウマチ治療で使用しているプレドニゾロンは口腔カンジダ症などの感染リスクを高める可能性があるため、口腔内の観察は特に重要である。

嘔吐や吐気に関する記載はないが、内服薬としてメトトレキサートを服用しており、この薬剤は消化器症状(吐気、嘔吐など)を副作用として引き起こす可能性がある。また、ロキソプロフェンも胃粘膜障害を引き起こす可能性があるため、これらの症状の有無についての継続的な観察が必要である。ランソプラゾールを内服しているが、これは胃粘膜保護のためと考えられる。

血液データについては、入院時(11月12日)の検査値では、総タンパク(TP)6.8g/dL(基準値6.5-8.3g/dL)と基準範囲内であるが、アルブミン(Alb)は3.4g/dL(基準値3.8-5.3g/dL)とやや低値を示している。最近(11月14日)の検査では若干の改善が見られ、TP 6.9g/dL、Alb 3.5g/dLとなっている。ヘモグロビン(Hb)は入院時11.2g/dL、最近11.4g/dLと軽度の貧血が認められる。中性脂肪(TG)についてのデータは提供されていない。アルブミンとヘモグロビンの軽度低下は、関節リウマチに伴う慢性炎症状態を反映している可能性がある。慢性炎症では負の急性相反応物質であるアルブミンが低下することが知られており、また、炎症性貧血が生じることもある。栄養状態の観点からも、アルブミン低値は栄養不良のリスク因子として注目すべき点である。

A氏の栄養状態に影響を与える要因として、内服薬の影響も考慮する必要がある。メトトレキサートは葉酸代謝を阻害するため、葉酸欠乏による貧血を引き起こす可能性がある。そのため、葉酸の補充療法が行われているが、葉酸の効果については継続的なモニタリングが必要である。また、プレドニゾロンの長期使用は蛋白異化作用を促進し、筋肉量減少や栄養状態の悪化をもたらす可能性がある。

A氏の食事摂取に影響を与える因子として、関節リウマチによる関節症状が挙げられる。特に朝の手指のこわばりは食事動作に支障をきたす可能性があるが、現時点ではスプーンの使用で対応できている。しかし、疼痛コントロールがうまくいかない場合や関節症状が進行した場合には、食事摂取方法の再評価が必要となる。A氏は「自分のことは自分でできるようになりたい」「このまま悪化して家事や趣味の編み物ができなくなるのではないか」という不安を訴えており、これらの心理的要因も食欲や食事摂取量に影響を与える可能性があるため、精神的サポートも重要である。

看護介入としては、定期的な体重測定と食事摂取量の記録、水分摂取量の確認と必要に応じた水分摂取の促し、朝食時の手指のこわばりに対応した食事環境の調整(自助具の検討など)、口腔内の定期的な観察と口腔ケアの指導、内服薬による消化器症状の観察と対応、栄養状態の定期的な評価(血液検査など)が考えられる。また、退院に向けて自宅での食事準備や摂取方法について夫も含めた指導が必要である。

A氏の「適切に飲食する」というニーズは部分的に充足していると考えられる。食欲は良好で摂取量も8割程度あり、嚥下機能に問題はなく、スプーンを使用するなどの代替手段で自力摂取ができている。しかし、アルブミンやヘモグロビンの軽度低下が認められ、栄養状態に関する潜在的なリスクがある。また、関節リウマチの進行や治療薬の副作用による栄養状態への影響も考慮する必要がある。水分摂取量や口腔内状態、詳細な栄養評価に関する情報が不足しており、これらの情報収集と継続的な観察・評価が必要である。総合的には、現時点でのニーズは概ね充足しているが、今後の疾患進行や治療経過に伴うリスクを考慮した継続的なアセスメントと予防的な看護介入が重要である。

看護問題の明確化

#関節リウマチの慢性炎症状態とメトトレキサート治療に関連した低アルブミン・貧血リスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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