【ヘンダーソン】アルツハイマー型認知症 入院7日目(0007)| 6.適切な衣類を選び、着脱する

ヘンダーソン

事例の要約

アルツハイマー型認知症と診断され5年が経過した83歳女性が、自宅で転倒し入院となった事例である。30年間小学校教諭として勤務していた患者は、夫の他界後に認知症症状が急速に進行し、長男夫婦との同居を機に医療機関を受診していた。入院後は環境の変化により見当識障害が悪化し、教師時代の記憶と現実が混在した発言が増加。さらに誤嚥性肺炎を合併し、食事摂取量が著しく低下している。長男の妻が献身的にケアを続けているものの、介護負担が限界に近づいており、今後の療養方針の検討が必要な状況である。20XX年1月15日入院、介入7日目の事例である。

6.適切な衣類を選び、着脱する

A氏の更衣に関する生活動作について、入院前は自立していたものの、着る順番を間違えることがあり見守りを要する状態であった。認知機能低下の進行により、認知症重症度評価(HDS-R)は3年前の22点から直近では12点まで低下しており、更衣に関する判断力や実行機能にも影響が出ている。現在は誤嚥性肺炎の治療のため、ベッド上での安静が必要な状態となっており、更衣動作の自立度が著しく低下している。

運動機能については、パーキンソニズムによる動作の緩慢さと筋強剛がみられており、加齢による筋力低下も加わって、円滑な更衣動作の遂行に影響を及ぼしている。明確な麻痺の記載はないものの、全身の動作が緩慢である。活動意欲については、環境の変化により見当識障害が増悪しており、「ここは学校?」「授業の準備をしないと」などの発言が示すように、現状認識が十分でない状態である。

医療機器類について、セフトリアキソン注射用1gを1日2回点滴静注で投与中であり、酸素を経鼻カニューレで2L/分投与している。これらの点滴ラインや酸素チューブの存在が、更衣動作の制限因子となっている。更衣時には、これらの医療機器類の取り扱いに十分な注意が必要である。

身体状態として、37.8℃の発熱が持続しており、呼吸数24回/分、酸素飽和度93%と呼吸状態も不安定である。両側下肺野で湿性ラ音を聴取しており、体動時の呼吸状態の変化に注意が必要である。吐気に関する明確な情報は得られていないが、誤嚥性肺炎の存在から、体動時の症状出現に注意が必要である。また、発熱や呼吸状態の悪化により、全身の倦怠感が強い状態と考えられる。

必要な看護介入として、以下の対応が重要である。更衣時は必ず複数の看護師で対応し、点滴ラインや酸素チューブの管理に留意する。体動による呼吸状態の悪化を防ぐため、動作はゆっくりと行い、必要に応じて休憩を取り入れる。認知機能低下に配慮し、簡単な声かけと指示を心がける。発熱による発汗がある場合は、適宜寝衣交換を行い、清潔保持に努める。

継続的な観察が必要な項目として、更衣時の呼吸状態の変化、バイタルサインの変化、疲労の程度、発汗の状態、点滴刺入部の状態などが挙げられる。また、認知機能の状態や更衣に対する理解度についても注意深く観察を続ける必要がある。

以上のアセスメントから、A氏の衣類の選択と着脱に関するニーズは充足されていない状態にあると判断される。その理由として、誤嚥性肺炎による活動制限、認知機能低下による判断力の低下、パーキンソニズムによる動作の緩慢さ、医療機器類による制限が挙げられる。これらの問題に対する看護介入と継続的な観察が必要である。

看護問題の明確化

#認知機能低下とパーキンソニズムに関連したセルフケア不足

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この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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