【ヘンダーソン】脳梗塞 左片麻痺(0003)| 3.あらゆる排泄経路から排泄する

ヘンダーソン

事例の要約

85歳の男性A氏は、突然の左半身麻痺と言語障害により発症から2時間以内にrt-PA療法を実施し、その後リハビリテーションを行っている右中大脳動脈領域の脳梗塞の事例。介入は入院7日目である。

3.あらゆる排泄経路から排泄する

A氏の排泄状況について、入院前はトイレまで自力歩行し排泄は自立していたが、脳梗塞による左半身麻痺の影響により、現在はポータブルトイレを使用し移乗時には介助を要する状態である。排尿は日中6-7回、夜間2-3回程度であり、高齢による膀胱容量の低下と脳梗塞による排尿調節機能の低下が夜間頻尿の原因の可能性がある。排便については1日1回の規則的なパターンを維持できており、下剤の使用は現在のところ必要としていない。

腎機能を示す血液データでは、入院時の血中尿素窒素(BUN)が25mg/dL、クレアチニン(Cr)が1.2mg/dLと軽度上昇していたが、入院7日目には血中尿素窒素22mg/dL、クレアチニン1.0mg/dLと改善傾向にある。これは脱水傾向の改善を反映していると考えられるが、85歳という年齢による腎機能の生理的低下も考慮する必要がある。

A氏の水分出納に関して、1日の必要水分量は体重から算出すると約1,740ml(体重58kg×30ml/kg)である。現在の具体的な水分摂取量の記録がないため、まずは食事と飲水からの1日の水分摂取量を正確に評価する必要がある。食事摂取量は7-8割程度を維持できているものの、嚥下機能低下によりとろみ剤を使用する必要があり、十分な水分摂取が確保できているか懸念される。また、基礎疾患として糖尿病があり、血糖値は入院時165mg/dLから132mg/dLへと改善しているが、高血糖による浸透圧利尿の可能性も考慮する必要がある。

排泄動作については、左半身麻痺により下衣の上げ下ろしに介助を要する状態である。また、夜間の頻尿による移動時には転倒のリスクが高まる。さらに、夜間の排泄介助時の覚醒により、睡眠が中断されやすい状況にある。

必要な看護介入として、まず排泄動作の自立度を向上させるための介入が重要である。理学療法士と連携しながら、移乗動作の訓練を継続する。また、夜間の排尿を減少させるため、就寝前の水分摂取を調整する必要がある。排泄物の性状、量、回数の記録を継続し、脱水や便秘の早期発見に努める。ポータブルトイレの位置や環境整備により、安全な排泄動作を確保する。

追加で収集が必要な情報として、腸蠕動音の性状と頻度、腹部の張り具合、排尿時の残尿感の有無、尿意・便意の明確さ、発汗の状況、より詳細な水分出納バランスなどが挙げられる。また、糸球体濾過量(GFR)の評価も腎機能の正確な把握に必要である。

自立度向上に向けて、作業療法士と連携しながら、着衣動作の訓練や自助具の検討を行う必要がある。また、定期的な排尿誘導により、排泄パターンの確立を図ることも重要である。

ニーズの充足状況としては、規則的な排便パターンは維持できているものの、排尿における自立度の低下や夜間頻尿による睡眠への影響、水分バランスの管理など、複数の課題が残されている。そのため、排泄に関するニーズは部分的な充足に留まっていると判断される。継続的な観察と段階的な自立支援が必要な状態である。

看護問題の明確化

# 脳梗塞に伴う左半身麻痺に関連した排泄行動のセルフケア不足

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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