本事例の要約
85歳の男性A氏は、突然の左半身麻痺と言語障害により発症から2時間以内にrt-PA療法を実施し、その後リハビリテーションを行っている右中大脳動脈領域の脳梗塞の事例。介入は入院7日目である。
6.適切な衣類を選び、着脱する
A氏は右中大脳動脈領域の脳梗塞により左半身麻痺を呈しており、日常生活動作に著しい制限が生じている。特に更衣動作において、左上肢のブルンストロームテストⅢ、左手指Ⅲという状態は、衣服の着脱に大きな影響を与えている。上衣は前開きのものを使用し、麻痺側から着て健側から脱ぐよう指導しているが、ボタンの掛け外しには介助を要する状態である。下衣の着脱については、左半身麻痺と体幹バランスの低下により全介助を必要としている。
認知機能についてはMMSE 26点、HDS-R 25点と軽度の低下が認められるものの、更衣に関する指示理解は良好である。また、リハビリテーションに対する意欲は高く、日中は1日1~2単位の個別リハビリテーションを実施している。しかし、夜間の不眠により日中の疲労感が強く、これが更衣動作の遂行に影響を与える可能性がある。
バイタルサインは、入院7日目の時点で血圧142/82mmHg、脈拍72回/分、体温36.7℃と安定している。しかし、85歳という高齢による筋力低下や関節可動域の制限も、更衣動作の自立を妨げる要因となっている。特に肩関節の柔軟性低下や手指の巧緻性低下は、衣服の着脱やボタン操作の困難さを増加させている。
必要な看護介入として、まず更衣動作の自立度を向上させるための段階的な介入が重要である。作業療法士と連携しながら、更衣動作の訓練を継続する。また、衣類の選択において、着脱しやすい前開きの衣服や、マジックテープ式の留め具を使用するなどの工夫も必要である。さらに、疲労度に応じて介助量を調整し、過度な負担を避けることも重要である。
追加で収集が必要な情報として、更衣に関する本人の希望や好み、自宅での更衣習慣、各関節の可動域制限の具体的な程度、更衣動作時の疲労度や痛みの有無などが挙げられる。また、退院後の生活を見据えた衣類の選択や更衣方法の検討も必要である。
ニーズの充足状況としては、上衣の着脱は一部介助で可能であるものの、下衣の着脱は全介助を要する状態が続いており、更衣に関するニーズは充足されていない状態である。また、高齢による身体機能の低下も加わり、自立した更衣動作の実現にはさらなる訓練と環境調整が必要な状況である。継続的な観察とリハビリテーション、適切な介助の提供が必要である。
看護問題の明確化
# 脳梗塞に伴う左半身麻痺に関連した行為のセルフケア不足
事例の目次
【ヘンダーソン】脳梗塞 左片麻痺(0003)| 今回の内容
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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