本事例の要約
85歳の男性A氏は、突然の左半身麻痺と言語障害により発症から2時間以内にrt-PA療法を実施し、その後リハビリテーションを行っている右中大脳動脈領域の脳梗塞の事例。介入は入院7日目である。
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
発症前のA氏は入浴を含む清潔行為は自立していたが、現在は左半身麻痺により介助を要する状態である。入院後は週3回のシャワー浴を看護師2名で実施しており、バランス機能の低下により転倒リスクが高い状態である。特に左上肢の表在感覚と深部感覚の低下が顕著であり、湯温の知覚が困難な可能性があるため、看護師による湯温の確認と皮膚の観察が必要である。また、85歳という高齢であることから、皮膚の脆弱性や乾燥傾向にも注意が必要である。
更衣に関しては、上衣は前開きのものを使用し、麻痺側から着用し健側から脱ぐ方法を指導しているが、ボタンの掛け外しには介助を要する。下衣の着脱は全介助を必要としている。これは左半身麻痺(ブルンストロームテスト:上肢Ⅲ、手指Ⅲ)による運動機能と巧緻性の低下が主な要因である。
口腔内の状態については、嚥下機能の低下(嚥下機能検査:3点)が認められており、誤嚥性肺炎のリスクが高い。とろみ食を摂取していることから、食後の口腔内残渣の有無の確認と、適切な口腔ケアの実施が重要である。高齢者は唾液分泌量の低下により口腔内乾燥をきたしやすく、誤嚥性肺炎のリスクが更に高まるため、定期的な口腔内の保湿ケアも必要である。
排泄に関しては、ポータブルトイレを使用しており、移乗時には介助を要する。排尿は日中6-7回、夜間2-3回で、排便は1日1回の規則的なパターンを維持している。現時点で失禁は見られていないが、夜間頻尿があり、移動時の転倒リスクが高いため、夜間のポータブルトイレへの移乗には特に注意が必要である。また、トイレ動作時の下衣の上げ下ろしにも介助を要する状態である。
爪と鼻腔の保清状態については、具体的な情報が不足しているため、追加の情報収集が必要である。特に、左半身麻痺により、右手での爪切りや鼻腔ケアの実施状況、介助の必要性について確認が必要である。
必要な看護介入として、まず安全な入浴介助の継続と、皮膚の観察、保湿ケアが挙げられる。また、麻痺側上肢の関節可動域制限予防のためのリハビリテーションと並行して、更衣動作の自立度向上に向けた練習も重要である。口腔ケアは誤嚥性肺炎予防の観点から、確実な実施と評価が必要である。排泄に関しては、夜間のポータブルトイレ移乗時の安全確保と、必要に応じて尿器の使用も検討する。
退院後の生活を見据え、妻や家族への介助方法の指導も重要である。特に入浴介助や更衣介助については、家族の介護負担も考慮しながら、自宅の環境に合わせた方法を検討し、指導していく必要がある。
以上のことから、現在の清潔ニーズは看護師による介入により最低限は充足されているものの、自立度の低下により介助を要する状態が続いており、完全な充足には至っていない。特に、夜間の排泄や更衣動作における自立度の向上、及び安全確保が課題である。また、退院後の清潔ケアの継続に向けて、家族への指導と環境調整が必要な状況である。
看護問題の明確化
# 脳梗塞に伴う左半身麻痺による運動機能低下に関連した清潔セルフケア不足
事例の目次
【ヘンダーソン】脳梗塞 左片麻痺(0003)| 今回の内容
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK
コメント