【ヘンダーソン】脳梗塞 左片麻痺(0003)| 9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

ヘンダーソン

事例の要約

85歳の男性A氏は、突然の左半身麻痺と言語障害により発症から2時間以内にrt-PA療法を実施し、その後リハビリテーションを行っている右中大脳動脈領域の脳梗塞の事例。介入は入院7日目である。

9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

A氏は左半身麻痺により移動能力が低下しており、環境における危険因子への対応が必要な状態である。現在の認知機能は軽度低下(長谷川式認知症スケール25点、ミニメンタルステート検査26点)を認め、特に見当識と記憶の項目で低下が見られる。また、環境の変化による不眠や夜間の不穏も時折見られており、高齢であることも考慮すると、せん妄のリスク要因となっている。

病棟内での転倒予防対策として、ベッド柵3点を使用し、ナースコールの適切な使用を促している。ポータブルトイレへの移乗時には介助を要し、特に夜間は覚醒後の意識レベルや見当識が不安定になりやすいため、転倒リスクが高まる。左半身の感覚障害により危険認知が低下している可能性があり、特に左上肢の表在感覚と深部感覚の低下が顕著である。

感染予防に関して、入院時の血液データでは白血球数9,800/μL、c反応性迋白2.8mg/dLと炎症反応の上昇を認めていたが、入院7日目には白血球数7,200/μL、c反応性迋白0.8mg/dLと改善傾向にある。しかし、嚥下機能の低下があり、誤嚥性肺炎のリスクが存在する。また、85歳という高齢であることから、免疫機能の低下も考慮する必要がある。

皮膚損傷に関する直接的な記載はないが、左半身麻痺による活動制限と感覚障害があることから、特に麻痺側の褥瘡発生リスクについて注意深い観察が必要である。また、移乗時の擦過傷や転倒による外傷のリスクも存在する。

自宅環境については、3世代同居であり、家族の支援体制は整っているものの、具体的な住環境の情報(段差、手すりの有無、廊下幅、浴室の構造など)が不足している。退院に向けて、ケアマネージャーと連携しながら住環境の評価と必要な改修の検討が必要である。

必要な看護介入として、まず病棟内での安全確保が重要である。具体的には、移乗時の見守りと介助、夜間の排泄介助時の安全確保、せん妄予防のための日中の活動性維持と夜間の睡眠環境の調整が挙げられる。また、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアの実施と嚥下機能訓練の継続も重要である。

退院後の生活を見据え、家族への介助方法の指導と住環境の調整が必要である。特に、移動経路の確保、手すりの設置位置、ポータブルトイレの配置など、具体的な環境整備について、理学療法士や作業療法士と連携しながら検討していく必要がある。また、介護保険サービスの利用調整も重要である。

継続的な観察が必要な項目として、認知機能の変化、夜間の不穏の有無、皮膚の状態、バイタルサインの変動が挙げられる。特に夜間帯は環境の変化による混乱が生じやすいため、注意深い観察が必要である。

以上のことから、現在の環境における安全のニーズは、病棟スタッフの介入により基本的な安全は確保されているものの、左半身麻痺による移動能力の低下、認知機能の軽度低下、夜間の不穏傾向があることから、継続的な観察と介入が必要な状態である。また、退院後の生活環境の整備に向けて、具体的な住環境の評価と調整が必要であり、現時点ではニーズの完全な充足には至っていないと判断される。

看護問題の明確化

# 脳梗塞に伴う左半身麻痺と認知機能低下に関連した転倒転落のリスク状態
# 脳梗塞に伴う嚥下機能低下と高齢に関連した誤嚥性肺炎のリスク状態
# 脳梗塞に関連した左半身麻痺による活動制限に関連した非統合性障害のリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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