【ヘンダーソン】慢性膵炎 入院2日目(0019)| 6.適切な衣類を選び、着脱する

ヘンダーソン

事例の要約

慢性膵炎の急性増悪で緊急入院となった65歳男性の事例。強い腹痛、背部痛、嘔吐を主訴に救急搬送され、入院となる。長年のアルコール多飲が原因と考えられる。入院後は絶食・補液管理となり、疼痛コントロールを実施している。介入日は6月15日(入院2日目)である。

6.適切な衣類を選び、着脱する

A氏は65歳の男性で、入院前は認知機能に問題なく、日常的に適切な衣服の選択と着脱が自立して行えていた。現在は慢性膵炎の急性増悪により入院中であり、上腹部から背部にかけての疼痛を有している。ADLに関しては、入院前は完全に自立していたが、現在は疼痛により一部制限がある状態である。特に上肢の挙上時に疼痛が増強するため、上着の着脱に一部介助を要している。麻痺はなく、運動機能自体は保たれているものの、疼痛による動作制限が認められる。

A氏は末梢静脈路が確保されており、補液が1日2000ml継続されている状況である。これにより、衣服の選択においては点滴ルートの管理が容易な衣類が必要となっている。また、体温は37.2℃とやや高めであるが、発汗過多は見られていない。吐気は入院後落ち着いているものの、軽度の吐き気が持続しており、この不快感も衣服の着脱に影響を与える可能性がある。さらに、NRSで評価される疼痛が安静時3〜4/10、体動時6〜7/10と変動しており、体を動かす際の痛みによる倦怠感が衣服の着脱意欲を低下させることが考えられる。

A氏は性格が几帳面で真面目であり、自分の身だしなみには通常気を配る傾向にあると推測される。しかし現在は、疼痛や入院による行動制限、点滴管理の必要性から、衣服の選択肢が限られた状態である。入院時は眼鏡を持参しており、視力に関しては左右とも矯正視力1.0であるため、衣服の識別や選択に視力の問題はない。

活動意欲については、「早く復帰しないと部下に迷惑がかかる」という言葉から、早期の回復と職場復帰への意欲が窺える。しかし、疼痛による活動制限と倦怠感から、現在の衣服の着脱に関する積極性は低下している可能性がある。

年齢的要素として、A氏は65歳であり、若年者と比較すると筋力や関節の柔軟性がやや低下している可能性がある。これに疼痛による動作制限が加わることで、衣服の着脱がより困難になっていることが考えられる。また、入院による環境変化での混乱はないものの、不慣れな病室環境での着替えに戸惑いがあるかもしれない。

看護介入としては、まず疼痛コントロールの徹底が重要である。ペンタゾシンの定期的な投与から疼痛時の頓用へと移行する際には、患者が痛みを我慢せずに訴えられるよう支援する必要がある。着替えの前には適切なタイミングでの鎮痛薬投与を検討することが望ましい。

次に、点滴ルートに配慮した衣類の選択と着用方法の工夫が必要である。前開きの衣類を選択するか、点滴側の袖を先に通すなど、疼痛を最小限に抑える着衣方法を指導し、必要に応じて介助を行う。特に上肢挙上時の疼痛増強に配慮して、動作時の負担を軽減する方法を患者と共に考えていくことが重要である。

また、A氏の自立心を尊重しながらも、必要な介助を適切に提供することで、自己効力感の維持を図ることが大切である。入院環境に合わせた衣類の調整(例えば、家族に楽に着脱できる衣類の持参を依頼するなど)も検討する。

さらに、回復過程における衣服の着脱能力の変化を継続的に観察し、徐々に自立度を高められるよう支援していく必要がある。疼痛の軽減に伴い、自分で衣服を選択し着脱する機会を増やし、入院前の自立した状態に戻れるよう援助することが望ましい。

A氏の妻が協力的であることから、家族と連携した支援体制を構築することも重要である。面会時に着替えの介助方法を妻に説明し、患者と家族が共に着脱方法を習得できるよう支援する。

今後の治療計画では、3〜4日後を目安に段階的な経口摂取の再開が予定されている。それに伴い、活動量の増加や疼痛の軽減が期待されるため、衣服の着脱に関する自立度も向上する可能性が高い。この変化を適切に評価し、必要な介入を調整していくことが必要である。

以上のアセスメントから、A氏の「適切な衣類を選び、着脱する」ニーズは現時点では部分的に充足されていない状態である。疼痛管理と適切な介助により、このニーズの充足を図る必要がある。また、回復過程に合わせた継続的な評価と介入の調整が重要である。

看護問題の明確化

#慢性膵炎の急性増悪に伴う疼痛に関連した衣服の着脱セルフケア困難

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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