【ヘンダーソン】慢性膵炎 入院2日目(0019)| 2.栄養-代謝

ヘンダーソン

事例の要約

慢性膵炎の急性増悪で緊急入院となった65歳男性の事例。強い腹痛、背部痛、嘔吐を主訴に救急搬送され、入院となる。長年のアルコール多飲が原因と考えられる。入院後は絶食・補液管理となり、疼痛コントロールを実施している。介入日は6月15日(入院2日目)である。

2.栄養-代謝

A氏は慢性膵炎の急性増悪により入院し、現在は膵臓の安静を図るため絶食管理となっている。入院前は1日3食摂取していたが、仕事の関係で朝食は軽めに済ませる習慣があった。食事内容の詳細は記載されていないが、脂質異常症と痛風の既往があることから、高脂肪・高プリン体食品の摂取が多かった可能性が推測される。また、日本酒を毎晩2〜3合、週末には4〜5合と大量のアルコール摂取習慣があり、特に入院1週間前からは仕事のストレスで飲酒量が増加していた点は、膵炎急性増悪の直接的な誘因となった可能性が高い。現在は末梢静脈からの補液で水分・電解質・カロリーを補給しているが、具体的な補液内容と投与カロリー量については情報がない。

食事に関するアレルギーについては特に記載がなく、情報収集が必要である。ただし薬剤アレルギーの既往はないことが確認されている。現在絶食中であるため、アレルギー情報の収集は今後の食事再開に備えて重要となる。

A氏は身長168cm、体重65kg、BMI 23.0と標準体型である。65歳男性としては平均的な体格を維持しており、入院前の食事摂取状況は比較的良好であったと考えられる。しかし、必要栄養量や身体活動レベルについての具体的な情報がなく、今後の栄養管理計画を立てるためにはこれらの評価が必要である。疾患状態や安静度を考慮した適切なエネルギー量の算定と、体重の定期的なモニタリングが重要となる。

食欲については、入院時の情報はないが、発症時の強い腹痛や嘔吐の経験から、現時点では食欲不振の状態にあると推測される。嚥下機能に問題はなく、普通食の摂取が可能である。口腔内の状態については、絶食に伴う口渇感が強く、口腔内の不快感を訴えているため、1日3回の口腔ケアを実施している状況である。口腔内乾燥は口腔内細菌の増殖リスクを高めるため、頻回な口腔ケアと少量の水分摂取の検討が必要である。ただし、具体的な口腔内の評価(粘膜の状態、歯の状態、舌苔の有無など)については記載がなく、詳細な評価が必要である。

嘔吐・吐気に関しては、発症時には嘔吐を繰り返していたが、入院後は落ち着いている。ただし、軽度の吐き気は持続しており、これは膵炎による消化管への影響や使用している鎮痛薬の副作用の可能性がある。吐き気の程度や時間的変動、誘因となる要素の評価を継続する必要がある。

血液データについては、総蛋白(TP)は入院時6.8g/dL、入院2日目6.7g/dLと基準値内(6.5-8.2g/dL)である。一方、アルブミン(Alb)は入院時3.4g/dL、入院2日目3.5g/dLと基準値(3.8-5.2g/dL)を下回っている。これは急性炎症による消費の亢進や、長期的な栄養状態の低下を示唆している可能性がある。ヘモグロビン(Hb)は入院時14.2g/dL、入院2日目13.8g/dLと基準値内(13.0-17.0g/dL)を維持している。中性脂肪(TG)は入院時210mg/dLと基準値(30-149mg/dL)を超えており、脂質異常症の状態が続いていることを示している。特にアルブミン値の低下と中性脂肪の上昇は、栄養状態のアンバランスを示唆しており、今後の栄養管理において重要な指標となる

看護介入として、まずは絶食管理を継続しながら、医師の指示に基づく適切な補液管理が重要である。口腔ケアについては、乾燥予防と不快感軽減のために頻度を増やす、または保湿剤の使用を検討する。また、吐き気に対しては体位の工夫(上半身の挙上など)や、必要に応じて制吐剤の使用を医師と相談する。食事再開に向けては、膵炎の病態と脂質異常症、痛風を考慮した食事内容の計画が必要であり、栄養士との連携が重要となる。特に脂質と糖質の摂取量を調整した食事内容の指導と、アルコール摂取の制限についての厳格な指導が必要である。

さらに、退院後の食生活改善に向けて、A氏と妻に対する栄養教育も重要である。妻は「家庭での食事内容も見直したい」との意向を示しており、この意欲を活かした実践的な栄養指導が効果的である。食事記録の活用や具体的な献立例の提案など、日常生活に取り入れやすい形での指導を行うことが望ましい。

以上のアセスメントから、A氏の飲食に関するニーズは現時点では充足されていない状態にある。絶食管理により経口摂取ができないこと、補液による栄養補給が行われているものの詳細が不明であること、アルブミン値の低下が見られること、口腔内の不快感があること、軽度の吐き気が持続していることなどから、栄養状態の改善と食事再開に向けた段階的な介入が必要である。特に慢性膵炎という疾患背景を考慮すると、単に食事を再開するだけでなく、膵臓への負担を最小限にした食事内容の検討と、アルコール摂取に関する厳格な生活指導が不可欠である。この点において、A氏自身が「もう酒は控えなきゃいけないのかな」と自問自答している状況は、行動変容の好機であり、適切な教育的介入の時期と考えられる。

看護問題の明確化

#慢性膵炎の急性増悪に伴う絶食管理に関連した栄養摂取不足

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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