【ヘンダーソン】慢性膵炎 入院2日目(0019)| 3.あらゆる排泄経路から排泄する

ヘンダーソン

事例の要約

慢性膵炎の急性増悪で緊急入院となった65歳男性の事例。強い腹痛、背部痛、嘔吐を主訴に救急搬送され、入院となる。長年のアルコール多飲が原因と考えられる。入院後は絶食・補液管理となり、疼痛コントロールを実施している。介入日は6月15日(入院2日目)である。

3.あらゆる排泄経路から排泄する

A氏の排便状況については、入院前は1日1回の排便習慣があり、便秘傾向や下痢などの消化器症状はなく、下剤の使用歴もなかった。しかし現在は入院後排便がない状態が続いており、腹部膨満感を訴えている。この排便がない状態は入院2日目の情報であるため、絶対的な便秘とは言えないものの、複数の要因により便秘リスクが高まっていると考えられる。絶食状態による腸管内容物の減少、疼痛による腸管運動の抑制、安静による腸蠕動の低下、さらに膵炎自体が消化管機能に影響を与えている可能性がある。また、鎮痛薬として使用されているペンタゾシンも腸管運動を抑制する副作用がある。

排尿に関しては、入院前は1日7〜8回、夜間尿は1〜2回程度であった。現在は尿器での自力排尿が可能で、尿量は補液量に応じて1日1500〜2000ml程度あり、尿の色調は濃く、軽度脱水状態を反映している。疼痛のため腹圧をかけにくい状況にあるが、排尿行為自体に問題はない。尿の性状については色調以外の情報(混濁、血尿、沈殿物など)の記載がなく、評価が必要である。65歳男性であることから、前立腺肥大症の可能性も考慮し、残尿感や排尿時の違和感などについても確認する必要がある。

発汗については、入院時に冷汗を認めたと記録されているが、これは激しい疼痛による交感神経の亢進状態を反映していたと考えられる。その後の発汗状況に関する情報はない。入院2日目の体温は37.2℃とやや高値であり、微熱に伴う発汗の有無や寝衣・シーツの湿潤状態など、発汗に関する継続的な観察が必要である。また、アルコール依存に関する評価が行われている背景から、アルコール離脱症状としての発汗の可能性にも注意を払う必要がある。

輸液と排泄のバランス(in-outバランス)については、現在末梢静脈からの補液を1日2000ml継続しており、尿量は1日1500〜2000ml程度とされている。補液と尿量はほぼバランスが取れていると考えられるが、不感蒸泄や発熱による水分喪失も考慮する必要がある。また、入院時にはアミラーゼ値の上昇(1250 U/L)とCRP上昇(5.8 mg/dL)を認めており、炎症による代謝亢進状態にあることから、水分必要量が増加している可能性がある。入院時の所見として尿の色調が濃いことから脱水傾向が考えられ、補液による水分補給が十分かどうかの継続的な評価が必要である。

排泄に関連した食事や水分摂取状況については、現在A氏は絶食管理下にあり、口渇感が強く口腔内の不快感を訴えているが、医師の指示で水分摂取も制限されている。入院前の食事・水分摂取に関する詳細な情報はないが、仕事の関係で朝食は軽めに済ませることが多く、大量の飲酒習慣があった。このような不規則な食生活とアルコール摂取は腸管機能に影響を与え、膵炎の増悪因子となるだけでなく、腸内細菌叢のバランスを崩し、長期的には排便パターンにも影響を与える可能性がある。今後の食事再開に向けて、排泄機能を考慮した食事内容の検討も必要である。

麻痺の有無については、神経学的な麻痺はなく、認知機能も保たれている。しかし、疼痛による活動制限があり、特に腹部に力を入れる動作が制限されている状態である。これは排便時の腹圧をかける能力に影響を与え、排便困難を引き起こす可能性がある。移動に関しても、短距離のみゆっくり歩行可能で長距離は車椅子を使用している状況であり、この活動制限も排泄機能に影響を与える因子となる。

腹部膨満感と腸蠕動音については、A氏は腹部膨満感を訴えており、腸蠕動音はやや減弱している。これは絶食と安静、疼痛による腸管機能低下を示している。腹部膨満感は排便がないことに起因すると考えられるが、膵炎による腹部の炎症や腹水の有無についても評価が必要である。腸蠕動音の減弱は腸管麻痺のリスクを示唆しており、腸蠕動音の頻度や性状、腹部の張りや圧痛の程度について、より詳細な情報収集と継続的な観察が必要である。

血液データに関しては、入院時のBUN(尿素窒素)は18mg/dL(基準値8-20mg/dL)、Cre(クレアチニン)は0.8mg/dL(基準値0.6-1.2mg/dL)、eGFR(推算糸球体濾過量)は78mL/min/1.73m²(基準値≧60mL/min/1.73m²)と基準値内であった。入院2日目にはBUN 16mg/dL、Cre 0.7mg/dL、eGFR 80mL/min/1.73m²と、いずれも基準値内で安定している。これらのデータから、現時点では腎機能は保たれていると評価できる。しかし、65歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う腎機能の生理的低下が基礎にある可能性があり、脱水や薬剤による腎機能障害のリスクに注意する必要がある。

看護介入としては、まず排便状況の継続的なモニタリングが重要である。腹部膨満感の程度、腸蠕動音の変化、排ガスの有無などを定期的に評価し、便秘の悪化を防ぐための早期介入が必要である。医師と相談の上、緩下剤の使用や浣腸の実施を検討することも考慮される。また、活動制限がある中でも可能な範囲での早期離床を促し、ベッド上でも腹部マッサージや腹筋運動などの腸蠕動を促進する介入を行うことが望ましい。

排尿に関しては、尿量・性状の継続的な観察と記録を行い、脱水や腎機能障害の早期発見に努める。また、尿器での排尿時の姿勢や環境を整え、疼痛を最小限にする工夫も必要である。水分出納のバランスを注意深く観察し、必要に応じて補液速度や内容の調整を医師に提案することも重要である。

また、A氏の場合、仕事のストレスや飲酒習慣が健康問題の背景にあるため、退院後の生活習慣改善に向けた教育的介入も重要である。特にアルコール摂取と排泄機能の関連、適切な水分摂取と食物繊維摂取の重要性について、A氏と妻に対する指導が必要である。妻は「家庭での食事内容も見直したい」との意向を示しており、この意欲を活かした実践的な指導が効果的である。

以上のアセスメントから、A氏の排泄に関するニーズは現時点では一部充足されていない状態にある。排尿機能自体は保たれているものの、入院後排便がなく腹部膨満感を訴えていること、絶食による腸管機能低下のリスクがあること、疼痛による活動制限があることなどから、特に排便に関するニーズが充足されていない。腎機能は現時点では保たれているが、膵炎という炎症性疾患の存在、絶食・安静による腸管機能低下、アルコール摂取中止に伴う生理機能の変化など、複数の要因が排泄機能に影響を与える可能性があり、継続的な観察と適切な介入が必要である。特に、入院の長期化や合併症の発生によって排泄機能がさらに低下するリスクがあるため、予防的な看護介入が重要となる。

看護問題の明確化

#慢性膵炎の急性増悪に伴う安静・絶食および疼痛に関連した便秘

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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