【ヘンダーソン】慢性膵炎 入院2日目(0019)| 12.達成感をもたらすような仕事をする

ヘンダーソン

事例の要約

慢性膵炎の急性増悪で緊急入院となった65歳男性の事例。強い腹痛、背部痛、嘔吐を主訴に救急搬送され、入院となる。長年のアルコール多飲が原因と考えられる。入院後は絶食・補液管理となり、疼痛コントロールを実施している。介入日は6月15日(入院2日目)である。

12.達成感をもたらすような仕事をする

A氏は中小企業の経理部長として現役で働いており、職場での責任ある立場と役割を担っている。几帳面で真面目な性格特性は経理という正確さを要する業務に適しており、これまで長年にわたり社会的役割を果たしてきたと考えられる。しかし、現在は慢性膵炎の急性増悪により入院を余儀なくされ、3週間の休職届を提出した状況である。入院前は仕事のストレスが増大し、それに伴い飲酒量が増加していたことが確認されている。このことから、仕事によるストレスと不適切な対処行動(過度の飲酒)の悪循環が生じていたと考えられる。

A氏は「仕事のストレスを解消する唯一の方法が飲酒だった」と述べており、ストレス対処法が限定的であることが窺える。また「早く復帰しないと部下に迷惑がかかる」という発言からは、仕事への責任感の強さとともに、休職することへの焦りや不安を抱えていることが理解できる。このような心理状態は回復過程にマイナスの影響を与える可能性があり、注意深く観察する必要がある。

疾患が仕事や役割に与える影響としては、現在の慢性膵炎の急性増悪により、少なくとも3週間の休職を余儀なくされている点が大きい。経理部長という重要な職位にある人物の不在は、業務の停滞や他のスタッフへの負担増加を招く可能性がある。このことがA氏の焦りや不安、罪悪感を増大させ、回復への集中を妨げる恐れがある。また、長期的には膵炎の再発予防のためにアルコール摂取の厳格な制限が必要となるが、これまで飲酒がストレス解消の主要な手段であったA氏にとって、禁酒を維持しながら仕事のストレスに対処する新たな方法を見出す必要がある。

さらに、65歳という年齢を考慮すると、定年退職が近い時期にあるとも考えられる。重篤な健康問題を機に、今後の働き方や退職時期について再考を迫られる可能性もある。加齢に伴う体力低下と慢性疾患の管理という側面からも、これまでと同様の仕事量や責任を継続することの妥当性について検討が必要かもしれない。

A氏は経理部長という地位に就いていることから、知的能力や専門性において一定の社会的評価を得ていると推測される。しかし入院に伴い、一時的に職場での役割を果たせない状況にあり、社会的役割の喪失感や自己効力感の低下を経験している可能性がある。長男からの「父は仕事熱心で自分の体調を後回しにするところがある」という発言からも、A氏にとって仕事が自己価値の重要な源泉となっていることが窺える。

介入の方向性としては、まず現在の休職期間中に十分な休息と治療に専念できるよう支援することが重要である。A氏の仕事や責任に対する考え方を尊重しながらも、健康管理の重要性について理解を促す必要がある。具体的には、膵炎と飲酒の関連性、そして仕事のストレスに対する健康的な対処法についての教育が効果的と考える。

また、職場復帰に向けた段階的な計画を共に考えることで、不安の軽減を図ることができる。必要に応じて産業医との連携や職場環境の調整について提案し、A氏が無理なく職場に復帰できるよう支援することが望ましい。さらに、アルコールに代わるストレス解消法(例:軽い運動、趣味活動、リラクセーション技法など)を見つけるための支援も重要である。

家族の協力も不可欠であり、特に妻との連携を強化することで、退院後の生活習慣の改善をサポートする体制を整えることが必要である。妻は「夫の健康のためなら何でもします」と前向きな姿勢を示しており、この協力的な態度は貴重な資源である。

A氏の達成感をもたらす仕事をするというニーズについては、現時点では充足していないと判断される。入院により職場での役割を果たせないことでの喪失感があり、回復後も飲酒制限によるストレス対処法の変更が必要となる。しかし、適切な支援と介入により、健康と仕事のバランスを取りながら、達成感を得られる新たな働き方を構築できる可能性がある。A氏が自身の健康状態を理解し、適切な自己管理を行いながら職業生活を継続できるよう、多職種連携による包括的な支援が必要である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う休職に関連した役割遂行の変調

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この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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