本事例の要約
慢性膵炎の急性増悪で緊急入院となった65歳男性の事例。強い腹痛、背部痛、嘔吐を主訴に救急搬送され、入院となる。長年のアルコール多飲が原因と考えられる。入院後は絶食・補液管理となり、疼痛コントロールを実施している。介入日は6月15日(入院2日目)である。
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
A氏の趣味や休日の過ごし方、余暇活動に関する詳細な情報は限られているが、いくつかの重要な点が示唆されている。A氏は中小企業の経理部長として現役で働いており、仕事熱心な性格であることから、休日においても仕事関連の思考から完全に離れることが難しい可能性がある。また、「仕事のストレスから休日の飲酒量が多い傾向にある」という情報から、休日のレクリエーション活動として適切でない飲酒行動が主な気分転換となっていることが推測される。このような不健康な習慣は、A氏の慢性膵炎の原因となり、現在の急性増悪を引き起こした要因と考えられる。
A氏がアルコール以外にどのような余暇活動や趣味を持っているかについての具体的な情報は不足しているため、今後の看護計画立案のためにも、以前から行っていた趣味活動や興味のある分野について詳細に情報収集する必要がある。特に、入院前にアルコール以外で行っていた気分転換の方法や、若い頃に楽しんでいた活動などを把握することが重要である。これらの情報は、健康的な代替活動を提案する際の基盤となる。
入院中の気分転換方法については、A氏は眼鏡を持参しており、新聞や書類の閲覧が可能であることから、読書が一つの気分転換になっていると考えられる。しかし、腹痛や背部痛が持続していることから、集中力が途切れやすく、長時間の読書は困難かもしれない。また、入院環境に慣れていないことと疼痛により睡眠が断続的であるため、十分な休息を取れていないことが余暇活動への意欲や取り組みに影響を与えている可能性がある。
A氏の運動機能障害については、現在は腹痛・背部痛のため短距離のみゆっくり歩行可能で、長距離は車椅子を使用している状況である。急な体動で痛みが増強するため慎重に行動しており、上肢挙上時にも疼痛増強がある。これらの身体的制限は、入院中のレクリエーション活動の種類と範囲を制限していると考えられる。ただし、基本的な移乗動作は自立しており、疼痛が緩和されれば段階的に活動範囲を広げることが可能であると考える。
認知機能とADLについては、認知機能に問題はなく、意識清明で見当識も保たれていると記載されている。コミュニケーションは良好で、質問の理解や意思表示に問題はない。基本的なADL(着替え、排泄など)は疼痛による一部制限はあるものの、概ね自立している。これらの点から、認知機能やADLの制限によるレクリエーション活動への障壁は少ないと評価できる。しかし、A氏が65歳であることを考慮すると、加齢に伴う体力や視力の微細な変化があることも念頭に置く必要がある。
入院環境におけるレクリエーション活動の提供については、A氏の疼痛状態と活動制限を考慮した上で、短時間でできる静的な活動から始め、徐々に活動範囲を広げていくアプローチが適切である。例えば、読書、簡単なパズル、テレビ視聴などから始め、疼痛が改善するにつれて軽い手工芸や短距離の病棟内歩行など、より活動的なレクリエーションを導入することが考えられる。
また、A氏は妻との面会時に表情が和らぎリラックスした様子が見られることから、妻と共有できるレクリエーション活動(例:カードゲーム、将棋、会話など)を取り入れることも有効かもしれない。これにより、A氏の精神的な支えとなるだけでなく、退院後の余暇活動の選択肢を広げることにもつながる。
長期的な視点では、A氏がアルコールに代わる健康的なストレス解消法を見つけることが重要である。趣味や余暇活動を通じてストレス解消と自己実現を同時に達成できるような活動を模索し、それを日常生活に取り入れる支援が必要である。特に、A氏の年齢や身体状況、趣味趣向を考慮した上で、継続可能な活動を提案することが重要である。例えば、軽いウォーキング、ガーデニング、写真撮影、読書会参加など、身体的負担が少なく、社会的交流も得られる活動が望ましい。
A氏の「遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する」というニーズは、現時点では十分に充足されていないと判断される。主な理由としては、アルコールへの依存がレクリエーション活動の選択肢を狭め、現在の疾患状態による身体的制限があること、そして入院環境という制約が挙げられる。しかし、A氏には認知機能の問題がなく、基本的なADLも維持されていることから、適切な支援と働きかけにより、このニーズを充足させる可能性は高い。そのためには、A氏の興味・関心に基づいた個別的なレクリエーションプランの立案と実施、そして退院後も継続可能な健康的な余暇活動の開発が不可欠である。
看護問題の明確化
#疾患に伴う身体的制限に関連したレクリエーション活動の不足
事例の目次
【ヘンダーソン】慢性膵炎 入院2日目(0019)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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