本事例の要約
慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
入院前のA氏の趣味や余暇活動に関する具体的な情報は得られていないため、まず本人の興味・関心事項について詳細な情報収集が必要である。ただし、職歴から電気工事の技術や知識を持っていることが推測され、これらを活かした趣味活動の可能性を探ることができる。また、妻との二人暮らしで長男家族が近隣に住んでいるという家族環境は、退院後の余暇活動の支援体制として活用できる強みとなっている。
現在の身体状況としては、入院3日目で呼吸困難感は改善傾向にあり、1-2個の枕を使用して臥床可能となっている。しかし、両下肢の浮腫は残存しており、活動時の息切れに注意が必要な状態である。病棟内の歩行は見守りを要し、トイレまでの移動時には看護師の付き添いが必要である。この活動制限は、余暇活動やレクリエーションへの参加にも影響を与える要因となっている。
認知機能は正常で日常生活に支障をきたすような低下は認めていない。言語理解力、表現力ともに問題なく、医療者とのコミュニケーションも円滑である。これらの点は、レクリエーション活動の指導や実施にあたって良好な条件となっている。視力は老眼程度で老眼鏡使用により新聞読書が可能であり、聴力も正常である。このため、読書や会話を通じた気分転換活動の実施が可能である。
72歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う疲労のしやすさや活動耐容能の低下が予測される。そのため、レクリエーション活動の強度や時間配分には特に注意が必要である。また、心不全による活動制限と加齢による体力低下を考慮し、段階的な活動強度の調整が重要である。
現在の入院環境における気分転換方法としては、テレビ視聴や新聞読書など、臥床中でも実施可能な静的な活動から開始することが望ましい。また、「また症状が悪くなるのではないか」という不安を抱えていることから、気分転換活動を通じて精神的なストレス軽減を図ることも重要である。
今後の看護介入として、以下の取り組みが必要である。まず、本人の趣味や関心事項について詳細な情報収集を行い、入院中に実施可能な活動を検討する。次に、理学療法士と連携しながら、リハビリテーションの進捗に合わせて段階的に活動範囲を拡大していく。その際、心不全症状の観察を継続し、過度な負荷を避けるよう注意する。また、家族の面会時間を活用し、会話や交流の機会を確保することで、精神的な支援を行う。
退院後の余暇活動については、心不全手帳を用いた自己管理指導と併せて、適切な活動量や休息の取り方について具体的な指導を行う必要がある。地域包括支援センターとの連携により、地域のレクリエーション活動への参加機会についても情報提供を行うことが望ましい。
ニーズの充足状況としては、現時点では十分な充足が得られているとは言えない。その理由として、入院による活動制限があること、具体的な趣味活動や気分転換方法が確立されていないこと、また心不全症状への不安が活動意欲に影響を与えている可能性があることが挙げられる。しかし、身体症状の改善に伴い、段階的にニーズを充足させていく条件は整いつつある。継続的な観察と支援により、退院後の余暇活動の確立を目指す必要がある。
看護問題の明確化
#慢性心不全に伴う活動耐容能の低下に関連したレクリエーション活動の制限
事例の目次
【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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