本事例の要約
慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。
看護計画#1
看護問題
#疾患に伴う肺うっ血に関連した呼吸機能障害
長期目標
肺うっ血が改善し、日常生活動作時の呼吸困難感が消失する
短期目標
・肺うっ血の所見が改善し、湿性ラ音が減少する
・呼吸数が12-18回/分を維持し、SpO2が室内気で96%以上を保持できる
≪O-P≫観察計画
・呼吸数、呼吸パターン、呼吸の深さを1日4回以上確認する
・肺底部を中心とした湿性ラ音(捻髪音)の有無と程度を確認する
・両側の呼吸音の左右差と減弱の有無を確認する
・喘鳴(心臓喘息の所見)の有無を確認する
・SpO2値の経時的変化を確認する
・夜間の体位変換時における呼吸音の変化を確認する
・喀痰の性状、量、色調の変化を確認する
・体位変換や日常生活動作時の呼吸困難の程度を確認する
・労作時の息切れの程度を確認する
・胸部レントゲン所見(心胸郭比、肺うっ血像、胸水)の変化を確認する
・夜間の呼吸状態と体位保持の状況を確認する
・体重の日内変動を確認する
・下肢浮腫の程度と左右差を確認する
・活動時の疲労度とバイタルサインの変化を確認する
≪T-P≫援助計画
・ファーラー位(30-45度)を基本とし、呼吸が最も楽な体位を保持する
・夜間は1-2個の枕を使用し、適切な体位を保持する
・胸部聴診を1日2回以上実施し、肺音の変化を評価する
・体位変換時は呼吸状態を観察しながらゆっくりと実施する
・清潔ケアは呼吸状態を観察しながら、必要に応じて分割して実施する
・食事は呼吸を整えながらゆっくりと摂取できるよう支援する
・処方された利尿薬(フロセミド)を確実に投与する
・水分制限(1000mL/日)を確実に実施する
・塩分制限(6g/日)を確実に実施する
・必要時に酸素投与を実施する
・活動と休息のバランスを調整し、過度な呼吸負荷を避ける
・室内環境を整え、適切な温度・湿度を維持する
・日常生活動作は呼吸状態を観察しながら段階的に拡大する
・理学療法士と連携し、呼吸状態に応じたリハビリテーションを実施する
≪E-P≫教育・指導計画
・呼吸困難時の効果的な体位(ファーラー位など)について指導する
・腹式呼吸と口すぼめ呼吸の方法を指導する
・日常生活動作時の呼吸調整方法について指導する
・過度な体液貯留を防ぐための水分制限の必要性を説明する
・心不全増悪の早期症状(呼吸困難、起座呼吸、浮腫)とその対処方法を説明する
・心不全手帳を用いた自己管理(体重、症状観察)の方法を指導する
・就寝時の適切な体位保持と枕の使用方法を指導する
・活動と休息のバランスの取り方について指導する
看護計画#2
看護問題
#疾患に伴う代謝亢進に関連した栄養摂取量の不足
長期目標
・必要栄養量(1,751-2,243kcal/日)が確保でき、血清アルブミン値が3.5g/dL以上に改善する
・塩分制限食(6g/日)と水分制限(1000mL/日)を理解し、適切に摂取できる
短期目標
・必要タンパク質量(66-79g/日)を含む食事を8割以上摂取できる
・間食や過度な塩分摂取を控えることができる
≪O-P≫観察計画
・毎日の体重測定値と変化を確認する
・食事摂取量と水分摂取量を毎食確認する
・血清アルブミン値、総タンパク値の推移を確認する
・ヘモグロビン値と電解質バランスの変化を確認する
・消化管うっ血症状(食欲不振、腹部膨満感)の有無を確認する
・味覚の変化や唾液分泌の状態を確認する
・口腔内の状態と口腔衛生状態を確認する
・義歯の適合状態と使用状況を確認する
・食事中の呼吸状態と疲労度を確認する
・嘔気や嘔吐の有無を確認する
・排便状況(回数、性状、量)を確認する
・浮腫の程度と分布を確認する
・食事に対する意欲と満足度を確認する
・間食や塩分の多い食品への欲求を確認する
≪T-P≫援助計画
・毎食前の体重測定を実施する
・摂取カロリーと水分量を正確に記録する
・食事は疲労度に応じて分割して提供する
・心不全食(1,751-2,243kcal/日)の確実な提供を管理する
・必要タンパク質量(66-79g/日)の確保を栄養士と協議する
・食事中の呼吸困難を予防するため、30-45度の座位を保持する
・食前・食後の口腔ケアを実施する
・義歯の洗浄と管理を支援する
・消化管うっ血症状出現時は、食事時間や量を調整する
・食事環境を整え、ゆっくりと食べられる環境を提供する
・水分制限(1000mL/日)を確実に実施する
・塩分制限(6g/日)を確実に実施する
・間食を控える環境を整える
・食事摂取量が低下した場合は、原因を評価し対応する
≪E-P≫教育・指導計画
・必要栄養量と現在の摂取量について説明する
・心不全食の意義と具体的な食品選択方法を指導する
・水分制限の必要性と具体的な管理方法を指導する
・体重測定の重要性と体液貯留との関連を説明する
・妻に対して塩分制限食(6g/日)の調理方法を具体的に指導する
・間食や飲酒を控える必要性について説明する
・代替となる低塩分のおやつや食品を提案する
・食事と服薬のタイミングについて指導する
・退院後の食事管理方法について家族を含めて指導する
事例の目次
【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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