本事例の要約
慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。
3.あらゆる排泄経路から排泄する
A氏の排泄状況について、入院前は1日6-7回程度の排尿があり、便通は1日1回で規則的であった。入院後は利尿薬の使用により、尿量が2000-2500mL/日と増加しており、夜間も2-3回のトイレ歩行を必要としている。便通については入院後2日目にあり、性状は普通便である。下剤の使用は現在も入院前も必要としていない。発汗状況に関する情報は不足しており、評価が必要である。
体液バランスについて、入院時は1週間で5kgの体重増加を認め、明らかな体液貯留状態であった。現在の水分出納について、水分摂取は1000mL/日に制限されているのに対し、尿量は2000-2500mL/日と利尿が促進されており、体内の余剰水分の排出が進んでいることを示している。これは利尿薬による治療効果を反映している。入院3日目までに体重は2kg減少しており、体液貯留の改善を示している。ただし、両下肢の浮腫は残存しており、引き続き体液管理が必要な状態である。
排泄に関連した食事・水分摂取について、心不全食(塩分6g/日制限)が提供され、水分摂取は1000mL/日に制限されている。食事摂取量は7-8割程度を維持できており、水分制限も遵守できている。ただし、入院前は塩分の多い食品や間食の摂取があり、これらが体液貯留を助長していた可能性がある。
運動機能について、麻痺は認められず、排泄に関する基本動作は自立している。ただし、心不全による活動耐性の低下があり、トイレまでの移動時には看護師の見守りを要する状態である。72歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う筋力低下や平衡機能の低下が存在する可能性があり、夜間のトイレ移動時の転倒リスクに注意が必要である。
腹部症状について、腹部膨満や腸蠕動音に関する情報が不足している。心不全による腹部うっ血は消化管機能に影響を与える可能性があるため、これらの評価が必要である。
腎機能に関する血液データでは、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン0.9mg/dLと尿素窒素の軽度上昇を認めている。糸球体濾過量(GFR)の具体的な数値は示されていないが、年齢と性別、クレアチニン値から推算すると、軽度の腎機能低下が存在する可能性がある。入院3日目には尿素窒素24mg/dL、クレアチニン0.8mg/dLと改善傾向にある。これらの値は利尿薬の使用や水分制限の影響を受けるため、継続的なモニタリングが必要である。
必要な看護介入として、以下の項目が重要である。毎日の体重測定、水分出納の正確な記録、尿量・尿性状の観察を継続する。両下肢の浮腫の程度を定期的に評価する。夜間のトイレ移動時の転倒予防として、ナースコールの使用を促し、必要に応じて付き添いを行う。水分制限と塩分制限の必要性について患者教育を行い、退院後の自己管理に向けた指導を実施する。体液貯留の早期発見のために、症状の自己観察方法についても指導を行う。
現在の排泄に関するニーズは、部分的に充足されている状態である。排尿・排便ともに自立しており、利尿薬による治療効果も得られているが、体液貯留の完全な改善には至っていない。また、夜間頻尿による睡眠への影響や、移動時の安全確保の必要性が存在する。ただし、患者の理解力は良好で、自己管理への意欲も高いことから、適切な指導と支援により、ニーズの充足に向けた改善が期待できる状態である。
看護問題の明確化
#疾患に伴う体液過剰に関連した体液バランスの障害
事例の目次
【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
看護の攻略部屋wiki
看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK
コメント