本事例の要約
慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
性格特性として、穏やかな性格であり、医療者とのコミュニケーションは円滑に行えている。ただし、病気に関してはやや心配性な面があり、「また症状が悪くなるのではないか」という不安を表出している。このような感情表現ができることは、適切なコミュニケーション能力を有していることを示している。
家族関係については、妻とは良好な関係性を保っており、妻がキーパーソンとして療養支援に積極的に関わっている。妻は「頑張って夫の療養を支えていきたい」という前向きな姿勢を示しており、夫婦間のコミュニケーションは良好であると判断される。また、近所に在住する長男家族も定期的な訪問を約束しており、家族による支援体制は充実している。
医療者との関係性においては、治療や生活改善に対して前向きな姿勢を示しており、「きちんと管理していきたい」という発言からも、医療者との協力関係が構築できていることが分かる。言語理解力、表現力ともに問題なく、医療者からの説明を理解し、自身の症状や思いを適切に表現できている。
感覚機能について、視力は軽度の老眼があり、新聞を読む際には老眼鏡を使用している。ただし、遠方視力は問題なく、日常的なコミュニケーションに支障はない。聴力は正常で、通常の会話音量でのコミュニケーションが可能である。補聴器の使用は必要としていない。
認知機能は正常で、日常生活に支障をきたすような認知機能の低下は認められていない。状況判断力も保たれており、治療に関する意思決定も適切に行える状態である。
面会に関する具体的な情報(面会頻度、面会時間、面会制限の有無など)は不足しており、追加の情報収集が必要である。特に心不全患者の場合、感染予防の観点から面会制限が必要となる可能性があるため、この点についての確認が重要である。
今後の看護介入としては、以下の点に注意を払う必要がある。不安の表出に対しては、傾聴と共感的な態度で接し、必要な情報提供や指導を行う。特に心不全の自己管理に関する不安に対しては、具体的な対処方法を示すことで不安の軽減を図る。家族に対しても、塩分制限食の調理方法など、具体的な支援方法の指導を行う。
継続的な観察が必要な点として、不安の程度や内容の変化、家族との関係性の変化、医療者とのコミュニケーションの質的変化が挙げられる。また、心不全症状の変動に伴う精神状態の変化にも注意を払う必要がある。
加齢による影響として、聴力や視力の低下が進行する可能性があり、これらがコミュニケーションに影響を与える可能性がある。また、長期的な療養生活によるストレスや不安の蓄積にも注意が必要である。
退院に向けては、自己管理への自信を高められるよう、段階的な指導と支援が必要である。特に、症状悪化時の対処方法や医療機関への連絡方法など、具体的なコミュニケーション方法の確認が重要である。
ニーズの充足状況については、現時点では基本的なコミュニケーション能力は保たれており、家族や医療者との意思疎通も良好である。感情や不安の表出も適切にできており、コミュニケーションに関するニーズは充足されていると判断できる。ただし、心不全の自己管理に関する不安は継続しており、この点については継続的な支援が必要な状態である。
看護問題の明確化
#心不全の再発可能性に関連した不安
事例の目次
【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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