【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)| 14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる

ヘンダーソン

事例の要約

慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。

14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる

A氏は72歳であり、エリクソンの発達段階理論における統合対絶望の段階にある。この段階では、これまでの人生を振り返り、自身の生き方を受容して人生の意味を見出す(統合)か、あるいは人生への後悔や失望感を抱く(絶望)かという発達課題に直面する時期である。A氏の場合、40年に及ぶ電気工事士としての職業生活を全うし、現在は妻や長男家族との良好な関係を保持していることから、人生の統合に向かう基盤を有していると考えられる。元電気工事士として40年間勤務し、5年前に退職しているが、これまでの職業人生を通じて技術と経験を積み重ねてきた背景がある。現在は妻との二人暮らしで、近隣に住む長男家族との関係も良好であり、家族による支援体制が整っている状況である。

疾患理解に関して、10年前から慢性心不全の診断を受け、外来で経過観察されていた経緯がある。治療開始当初は塩分制限や水分制限を遵守していたものの、症状の安定に伴い次第に制限が緩くなっていた点から、疾患の重症度や自己管理の重要性に対する認識が十分でなかった可能性がある。しかし、今回の入院を契機に「きちんと管理していきたい」という発言があり、疾患管理に対する学習意欲の高まりが認められる。

認知機能は正常で、日常生活に支障をきたすような低下は認めていない。言語理解力、表現力ともに良好で、医療者とのコミュニケーションも円滑である。視力は老眼程度で老眼鏡使用により新聞読書が可能であり、聴力も正常である。これらの点は、疾患や治療に関する学習を進める上で良好な条件となっている。

家族の参加状況として、妻は療養支援に対して協力的な姿勢を示している。特に塩分制限食の調理に関して具体的な方法を知りたいという積極的な要望を表出しており、学習への意欲が認められる。長男家族も定期的な訪問を約束しており、家族全体での支援体制が期待できる。

一方で、加齢に伴う学習特性として、新しい情報の処理速度の低下や記憶の保持に時間を要する可能性がある。また、「また症状が悪くなるのではないか」という不安を抱えている状況は、学習に影響を与える可能性がある。

現在の入院環境における学習機会として、心不全手帳を用いた自己管理指導が予定されている。これは、退院後の生活管理において重要な学習ツールとなる。また、管理栄養士による食事指導も予定されており、特に妻が希望している塩分制限食の調理方法について具体的な学習の機会となる。

今後の看護介入として、以下の取り組みが重要である。まず、心不全の病態や治療、自己管理の重要性について、本人の理解度を確認しながら段階的な指導を行う。その際、加齢による学習特性を考慮し、理解しやすい説明方法や視覚教材の活用を検討する。また、妻への指導も並行して行い、特に食事管理や服薬管理について具体的な方法を提示する。

長期的な視点では、地域包括支援センターと連携し、退院後の生活支援体制を整備するとともに、定期的な学習機会の確保について検討する必要がある。また、心不全手帳を活用した自己管理の継続状況や、新たな学習ニーズの発生について、外来での確認を行うことが望ましい。

症状や検査データの意味を理解し、それらと生活行動との関連について学習を深めることで、より効果的な自己管理が可能となる。特に、体重管理、水分・塩分制限、運動量の調整など、具体的な生活場面での実践方法について重点的な指導が必要である。

ニーズの充足状況として、現時点では部分的な充足に留まっている。その理由として、疾患や治療に関する体系的な学習がまだ十分に行われていないこと、自己管理に必要な具体的なスキルの習得が進行中であることが挙げられる。しかし、本人の学習意欲と家族の協力的な姿勢、また医療チームによる指導体制が整っていることから、今後のニーズ充足に向けた条件は整っている。継続的な観察と支援により、段階的なニーズの充足を目指す必要がある。

看護問題の明確化

#慢性心不全の自己管理に必要な知識不足に関連した効果的な疾病管理の制限

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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