本事例の要約

1月25日に高血圧による腎機能障害で緊急入院となった65歳男性の製造業事務職A氏に対して、入院2日目の1月27日より、生活習慣の改善と透析予防に向けて看護介入を行う事例。

8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

入院前の入浴習慣に関する具体的な記載はないため、自宅での清潔習慣について詳細な情報収集が必要である。現在の入院環境においては、入浴は介助なしで可能とされているが、まだ実施されておらず、清拭での対応が行われている。両下腿の浮腫が残存している状態であり、皮膚の観察と保湿ケアが特に重要である。

日常生活動作（ADL）については、病棟内の短距離歩行が可能で、移動時の点滴スタンド使用はあるものの、ふらつきはなく安定している。麻痺の記載はなく、基本的な清潔動作は自立していると考えられる。ただし、全身の倦怠感が残存しているため、長時間の清潔ケアには負担がかかる可能性がある。65歳という年齢を考慮すると、加齢による皮膚の脆弱性も考慮する必要がある。

鼻腔、口腔の保清状況や爪のケアに関する具体的な記載がないため、これらの状態について詳細な観察と情報収集が必要である。特に、慢性腎臓病患者は感染リスクが高いため、口腔内の状態や衛生状態の確認は重要である。また、1日20本45年間の喫煙歴があり、最近禁煙を開始したことから、口腔内の状態に特に注意が必要である。

排泄に関しては、尿意は明確で自尿があり、失禁の記載はない。排尿回数は日中6-7回、夜間2-3回程度である。便失禁に関する記載はないが、便通の状態について詳細な情報収集が必要である。

慢性腎臓病による体液管理の必要性から、皮膚の過度な乾燥や浮腫による皮膚トラブルのリスクが高い状態にある。特に下腿浮腫部位の皮膚状態については、詳細な観察と適切なケアが必要である。

以上を踏まえ、以下の看護介入が必要である。

まず、清拭時の皮膚観察を丁寧に行い、特に浮腫のある下腿部の皮膚状態を詳細に確認する。具体的には、浮腫部位の皮膚の色調、緊満感、圧痕の有無とその程度、皮膚温、しわの有無、皮膚の脆弱性について観察する必要がある。また、皮膚の乾燥、発赤、傷、掻痒感の有無についても細かく確認する。浮腫部位のケアとしては、以下の点に注意を払う必要がある。

圧迫による皮膚障害を予防するため、適切な圧分散を行い、皮膚の過度な伸展を避ける。下腿の挙上時には、踵部やアキレス腱部の圧迫を避け、膝関節の軽度屈曲位を保持する。清拭時は強い摩擦を避け、優しく丁寧に行う。また、浮腫部位の清潔保持は特に重要であり、間擦疹や真菌感染の予防のため、皮膚の折れ目部分を十分に乾燥させる。必要に応じて適切な保湿剤の使用を検討するが、過度な保湿は避け、さっぱりとした使用感のものを選択する。

口腔ケアについては、禁煙開始後の口腔内の変化も考慮し、適切な口腔ケア方法の指導と支援を行う。また、腎機能低下による口腔内環境への影響も考慮し、定期的な観察と管理が必要である。

入浴に関しては、患者の体力や全身状態を考慮しながら、段階的な導入を検討する。浴室での転倒リスクを評価し、必要な環境調整や介助方法を検討する。

継続的な観察が必要な点として、皮膚の乾燥状態、浮腫による皮膚への影響、口腔内の状態、爪の状態、清潔ケアに伴う疲労度が挙げられる。また、退院後の自宅での清潔ケア方法について、具体的な指導計画の立案も必要である。

清潔保持と皮膚保護に関するニーズの充足状況としては、現時点では部分的な充足に留まっている。これは、清拭での対応は行われているものの、入浴が実施できていないこと、また浮腫による皮膚への影響が継続していることが主な要因である。今後、全身状態の改善に合わせて、より完全なニーズの充足を目指す必要がある。