【ヘンダーソン】慢性腎不全 生活習慣の改善が課題(0009)

ヘンダーソン

事例の要約

1月25日に高血圧による腎機能障害で緊急入院となった65歳男性の製造業事務職A氏に対して、入院2日目の1月27日より、生活習慣の改善と透析予防に向けて看護介入を行う事例。

この事例で勉強できること

慢性腎不全・高血圧のアセスメント

今回の情報

基本情報

A氏は65歳の男性で、身長168cm、体重72kgである。家族構成は63歳の妻との2人暮らしで、隣市に住む38歳の既婚の長女が週末に様子を見に来ており、キーパーソンは妻である。職業は製造業の事務職として勤務していたが、今回の入院を機に休職している。性格は几帳面で真面目だが、自身の体調管理については楽観的な面がある。感染症やアレルギーの情報、認知機能に関する問題は記載されていない。医療者とのコミュニケーションは良好で、認知機能の低下を疑わせる所見は見られない。

病名


高血圧性腎症による慢性腎臓病(CKD)

既往歴と治療状況

既往歴は20年前に高血圧を指摘され、以後降圧剤を服用しているが、仕事を理由に通院は不規則であった。その他の既往歴の記載はない。

入院から現在までの情報

入院から現在までの情報として、1月25日にかかりつけ医からの紹介で当院腎臓内科に緊急入院となった。入院時、両下腿全体の浮腫、安静時呼吸困難、起座呼吸を認め、全身の倦怠感が著明で日常生活に支障をきたしている状態であった。また、食欲低下により1日1食がやっとの状態であった。

入院後は直ちに安静度が設定され、投薬調整が開始された。同時に病院食(塩分制限食6g/日、水分制限1500ml/日)の提供が開始された。入院1日目には呼吸困難感がやや改善。本日(1月27日、入院2日目)には浮腫の軽減傾向が見られ、「少し楽になってきた気がします」と自覚症状の改善を話すようになった。起座呼吸も改善傾向にあるが、夜間の睡眠はまだ安定していない。食事に関しても徐々に摂取量が増加してきている。倦怠感は残存しているものの、病棟内の短距離歩行は可能な状態である。

現在は、薬物療法としてカルベジロール10mg(1日1回)、アムロジピン5mg(1日1回)、フロセミド20mg(1日1回)の内服を継続中である。また、医師からは今後の透析リスクについて説明を受け、A氏自身も生活習慣の改善の必要性を強く認識している状態である。

バイタルサイン

バイタルサインについて、来院時は血圧158/92mmHg、脈拍78回/分、体温36.8℃であった。検査データではBUN 42mg/dL、Cr 2.8mg/dL、K 4.8mEq/L、Hb 11.8g/dLと腎機能低下を認めていた。現在は安静と投薬調整により、血圧142/82mmHg、脈拍72回/分と安定している。

食事と嚥下状態

入院前の食生活は極めて不規則であった。平日の朝食は妻が準備した和食中心の食事を7時頃に摂取していたが、週2-3回は欠食していた。昼食は12時~14時の間で不規則で、職場近くの食堂やコンビニで高塩分食を好んで摂取していた。夕食は仕事の都合で21時以降となることが多く、疲れを理由に夜食やアルコールを追加摂取する習慣があった。飲酒は週1-2回でビール350ml程度、喫煙は1日20本を45年間継続していた。嚥下機能に問題はない。現在は病院食(塩分制限食6g/日)が提供され、徐々に摂取量が増加している。入院を機に禁煙を開始し、禁酒も遵守できている。

排泄

入院前は10月頃から夜間頻尿(2-3回/晩)があり、その後3-4回/晩に増加していた。日中の排尿回数の記載はないが、喉の渇きを頻繁に訴え、ペットボトルの水やスポーツドリンクを常に持ち歩いていた。便通に関する記載はない。現在は水分制限(1500ml/日)が行われており、1日の尿量は約1200ml/日、回数は日中6-7回、夜間2-3回程度となっている。尿意は明確で自尿があり、排尿時痛などの症状はない。1回の排尿量は150-200ml程度である。下剤の使用に関する記載はない。

睡眠

入院前は12月に入ってから夜間の呼吸困難により2-3個の枕を使用して就寝するようになり、その後起座呼吸も出現していた。現在は呼吸困難が改善傾向にあるものの、夜間の睡眠はまだ安定していない。眠剤の使用に関する記載はない。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力は矯正なしで日常生活に支障はない。聴力も正常で会話に問題はない。知覚に異常はなく、感覚障害や痛みの訴えはない。コミュニケーションは良好で、医療者の説明を理解し、自身の症状や気持ちを適切に表現できる。特定の宗教や信仰は持っていない。

動作状況

入院前は両下腿の浮腫により歩行にやや困難さがあったが、転倒歴はない。現在は、倦怠感は残存しているものの、病棟内の短距離歩行は自立している。移動時には点滴スタンドを使用しているが、ふらつきはなく安定している。

ベッドから車椅子、椅子への移乗は自立している。排尿・排便動作は自立しており、病棟トイレまで自力で移動できる。入浴は介助なしで可能だが、まだ実施していない。清拭で対応している。衣類の着脱は自立しているが、両下腿の浮腫が残存しているため、ズボンの着脱にはやや時間がかかる。

トイレ動作や移動時の転倒リスクを考慮し、必要に応じてナースコールの使用を指導している。夜間のトイレ歩行時は特に注意するよう説明している。

内服中の薬
  • カルベジロール錠10mg 1日1回 朝食後
  • アムロジピン錠5mg 1日1回 朝食後
  • フロセミド錠20mg 1日1回 朝食後

服薬状況は、入院中は看護師管理となっている。服薬への理解は良好で、内服の必要性を認識している。退院後の自己管理に向けて、薬剤師による服薬指導と看護師による生活指導を予定している。入院前は自己管理で内服していたが、仕事を理由に通院は不規則であり、服薬状況も不安定であった。

検査データ

検査データ

検査項目基準値入院時(1/25)現在(1/27)
WBC4000-8000/μL98008200
RBC420-550万/μL380385
Hb13-17g/dL11.811.6
Ht40-50%35.235.0
Plt15-35万/μL22.523.1
TP6.5-8.2g/dL6.86.9
Alb3.8-5.2g/dL3.23.3
AST10-35U/L2825
ALT5-35U/L3230
BUN8-20mg/dL4238
Cr0.6-1.1mg/dL2.82.6
eGFR≥60mL/min/1.73m²18.520.1
Na135-145mEq/L138139
K3.5-5.0mEq/L4.84.6
Cl98-108mEq/L105104
CRP≤0.3mg/dL0.80.5
尿蛋白(-)3+2+
尿潜血(-)2+1+
尿比重1.015-1.0251.0121.015
今後の治療方針と医師の指示

今後の治療方針と医師の指示として、腎機能の更なる悪化を防ぎ、透析導入を回避することを目標としている。そのため、血圧コントロール(目標:140/90mmHg未満)、塩分制限(6g/日)、水分制限(1500ml/日)を継続する。また、定期的な腎機能検査を行い、必要に応じて投薬調整を実施する。入院中は安静度を徐々に拡大し、退院後の生活に向けた指導を行う。具体的には、禁煙の継続、適切な食事管理、服薬コンプライアンスの向上、運動療法の導入を予定している。透析導入のリスクが高いため、腎臓内科外来での定期的なフォローアップが必要である。退院後は週1回の外来受診を予定している。

本人と家族の想いと言動

本人と家族の想いと言動について、A氏は「これまで体調の変化を甘く見ていました。特に最近の息切れには本当に困っていたので、今回の入院を機に生活習慣を改善したいと思います」と話しており、生活改善への意欲を示している。入院をきっかけに禁煙を開始し、食事制限も守ろうとする姿勢が見られる。一方で、長年の生活習慣を変えることへの不安も漏らしている。妻は「この入院を機に、夫の生活が変わってくれることを願っています」と期待を寄せており、週末に面会に来る長女とともに、A氏の生活改善を支援する意向を示している。特に食事管理について、妻は「退院後は塩分制限に気をつけた食事を作りたい」と具体的な支援策を考えている。

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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